道中
レイラ、ギエナ、シェラ、そしてフムアルの四人は、北の大地を目指して広い街道を歩いていた。
道すがら、オーク族のエジテクの家の前を通りかかる。レイラはふと足を止め、家をじっと見つめる。
(エジテクさん……)
家には明かりが漏れているから誰かが住んでいるのは分かる。しかし、用も無いため通り過ぎただけだった。しかし、レイラが余りにもじっとその家を見つめるのでギエナが気になってしまう。
「レイラ、あの家に何か用があるまいか?誰かのお家だっけ?」
「う、ううん。特に用もないよ。あんな家に住めれば良いなって思って」
レイラは思わず嘘をついてしまう。
「えぇ~、あのお家は壊れかけてるじゃんかぁ」
「二階だけの戸建てが良いんだよ」
「ふ~ん」
ギエナには申し訳ない気持ちがあったが、やはりエジテクのことを覚えていない様子に、レイラは少し寂しさを感じた。
(ギエナはやっぱり覚えていない……。もしかしたら、エジテクさんも私のことを知らないのかもしれないな……)
さらに、ギエナが言っていたように、エジテクの家が以前より寂れて見えたことも気になった。
(エジテクさんの家、前より少しボロボロになっていた気がする。そういえば、私の部屋もどこか古びてきたような……。気のせいかな……)
色々なことが重なって、レイラは自分が疲れているだけだと納得し、この違和感については深く考えないことにした。
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四人は森を抜けてしばらく歩いていると、先頭を歩くギエナが大きな声を上げた。
「あっ、ウルサリオン族の街が見えてきたじゃまいかっ!商業が盛んなんだっけ?」
ギエナが指さした先には、レイラが以前訪れたことのあるウルサリオン族の街が広がっていた。
普段はあまり話さないフムアルが、珍しくその疑問に答える。
「そうだね。街の中は賑やかだと聞くね」
ギエナは珍しい街に浮かれている。
「おぉっ!レイラ少し休んで行こうよ、あっ、急ぐんだっけ?」
「ううん、大丈夫だよ」
「えがった~、ちょっとダラレリだったんだよね」
騒がしいギエナとは対照的に、シェラは街をじっと睨みつけて独り言をつぶやいた。
「こいつらは緑目と交流があるんだよな……」
その「緑目」という言葉にフムアルが反応し、確認するように尋ねた。
「うん?シェラ、"緑目"というのは緑目エルフのことかい?」
「ふん、なんでもない。気にするな」
素っ気ない返事に、フムアルは少し不満げに食い下がる。
「なんだよ、同じエルフ族じゃないのかい?」
「あんな下賎な種族と一緒にするなっ!!」
普段は冷静なシェラが突然声を荒げたので、みんな驚いて彼の顔を見つめた。
「シェラ……?」
レイラの視線に気づいたシェラは、はっとしてすぐに謝った。
「あぁ……レイラ、すまない。私としたことが大声を上げてしまった……。フムアルもすまなかった。緑目と赤目エルフ族は、あまり仲が良くないのだ」
シェラが申し訳なさそうにうつむくと、フムアルもレイラもそれ以上は追及しなかった。二人とも、その理由を何となく察していた。
かつて、シェラは同じように感情を爆発させたことがあったからだった。




