80.騎士団襲来②
私とリルフは、部屋に戻って来て、すぐにベッドに寝転がっていた。
単純な話ではあるのだが、私達はとても疲れている。今日は色々なことがあった。そのため、すぐにベッドに吸い込まれたのである。
「はあ……」
「お母さん、大丈夫?」
「え? ああ、まあ、大丈夫だよ。明日のことが少し心配だけど……もうやるしかないからね」
「うん、そうだよね……やるしかないんだ」
私は、リルフの質問に案外素直に答えていた。自分でも不思議だったが、強がろうなどとは思わなかったのだ。
私がこの子の前で強がった所で、鋭いリルフには見抜かれてしまう。見抜かれていて隠していると、余計な心配をかけてしまうはずである。
それなら、素直に言った方がいいのではないか。今回の出来事を経て、私はそう思うようになっていたのだ。
母親としては、それは駄目なことなのかもしれない。だけど、余所は余所、家は家だ。私に関しては、多分この方がいいはずである。
「お母さん、あのね……」
「うん? どうしたの?」
「もっと近くに寄ってもいい?」
「……いいよ。おいで」
そこで、リルフが私に近寄ってきた。こういう風に素直に甘えてくれるのは、私にとってとても嬉しいことだ。
私は、リルフの体を抱きしめて、その頭をゆっくりと撫でる。いつも通りのことではあるのだが、なんだか今はそれがとても幸福だ。
こんな日々がずっと続けばいいのに。私は、改めてそのようなことを思っていた。この子と過ごせる穏やかな日々。それが私の何よりの望みなのだ。
その望みを叶えるためにも、明日は頑張らなければならない。騎士団を倒して、リルフとの幸せな日々を掴み取るのだ。
◇◇◇
フェリナとリルフの部屋の前で、アラーグは一人考えていた。
今日、彼は騎士団の来訪を知らされた。その連絡が来たため、一度宿屋を離れることになったのである。
「騎士団か……」
騎士団からの連絡は、とても簡潔なものだった。終末を望む会の壊滅のために来訪する。彼に告げられたのは、ただそれだけだった。
しかし、それ以外の任務があることを彼は知っている。騎士団は、目の前の部屋にいる少女達に対して、危害を加えようとしているのだ。
それを知っている以上、アラーグのやるべきことは決まっていた。二人を守る。その決意に迷いは一切ない。
「騎士というのは、一体なんなんだろうな……」
ただ、彼は悩んでいた。騎士とは一体、なんなのかということに。
平和に暮らしている二人に危害を加える。それが騎士の正しい在り方なのか。騎士団の判断に対して、彼は憤りのようなものを感じていた。
アラーグが憧れた騎士は、弱気を守る者だった。そんな理想と現実の狭間で、彼は改めて騎士という存在と向き合っているのだ。




