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その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!66

 悪い気はしないのだが、荷渡と違って色々と破壊力がありすぎではなかろうか。

 しばらくこの感触に埋まっていたい欲求がないと言えばうそになるが、世間体を守ろうとする日ノ下の心が雨音の体を横へと押しやった。戦闘と最後の不祥事で血圧が上がりすぎてくらくらする頭を押さえながら上半身を起こす。

 あとは推測通り浮雲の物語が終わればいいのだが。

「って、なんで浮雲も倒れてんだよ!?」

 雨音の体に気を取られていたせいで、雨音を叩いた浮雲が仰向けになって倒れているのにすぐ気づけなかった。

 なぜか気を失っているようだ。そんな浮雲の代わりに雨音がむくりと起き上がる。

「浮雲さんには刺激が強すぎたみたいですね」と、敬語の状態に戻った生徒会長。

 ……嫌な予感がした。

 目をこらして浮雲の傍に落ちた本を見る――それは表紙からして卑猥だとわかる一冊だった。

「ついに発売されたんですよ! 私の処女作! それが載った雑誌です!」

「なんでこの場に持ってきてんだよ! 観察者にとどめを刺したのがあれってロマンの欠片もねえよ!」

「かわいい我が子は離さず持っておきたかったんですよ。戦いの最中で落としてしまったみたいですが。あと、新しい発見ですがエッチな本で叩かれるのって興奮しますね」

「僕がなん十発でもぶっ叩いてやるよ」

「お願いします!」

 ダメだこいつ……。

「はぁ……変態には何言っても無駄か。とりあえず中庭に落とした本取ってきてから浮雲起こすか。それで、妄想がどうなったかを調べる」

「結果が楽しみです」

「お前ほんと二面性激しいな。これが終わったら天津って呼んでいいか? そっちの方が似合ってる気がしてならない」

「別にいいですよ。天津でいる方が気楽ですし」

 先生に見つからないように配慮しながら中庭と屋上を往復する。浮雲が会長に止めを刺したアレは本人の懐に戻す。肌身離さずの言葉通り、シャツの下にしまっていた。

 拾ってきた方の本を浮雲の傍に置く。

「おーい、浮雲、起きろ」

 ほっぺたをぺちぺち叩き浮雲を起こす。

「日ノ下――私」

「終わったぞ。生徒会長も元通りだ」

「ありがとう浮雲。あれは本当の私じゃあなかったのだ」と、白々しくピースをする雨音。「いやはや申し訳なかった。君を文化祭実行委員から引きずり下ろすような真似をして。よければ、ぜひ続けて欲しい」

「よかった……」

 ほっとした様子を見せる浮雲だったが、すぐに不安そうに日ノ下を見る。冷たい風が彼女のポニーテールをゆらゆら揺らす。

「日ノ下は……?」

 そうだ。最後に日ノ下の観察者としての身のふりを決めなければいけない。どう終わらせるのが浮雲にとってベストか――。

 やはり、観察者としての概念は地球に残るのはまずい。浮雲にとって多少悲しい終わりになるかもしれないが、観察者としての日ノ下はいなくなるのがいい。

「地球のトップである彼女の思念体が消えた今、僕も長居はできない。時期いなくなる」

「いやだッッ! やだッッ! やだッッ!」

 綺麗な星が広がる夜空の下で、あの浮雲がだだをこねる子供のように叫ぶ。いつまでも妄想の中にはいられない。いつかは現実を見なければいけない。今の浮雲はそれを怖がっているようにも見えた。

『やっと日ノ下と友達になれたのに! お別れなんて嫌だわ!! 私……昔から口下手で……付き合いが下手で……友達がいなかった。でも、日ノ下となら話せた! 私の欠点を……補ってくれた!』

「なんだ。心配なのはそんなことか。大丈夫だ。僕はこれからも浮雲の友達だ。僕はずっと僕だ。あくまで能力がなくなるだけって考えればいい」

「本当に……?」

「本当だ。約束する」

 外灯が照らす浮雲の横顔は、逡巡するように下唇をぐっと噛む。それから彼女はしぶしぶ頷いた。

 この日、観察者としての日ノ下は浮雲とお別れをした。

 要所要所めちゃくちゃではあったけれど、物語のおしまいとしては及第点だろう。

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