第3話「開講」
本作に登場する組織・人物はすべて架空のものです。
今、あいつはなんて言った?
「生徒になるなんて一言も言った覚えはないですけど。」
「では、どうしてここに来たんですか?」
「名刺の内容を調べていたら
「やはり神象に興味があるんですね?」
満面の笑みで迫ってくる。
「別にそういうわけじゃ
「それならば、なぜここへ?興味がないのなら、名刺のことなど無視すればよかったのに。」
「…………」
ダメだ。正論過ぎて何も言えない。他のみんなも苦渋を飲まされた顔をしている。何か、何か突破口を探さないと。
「そもそもさ、名刺に住所書いてなかったじゃん。あたしら来させる気なかったよね。」
「申し訳ありません。来るにふさわしい依代かを確認するために、あえて載せていませんでした。」
「俺たちがここに来れたのは、たまたまだと思うので、来るにふさわしい依代かって言われると……」
「本当ですか?名刺で手を切ったのも、鏡を噴水に落としたのも、本当に偶然だと思いますか?」
背筋がゾッとした。あの公園には私たちしかいなかったはずだ。どこから見ていた?さっきから理解できないことだらけで、頭が痛くなってきた。
「……どうして知っているんです?」
「なぜなら、その偶然は必然だからです。はい、馬場さん。あなたの落とした鏡、お返ししますね。」
「何何何!?キモいキモいキモい!!」
どうやら、私たちの名前も知っているようだ。それぞれの持ち物についても知っているに違いない。本当に何なんだこいつは。気持ち悪過ぎる。
「では改めて、神象コントロールアカデミー、開講しますね。講師のヒビキです。よろしくお願いします。皆さんにノートと鉛筆を配りますので、ぜひ使ってください。」
本当に始める気だ。私たちの意見などお構いなし。どうやら諦めて授業を受けるしかないようだ。みんなの顔が死んでいる。
「まず、基礎知識からいきましょう。ホワイトボードに書いていきますので、ノートに写してくださいね。」
神象とは
・人間の理解を超えた超常現象のこと
→わからないことは神様のせいにしちゃおう!=『神』の『現象』=神象
「どうしてわからないことを神様のせいにする発想になるの?そもそも神様いるかどうかもわからないのに?」
「人はですね、理解できないことをそのままにしておくと気が狂ってしまうんですよ。ですから、このような発想に至るんです。」
「ご都合主義ということか…」
「みー、なんでオレら普通に授業受けてんの?」
「……諦めな。」
神象の発現条件
・依代が強い感情を抱くと発現
※何が起こるかは依代ごとに異なる
「出た『依代』。俺たちのことだよな。」
「何が起こるかはそのときにならないとわからない...ガチャみたいなものか。」
「みーの受け入れが早い。オレはまだついていけないよ...」
「『依代』ってなんなの?やっぱり神様関係?」
「その通り。説明しますね」
依代とは
・どこかで神とのつながりを得た者
→自覚がない場合が多い
「神様が宿るものが依代って聞いてたけど、ここでは違うんですね。」
「ええ。ですが、ある意味『神の力が宿っている』と言えますよ。神象を発現させられるのは依代だけですから。」
なんとなくわかった気がするが、それでも大枠の部分だけ説明されているのだろう。隠されている部分もきっとあるはずだ。やはり油断はならない。
「ここまでで、何か質問はありますか?」
「全部がよくわかんねぇよ...!」
「防犯ブザーが鳴らなかったのは神象ってこと?あたしたち理解できてないし。」
「ってことはヒビキさんは依代ってことになりますよね。」
「さあ、どうでしょうか。」
胡散臭い笑顔ではぐらかされる。ヒビキという人物が全く見えてこない。必要以上の情報は渡さないということだろう。帰りたくなってきた。
「やはり、いまいちピンときてないようですね。それならば、実戦といきましょう。ついてきてください。」
嫌な予感がしてきた。だからといって、もう逃げ場はない。4人で覚悟を決めて、ヒビキのあとについて行った。
着いた場所は広い体育館のような、訓練場と言った方が良いか、そのようないかにも身体を動かす目的で使われる広い部屋だった。どんな間取りなんだ、この建物は。体育館に置いてあるような物の他に、隅にはマネキンが大量に置いてあり、不気味だ。なんなら、斧や剣などといった武器も壁にかけてある。……武器?
「みんな帰
「さて!これから何をするかを説明しますね。」
笑顔でヒビキが出口に立ち塞がる。最悪だ。今日は人生で一番の最悪な日かもしれない。どうする。たーはこれから何が起こるかわかってないし、察しためーはヒビキをめっちゃ睨んでいる。とーと目が合う。これはまずい、まずいよな。だよな。わかる。私もそう思う。
「では、皆さん、部屋の中央に立ってください。」
相変わらずヒビキは強引で、グイグイと私たちを部屋の中央に押しやった。
「先程も説明しましたが、神象が発生するのは『強い感情を抱いた』ときです。しかし、あなた方はまだ自分の神象を知らない。そこで」
ビュンと何かが頬をかする。頬に触れると軽い切り傷ができており、血が出ていた。
「今からマネキンたちと戦ってもらいます。戦いの中ではさまざまな感情が飛び交います。自分の神象を知るにはうってつけです。さあ、始めましょう!」
先程の言葉を訂正しよう。今日は間違いなく人生で一番最悪な日だ。あのとき、名刺を机にしまわずに破り捨てておくんだった。




