第2話「神象コントロールアカデミー」
本作に登場する組織・人物はすべて架空のものです。
次の日、私たちはまたいつもの公園に集まった。私は迷ったが、結局昨日の不審者の名刺を持って行くことにした。
「みー、おはよう。昨日はあれから大丈夫だった?」
「おはよう。大丈夫だったよ。とーは?」
「俺も平気。たーとめーも何ともなかったって。」
全員無事だったみたいだ。良かった。ちょっと緊張感が解けた気がする。たーとめーの方を見ると、軽く喧嘩をしていた。
「昨日のヤツ本当になんだったの!?訳わかんないこと言ってさ!あたしたちが死んじゃうって!?不吉過ぎない!?死亡フラグじゃん!」
「あいつへの怒りはわかるけどさ、少しボリューム落とせよ!耳がキンキンするんだよ!」
「なんだよ!たーはさ、あんなこと言われて平気なわけ!?」
「うるさいな!ずっと気になってるよ!悪いかよ!」
「はいはい、そこまで。みーも来たしさ、緊急会議しようぜ。」
私が昨日怪しいヤツからもらった名刺をみんなで囲んで見る。
「住所とか書いてなくね?」
「本当だ。気が向いたら来いって言っておきながらこれはなくない?」
「確かに。裏にも何にも書いてないな……もしかして、何か条件を満たすと自動で行けるとか?」
「オレ、そういうのアニメで見たことある。」
「でも、それはフィクションでしょ?ありえなくない?」
「それなら、昨日防犯ブザーの音が鳴らなかったのは?途中で鳴るようになったけど、最初は鳴らなかった。家帰ってから確認したけど、壊れてもない。」
「……」
堂々巡りだ。結論が出ない。しかも、たーとめーがまた揉めそうな空気だ。面倒なことになるから、どうにかしなくては。
「ひとまず名刺にある情報を参考に調査しよう。」
「わかった。それなら俺、『神象コントロールアカデミー』について調べてみる。」
「じゃあ、あたしは『ヒビキ』で検索する。いろんなのヒットしそうだけど、何かわかるかも。」
「オレはどうしようかな……バカ正直に『神象』で調べてみるか?」
「そうしてみて。私はもうちょっと名刺よく見てみる。何か隠れてるかも。」
もう一度ヒビキとかいうやつの名刺を見てみる。相変わらずパッと見てわかるのは『神象コントロールアカデミー講師 ヒビキ』という情報だけだ。太陽に透かしてみても何も隠れていない。そうだ、火で炙ると文字が出てくるトリックがあったな。それを試してみるか?そう思いを巡らせていると、各々調査結果が出てきたみたいだ。
「やっぱり『神象コントロールアカデミー』じゃ、ヒットしなかった。何なんだろうな。」
「ヒビキいっぱいい過ぎて一人じゃ無理〜。でも、それっぽいのはいなかった。謎過ぎる。」
「オレはヒットはしたけど、象の神様だったり、神様の彫刻や絵画のことだったりで、あいつの言ってることとは関係なさそう。」
私も何もわからなかった、そう返そうとしたとき。
「いてっ。」
名刺で指を切ってしまった。やばい、しかも名刺に血がついたみたいだ。思ったより血が出てるし、血は名刺につくし、今日は散々なスタートだ。
「あ、みー、指切ってんじゃん。大丈夫?」
「俺、絆創膏持ってるから使えよ。」
「サンキュー。ちょっとたー、これ持ってて。」
「おっけー。…………ん?」
絆創膏を巻き終えたので、たーから名刺を受け取ろうとする。しかし、何やら彼は名刺を凝視している。
「何かあった?」
「なんか、血がついたところが気になって……」
「どれどれ?」
「俺にも見せて。」
みんなで名刺を改めて見てみると、血のついたところに『鏡』という文字が浮き上がっているように見えた。私の血でこんな現象が起こるのは怖過ぎる。何なんだこれは。これがあいつの言ってる神象か?何もかもが神象に思えてくる。
「『鏡』……?」
「絶対これヒントだな。でかしたぞ、みー!」
「こっちは怖い思いしてるんですけど。」
「でもまあ一歩前進って言ったところだから良しとしようぜ。」
ヒントである『鏡』に関することをみんなで調べ始める。
「私が知ってるのは『合わせ鏡をしてはいけない』ってことかな。」
「どうして?」
「どうしてだっけな...異世界的な意味かな?」
「鏡はこの世とあの世の境目らしいぞ。」
「あー、らしいな。そういう設定使ってる作品あるし。俺知ってる。」
「じゃあ、合わせ鏡してみて、異世界への扉......開けてみる?」
「それなら、どこの鏡使うか問題が出てくるよな。」
鏡鏡鏡……鏡がゲシュタルト崩壊してきたな。
「そういえば、鏡には普通の鏡の他に、水鏡もあるよね。」
「水鏡かー。一応あそこに噴水あるからワンチャンいけるかな?」
「やってみる?あたし、鏡持ってるよ。」
「やってみるか!案ずるより産むが易しって言うしな!」
「たー、珍しくことわざ使ってんね。」
「勉強したからな!」
めーを中心に、公園の噴水に近寄る。何故だろう、たいしたことじゃないはずなのにドキドキする。そもそもなんでこんなに神象コントロールアカデミーに行く気満々になってしまっているのだろうか。根本的に問題がある気もするが、興味が上回っている今はそこに注意が向かない。
「じゃあ、いっくぞ〜!」
めーが鏡を噴水の水面に向ける。しかし、何も起こらない。
「違うんじゃね?」
「違うかー。残念……なんであたし残念がってんの?」
「ていうか、そもそもなんで俺たちこんなに乗り気なんだろうな。」
「よくわからないから、もうこの話題ここまでにしとくか。」
名刺問題はこれでおしまい。みんなでゲームセンターにでも行こう。気晴らしにホッケーでもしよう。私がしたいだけだけど。
「あ。」
めーが鏡を噴水に落とした。
「あー!お気に入りの鏡だったのに!最悪!誰!?合わせ鏡しようって言った人!」
「お前だよ!」
また、たーとめーが喧嘩を始めた...よく飽きないな。私が代わりに拾っとくか。鏡に手を伸ばした瞬間。
「待ってましたよ。」
目の前に昨日の不審者、ヒビキがいた。どうなってる?周囲を見回すと、知らない場所。机が4つ横に揃えられている塾の一部屋のようだ。窓もあり、外は明るい。他の3人は無事か心配になり確認すると、私と同じく困惑していた。ひとまず無事なようだ。
「どうなってんの!?合ってるってこと!?」
「ほら!合ってんじゃん!何なんだよ!」
「2人とも落ち着けって。めーに至っては何に怒ってるんだよ。」
「……説明していただけますか?」
私は状況を把握するために尋ねた。
「はい。あなた達は今、神象コントロールアカデミーに来ているんです。きちんと来てくれて嬉しいですよ。」
「私たちがしたことは、あなたにとって正解だったということですか。」
「その通り。お待ちしていましたよ。さあさあ、こちらへお座りなさい。」
私たちはぐいぐいと背中を押されて、席に座らされた。
「さて、神象コントロールアカデミー、開講です。」




