第4話「発現」
本作に登場する組織・人物はすべて架空のものです。
ヒビキの号令でマネキンの一群が襲いかかってくる。その隙間から見えるヒビキの笑顔が憎らしい。
「みんな!ひとまず攻撃を避けていこう!なんか解決策わかるかもしんないし!様子見ていこう!」
「私、運動苦手なのに…!」
「俺がサポートするから。みんなで絶対に生きて帰るぞ。」
「ヒビキ!!お前覚えとけよ!!オレたちがあとでボコボコにしてやるからな!!」
それにしても多勢に無勢だ。4人で何ができるというのだろうか。しかも、よく見ると、それぞれのマネキンにはいろんな武器が仕込まれているみたいだ。ナイフ、金槌。
バンッ!
それに銃。殺す気満々だ。ここまでしないといけないことなのか。理不尽だ。イラついてきた。
ひたすらマネキンから逃げ回る私たち。反撃する余裕なんてない。マネキンの攻撃を避けるので精一杯だ。そんな中、笑顔でヒビキが私たちに声をかけてくる。
「逃げてばかりでは何も解決しませんよー。」
そんなこと知ってる!私たちは軍人じゃないんだ!戦えるわけがない!殺し合いと喧嘩じゃ、天と地の差がある!
「どうするどうするどうする!オレ、喧嘩なら自信あるけど、これ、そんなレベルじゃない!」
「……銃使うやつがいるよね。そいつがやたらと私のことを狙ってくるから、それを利用して同士討ち狙ってみる。」
「わかった。サポートする。」
「たー!あたしたちもサポートするよ!」
銃使いのマネキンを意識しながら、他のマネキンがその銃の弾道に入るように近づく。普段こんなに動かないから疲労で足がもつれる。そのとき、銃が撃たれる。咄嗟に避けたが、左肩に当たったようだ。言葉にできない程痛い。むしろ熱い。ジンジンする。でも、見事他のマネキンに命中し、1体戦闘不能にできたから良しとする。するしかない。
「みー!」
「とー、私のことはいいから、自分のことに集中して!」
倒れたマネキンの武器はナイフだったから、それをもぎ取って使い、上着を破り、傷口を巻いて塞ぐ。映画みたいなことする羽目になるとは。人生何あるかわからないもんだな。
みんな頑張って避けてるけど、それでもみんなマネキンの攻撃で怪我を負っていく。とーは頭から血を流しているし、たーも痣だらけ、めーに至っては足を折ったようで動けず脂汗をかいている。
夢にまで見た、心から欲しかった理想の友達がみんな傷ついていく。私が運動音痴だから、みんな私をサポートしながら動いてくれたから、余計に怪我を負わせてしまった。本当に最悪だ。運動が苦手なのをそのままにしておくんじゃなかった。
一度負の感情に飲まれると、次々と後悔が生まれてくる。ああ、あのとき名刺を持っていかなければ。この状況を引き起こした自分が憎い。ああ、私にもっと力があれば。みんなに助けられてばかりの自分が憎い。何もかもに怒りが湧いてくる。そもそもの元凶はあいつだ、ヒビキだ。のうのうと笑いやがって。神象だかなんだか知らないことのためにこんな目に遭わせやがって。ああ、イライラする。こんなにイラついたのは、こんなに強く感情が動いたのは初めてだ。許せない...許せない...許せない許せない許せない。憎らしい。こんな理不尽な目に遭わせるやつらが憎い。
「みー!何やってんだ!マネキンが来てる!避けろよ!動けないのか!?今行くからな!!」
焦った顔のとーが来る。マネキンも金槌を振り上げながら迫ってくる。守られてばかりじゃダメだ。守らなければ。とーがマネキンを背に私を庇う。これではとーが殴られてしまう。動かねば。動けない。どうする。どうすればいい。感情が上回っていて、冷静に分析ができない。でも、守られっぱなしは嫌だ。せっかく得た友達を失うのは嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!ヒビキに腹が立つ!この状況に腹が立つ!何もできない自分に腹が立つ!あらゆる物事に腹が立つ!経験したことのないものすごい勢いで怒りが募り、ついには頭にカッと血が上った。目の前が真っ赤になった。
ババババババババババァンッ!!!!!!
俺がみーを庇って抱きしめているとすごい爆発音が連続して聞こえてきた。
「!?!?」
俺が周りを見ると、マネキンの爆発の嵐が巻き起こっていた。その残骸があらゆるところからすごい速さで飛んでくる。ひとまずみーを守らねば、そう思い、自分の頭も守りつつ、みーに覆いかぶさった。さすがに痛いけど、まだ我慢できるレベルだ。
ババババババババババァンッ!!!!!!
「おいおいおいおい!爆発だらけだ!痛っ!何が起こってるんだよ!ずっと痛てぇし!」
「い゛っだい゛!!折れたとこに当たった...!!」
なんなんだこの阿鼻叫喚は。もしかしてと思い、腕の中のみーを見る。今まで見たことのない鬼の形相をしていた。フーッフーッと息を切らし、目の焦点が合っていない。明らかに様子がおかしい。
「おい!...おい!みー!しっかりしろ!」
相変わらず爆風でマネキンの残骸が飛んでくるが、そんなのは構いはしない。みーの肩を強く揺さぶるが、反応がない。興奮状態で意識が飛んでいるのか?……今度は地面が揺れ始めた。なんなら地鳴りもしている。これはやばい。
「何何何何!?!?!?地震!?!?オレそういうの苦手!!」
「まずいよ...あたしまだ痛くて動けないんだけど...!」
「これ程までとは……やはり坂本さんの神象はいきなり制御できるものではありませんでしたね。強力過ぎる。さすがです。」
パリパリパリパリパリパリパリパリンッ!!!!!!
今度は窓が割れていく。しかも、爆風に紛れてガラスの破片も飛んでくる。本格的に命の危機を感じ始める。何が起こっているかはわからないが、おそらくみーが原因なのは間違いない。ヒビキがにんまりしながら拍手しているのが証拠だ。スキップしながら物置らしき部屋を開けて、マネキンを大量に追加投入してくる。最悪だ。
「この大惨事、たぶんみーの神象だ!とりあえず俺はみーを正気に戻す!だから、マネキンの相手は頼んだ!!」
「わかった!オレに任せろ!めー!とーのところに行けそうか!?」
「なんとか痛みはマシになってきたというか慣れてきたから行ってみせる!だから、あたしのことは気にしないで!」
「無理すんなよ!」
折れた足を引きずりながら、あたしはとーとみーの元へ向かう。この中で今一番足を引っ張ってるのは、絶対にあたしだ。こんなときに足なんか折っちゃって。くっそー...最悪。だから、せめてあそこに行って、たーが動きやすくなるようにしないと。立って歩くと骨折した右足に激痛が走る。地面が揺れているし、いろんなものが飛んでくるから余計。けど、負けるもんか!
爆風の中、とーのところへ向かう。でも、なかなか遠いし、マネキンうじゃうじゃいるし、ほんとに最悪!!そんなときに、爆風で飛ばされたマネキンの斧が横から迫ってくるのに気がついた。あ、これ、あたしの首、切られちゃうパターンだ。まずい、この状態じゃすぐに避けられないし、まず間に合わない。どうするどうする!せっかく良い友達に巡り会えたのに!まだ死ぬわけにはいかない!まだ小学校卒業したばかりなのに!人生これからなのに!みんなで中学生になるんだ!みんなで新しい思い出いっぱい作るんだ!みんなでバンドを組んで有名になるんだ!だから!!ここであたしは死なない!!!
懸命にとーの方に手を伸ばす。すると、あたしの手から糸が伸びて、とーにひっついた。それに驚いていると、いつの間にか目の前にとーがいた。とーもびっくりしたようで、目がまん丸になっていた。珍しいのが見れたな、ラッキー。どうやらこれがあたしの神象ってことかな。周りを見てみると、いろんな糸が見える。もしかして...縁ってやつ?たーの方に向かうマネキンとヒビキの間にも糸が見える。その認識で間違いなさそう……ワンチャンその縁切れないかな。やってみるしかない!
「とー!そのマネキンのナイフ取れない!?使いたいの!」
「わかった!その間、みーのこと頼む!」
とーに代わってみーの様子を見る。みーの感情むき出しの顔も見たことなかったな。珍しいもの尽くしでちょっと面白い。
「めー!面白がってないで、みーのことなんとかしろよ!爆発とか地震とかいろいろ怖いんだよ!」
「うるさいな!わかってるよ!こっちのことより、追加されたマネキンのことに注意を向けろよ!」
「オレに守られときながらその言い方はないだろ!」
「お前らこんなときにも揉めるなよ!めー、ありがとう。これ、ナイフ。」
とーからナイフを受け取る。ヒビキとマネキンの間の糸に狙いを定める。一か八かだ。思いっきりナイフを投げる。まずい、変なところに投げたっぽいと思うと、ナイフの軌道が修正され、見事糸を切ることに成功した。神象ってすげー!
「何すんだよ!オレ狙うなよ!味方だろ!」
「違う!たーを狙ったわけじゃないの!ヒビキとマネキンの間にある糸を切ったの!」
「めー!マネキンが1体動かなくなったぞ!これはいけるぞ。俺、武器集めてくる。みーを頼んだ!」
「了解!」
よっしゃ!これで足折れててもみんなに貢献できる!結構使い勝手の良い神象じゃん!やったね!でも、足痛い!物もめっちゃぶつかるし、いつまで続くのこれ!
オレは懸命に動き回ってマネキンの注意を引く。なんか女子たちが目覚めてきてるし、地震怖いし、爆風も怖いし、身体中痛いし、わけわかんないんだけど!状況飲み込めてないのオレだけ!?それに、めーにナイフ投げられたの未だにドキドキするし!あいつあとで覚えてろ...!って危ねぇ!!弓もありなのかよ!!なんでもありじゃん!!何なんだよ!!爆風の中、目を凝らしながら辺りを見ると、ちょっとずつだけど、動かなくなったマネキンが増えてきたな。勝機がちょびっと見えてきた感じか?っと!!びっくりした!!間近でマネキンが爆発した!!怖い!!
「早めにみーを正気に戻してくれよ!!オレもう怖いよ!!」
「ずっとやってる!!」
「んー、割と攻略されてきましたね...では、ちょっとレベルを上げてみましょうか。」
「しなくていい!!しないで!!オレ死んじゃう!!なんならみーも死んじゃう!!オレたち死んだら困るでしょ!!」
「困りますが、あなたたちはこの程度で死ぬような器ではないので安心してください。」
あの綺麗な笑顔をぶん殴りたい。オレは騙されない。これ以上ないこと企んでるぞ絶対。みーがぐったりしてきてる。早く終わらせないと。
マネキンたちが1箇所に集まり出す。とーはみーを庇うように抱き抱えながら、オレはひとまず喧嘩の構えをとりながら、めーは意気揚々とマネキンから奪った武器を構えてその光景を見守っていた。みーは既に気を失っているみたいで、爆発の嵐や地震は落ち着いていった。
改めて辺りを見回すと、マネキンの残骸やガラスの破片だらけ。ところどころ血痕もある。……あれはオレたちのだろうな。こんなこと思っている間もマネキンが集まっていく。でも、みんな疲労からか、動けない。わかるよ、みーの神象、怖すぎたよな。オレ、張り詰めてた緊張が切れちゃいけないところで切れちゃった...動けないよ...
ついに、マネキンはひとつの集合体となり、巨大なマネキンの上半身となった。
「まとまり方キモい!!夢に出てきちゃう!!最悪!!」
「マジでホラーゲームだな...」
「どうすんだよどうすんだよ!あんなのオレ対処できねぇよ!」
「あたしに任せて!…って言いたいけど、なんか糸が太いな...切れるかな...いいや!とりあえずやってみる!」
めーが両手で斧をぶん投げる。うまく投げられなかったようだが、勝手に軌道が修正された。すごいな。でも...なんかオレの方に斧来てない?
「うぉおおい!!!危ねぇだろ!!!!本当にオレ死ぬところだったじゃん!!!!」
「これに関してはごめん!!糸太過ぎて切れなかった!!避けてくれてサンキュー!!」
「おい、マネキンが俺たち潰す気だ!逃げるぞ!」
マネキンの手が3人に近づく。
とーはみーを背負い、めーに肩を貸す。めーも痛みに耐えながらとーの肩を借りて懸命に歩く。走りたくても走れない、そんな様子だった。ダメだ、あの速さじゃ確実にマネキンに潰される!どうする!?駆け寄るか!?でも、間に合う気がしない!武器を投げるか!?でも、マネキンの残骸からぶんどるのに時間がかかるかも……ダメだ、何も良い案が浮かばない!!最悪だ!!オレだけ生き延びても意味がない!!何か、何かないか!?
オレはめちゃくちゃ焦った。いつも以上に頭が回転しているのがわかる。でも、良い案が一切浮かばなくて、冷や汗が出てきた。マネキンの手が3人を潰そうとしたその瞬間、時が止まった。そして、目の前には文字と映像が映し出された。
《見捨てる》
3人はマネキンに潰されて死ぬが、自分は生き残る。
そんなの嫌に決まってんだろ!!選ぶわけがない!!みんなでバンド組むんだ!!みんなで中学校行くんだ!!
《ヒビキを殺す》
剣を使い、ヒビキの胸を刺す。マネキンの動きは止まり、みんなは生き残る。
それも嫌だ!!俺は人殺しになりたいわけじゃない!!ヒビキは間違いなく不審者だけど、だからといって殺したくはない!!
なんなんだ!!まともなのが出てこないぞ!!オレが頭を抱えたそのとき。
《盾を使う》
盾を使い、3人を庇う。その後、盾を投げることでマネキンを切り裂き、無力化することに成功する。みんな生き残る。
…これだ!!オレの好きなアメコミヒーローみたいなことで、みんなを守れる!!……でも本当か?もしそうならなかったら?どうするどうする!選べない!勇気が出ない!でも選ばないと何も変わらない!もういい!みんながいたら「たーがしたいならそうしろ」って言うに違いない!いつも言われてるし!何も考えずに勢いで俺は《盾を使う》選択肢に向かって走った。選択肢を通り過ぎると、いつの間にか3人を守るようにマネキンの前に立っていた。右手が重かったから見てみると、大きな盾を持っていた。本当にあのヒーローみたいじゃないか。この間にもマネキンの手が潰そうとしてくる。オレは咄嗟に盾でその攻撃を防いだ。やった。できた。なら、あれもできるかもしれない。オレはあの映像の通りに盾をマネキンに向かって投げた。見事盾がマネキンを切り裂き、マネキンは2つに分かれて倒れた。やった…やったぞ!
「そこまで。」
その言葉が聞こえた俺は、即座にヒビキの動向をうかがう。ヒビキは拍手をしながら俺たちに近づいてくる。なんだその笑顔は。こっちは満身創痍なんだぞ。みーに至っては気絶してるし、たーもめーも傷だらけだ。
「さすがですね。皆さん強力な神象を見事に発現しました。おめでとうございます。」
「なんかムカつく。」
「やっと終わった...みんな生きてて良かった...」
……本当に終わったんだ。みんなも一応無事。でも、俺だけ何もなかったな……もしかして、俺だけ依代じゃない?
「中山さん。」
ヒビキは俺の目に合わせてしゃがみこみ、こう言う。
「あなたの神象が発現するのは今ではなかったようです。なので、そんなに気を落とすことはないですよ。神象なしで咄嗟に作戦を練り、立ち向かう。さすがの機転の良さです。これに神象が合わされば
「俺が依代じゃないってことはないですか。」
「まさか!それはありません。間違いなくあなたは依代です。あなた方は4人でひとつ。一心同体です。自信を持って。」
なんでだろう。なんか悔しくて涙が出てきた。たーとめーが俺を慰めてくれる。その優しさも相まって涙がとめどなく溢れてくる。俺はサポートすることしかできなかった。みーのことも正気に戻せなかった。しんどい思いをさせてしまった。
「さて、そのままでは皆さんお辛いでしょう。ついてきてください。馬場さん、失礼しますよ。」
ヒビキはめーを横抱きしながら言う。俺はみーを背負ってヒビキについていく。すると、お風呂場に着いた。何なんだ、この塾。なんでもありだな。
「まずは坂本さんを起こすところからですね。これを彼女に飲ませてください。」
「これは?」
「御神酒です。甘酒ですので、子どもでも安心して飲めますよ。」
「何の御神酒なの?」
「あなた方の御神酒です。それぞれ用意していますよ。」
ヒビキから甘酒を受け取る。そのまま飲ませるわけにはいかないから、ティッシュに含ませてみーの口に入れる。これで大丈夫だろうか。
「坂本さんの様子は私が見ますので、あなた方はこちらに入ってください。御神酒のお風呂です。あ、これも甘酒なのでアルコールはありませんよ。入れば、たちまちどんな傷も治ります。」
相変わらず胡散臭い笑顔だが、入るしかない。
「服脱がないとダメ?混浴じゃん。あたしとみー、女子なんだけど。」
「ああ、そうそう。言い忘れていましたが、服のままで大丈夫ですよ。」
「服がびしょびしょになるじゃん...でもボロボロだからいいか。」
仕方ない。ヒビキの言う通りに服のままお風呂に入る。すると、じわじわだが、痛みが引いてきた。
「おっ!傷がなくなってる!すげー!」
「足の痛みが引いてきた...もしかして骨折治ってきてる?」
どうやらヒビキの言っていることは本当のようだ。温かい御神酒に浸かりながら、自分の身体を見ていると、どうやら治すっていう効能は人体だけではなく、服にも作用するらしい。今日は不思議な経験ばかりするな。
「あ!おはようございます、坂本さん!」
「……何事?」
みーが起きたようだ。良かった。大丈夫そうだ。
「状況が理解できない……とりあえず終わったことはわかったけど。」
「とりあえずこっち来いよー!御神酒で傷治るぞー!」
「そうそう!早く肩の傷治さないと!こっちこっちー!」
「え、服のまま?...いいけど」
みーがこっちに来る。しっかりとした足取りで安心した。
「おお...御神酒ってすごいな。」
「肩大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。なんか服も直ってるな。なんでもありだな本当に。」
「だよな。」
「とー、頭怪我してるから、潜った方がいいんじゃない?私も潜るからさ。」
「オレも潜る!」
「あたしもー!」
みんなで潜る。御神酒から頭を出した時、みんなで顔を見合せて笑う。みんなでバカできて嬉しい。やっぱりこいつらじゃないと嫌だな。
「どうです?痛みは引きましたか?」
「引きました。」
「引いた引いた!御神酒ってすげー!」
「では、本日はここまでにしましょうか。上がってから数回ジャンプしてください。髪も服も乾きますから。」
言う通りにすると、実際に身体と服が乾いた。本当に神象ってなんでもありなんだな。
「出口はあちらです。そうそう、次からはこちらに来てくたらいいですからね。改めて名刺を渡しておきますから、都合の良いときに、また、よろしくお願いしますね。」
名刺を受け取る。今度はきちんと住所や電話番号などが書かれていて、名刺らしい名刺だ。ゲームセンターとかある繁華街の雑居ビルの一角のようだ。意外と身近にあるんだな。じゃあ、あの変な間取りは神象ってわけか。
「気をつけて帰ってくださいね。次来る時は、ノートと鉛筆、忘れてはいけませんよ。」
「二度と来るか!!」
外に出ると夕方だった。遊びたかったが、仕方なくみんなで帰路に着く。
「散々な目に遭った……」
「マジ尋常ないくらい頭痛い……ところで、途中から記憶がないんだけど、私が気を失っている間に何があった?」
「知らぬが仏。」
「うん、俺も知らない方が良いと思う。絶対トラウマになるから。」
「それはそれでなぁ…」
「とりあえず!明日こそは遊ぼうぜ!」
「遊ぼう遊ぼう!」
「じゃあまた明日。」
「また明日。」
みんなと手を振って別れる。今日はいろいろあったけど、明日も何事もなくみんなと会えたらそれでいいや。
……どこかでまた依代が神象を起こしたのを感じる。日本で起きたということは、俺たちが動くことになるんだろう。……まあ、事を憂いても仕方ない。今は飯でも食って帰ろう。どうせあとで本部から指示が来る。
ドイツ陸軍総司令部での用を済ませると、部下が足早にやってきた。
「お忙しいところ申し訳ありません、少将。」
「何があった。」
「日本で強力な神象が起きた模様です。」
「場所は。」
「不明です。ですので、何者かが意図的に依代を刺激して起こした神象だと思われます。」
「急ぎ、部隊を送って調査しろ。心当たりは?」
「いくつかあります。そこを中心に調査させます。」
「そうしろ。それと、準備ができ次第、その神象についても報告を。」
「Jawohl, Frau Generalmajor!」(承知いたしました!)
今回はどんな依代だ?話の通じる相手だといいが。




