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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の六:シェラ編:三ツ目族の消失
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歴史の時間

 それは魔導学校での歴史の授業だった。日本の大学のような階段状の教室には、さまざまな魔族が並び、巨体の魔族用に特別な席も設けられている。

 歴史担当の教師、ミノタウロス族ネッカルが、魔族の歴史を語っていた。彼は魔法を使いながら、黒板代わりの板に図や文字を次々と浮かび上がらせていく。


----- * ----- * -----


 魔族の歴史――それは、無数の種族同士が争い続けてきた血塗られた年代記だった。互いの姿形や価値観の違いを嫌悪し合い、自分たちのテリトリーを広げるために戦を仕掛け、ときには一つの魔族を大陸からほぼ駆逐してしまうことさえあった。


 そうした争いが、地球と同じ一年度を単位として数千年も続いた末に、ついに各魔族は疲弊しきった。そこで各種族の長たちが一堂に会し、三つの大原則を取り決めた。


 すなわち、「干渉しない・占領しない・支配しない」である。この三原則に従い、各魔族は自らの支配地域を定め、それ以外には手を出さないことで、かろうじて均衡を保つ道を選んだのだ。


 さらに、大陸の中心部はポラリスと名付けられ、いずれの魔族も領有権を主張しない「中立干渉地域」と定められた。ここでは各魔族から代表者が送り込まれ、「ポラリス政府」として共同で政治を行っている。


 魔導学校もこのポラリスに建てられている。表向きは各地から優秀な若者を集め、魔法を中心に高度な教育を施す場だが、その実、異なる魔族同士の相互理解を少しでも進める――そんな密かな願いも託されていた。


----- * ----- * -----

(……結局、魔族の国も同じなんだ)


 レイラは、先生の話を聞きながら心の中でため息をついた。種族の名前や姿形こそ違うけれど、やっていることは地球の民族同士の争いと変わらない。ただ、人間が魔族に置き換わっただけだ――そう思えてならない。


(姿かたちが違う分だけ、むしろこっちの方が面倒くさそう……)


 角、翼、尾、鱗。見た目も生き方も価値観もバラバラな魔族たちが、お互いを理解し合うなんて本当に出来るのだろうかと、レイラはぼんやり考える。


(それにしても……この設定、ゲームにあったっけ?)


 発売日に買った設定資料集を、布団の中で読みふけった夜を思い出す。けれど、そこに書いてあったのは攻略対象のイケメン魔族たちの紹介と、甘くてドラマチックな過去話ばかりだった気がした。


(世界の成り立ちとか、ポラリス政府とか、そんなガチ歴史は書いてなかったような……)


 頭の片隅でそんなことを考えつつも、レイラは慌てて意識を黒板――いや、宙に浮かぶ魔法の板へと引き戻した。


(おっと、ぼーっとしてる場合じゃない、集中集中……)


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