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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の六:シェラ編
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不思議な時間戻り

 レイラたちはウルサリオン族の街をあとにし、ひたすら北を目指して歩き続けた。途中、ノラ魔族に襲われることもなく、広い街道は不気味なほど静かだった。


 やがて、北の地平線の向こうに、黒く大きな影が浮かび上がる。高くそびえる城壁、塔のシルエット――それはまさしくレイラが知る、あの城だった。


「あっ……!城と城下町……!やっぱりあったっ!あったよ、ギエナッ!」


 胸の奥にたまっていた不安が一気に弾け、レイラは子どものように両手を振り上げて叫んだ。この城があるということは、サダクも、三ツ目族もちゃんと存在している。そう信じたかった。


 ギエナも目を丸くして見上げる。


「わ~、すげぇ~……。ここからでもデカいのが分かるんじゃまいか?」


 だが、シェラの表情だけは険しいままだった。


「三ツ目族はここまで巨大な拠点を築いていたのか。しかし……おかしいな」


「おかしい?」


 レイラが振り向く。シェラは眉間に皺を寄せたまま、ぽつりと言葉を継いだ。


「ポラリス中央政府に三ツ目族の代表はいなかったし、魔導学校にも一人もいない。そんな魔族が、なぜここまで大きな城を構えられた?……記録と合わない」


 フムアルもまた、別の違和感を覚えていた。城壁までの距離が縮まるのに、街の気配がまるでしない。


「う~ん……それにしても、少し静かすぎない?人の声も、荷馬車の音もしない……。煙突からの煙も見えないよね……」


 レイラは、それらの言葉を振り払うように首を横に振った。


「遠いから聞こえないだけだよっ!近づけば分かるって!早く行こうよっ!!」


「んだねっ、行ってみれば分かるんじゃんっ!」


 ギエナはレイラの勢いに押されるように頷き、ハルバートを肩に担ぎ直す。シェラとフムアルも顔を見合わせ、小さくため息をついてから、その後に続いた。


 こうして四人は足を速め、巨大な城壁に囲まれた城下町へと向かっていった。


----- * ----- * -----


 しかし、フムアルが話したように街は余りにも静かだった。巨大な壁に覆われた街は暗く、誰もいない。風が建物に当たる音だけが響いている。よく見ると、建物は何かに襲撃されたかのようにあちこちが崩れている。巨大な爪痕もあちこちに見られ、まるで何者かによって襲撃されたかのようだった。


 ギエナは街の惨状を見て壁を登った。しばらく上から確認すると戻ってレイラに報告した。


「うわぁぁ~……、レイラ~、やっぱ上から見ても壊れまくりん。誰もおらぬし、どうなってんじゃぁ……」


「う、うん……」


 レイラはうろたえるだけで何も答えることが出来なかった。

 フムアルも不思議でならなかった。


「う~ん、不思議だ……。これはノラ魔族の襲撃だと思うけど、戦った後もないし、血の跡すらない。ノラはいったい何をしていたんだ?ここでただ暴れ回って建物を破壊をしただけなのか?レイラ、君は何かを知っているかい?」


 レイラ自身が一番混乱していた。

 ここは以前来たときと同じ状況だった。時間が戻ったのなら建物も戻り、住民も住んでいて良いはずだった。しかし、ここには誰もいない。

 あの時は血しぶきもあり酷い惨状だったが、ただ建物だけが崩れている。それgどうしても理解できない。


(時間が戻っただけじゃない?どういうことなの……?)


 レイラはもはや城に向かうしかないと思った。そう思うと身体が勝手に動いていた。


「あっ、レイラってば、どこに行くんだよぉ~」


 ギエナの叫びも聞こえないのか一心不乱に走るレイラ。彼女を追ってギエナ達も後を追った。


 こんな彼らを遠くから見つめる者達がいた。その者達は千里眼のような能力で自分達の存在に気づかれないようにレイラ達の動向を見つめていた。


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