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57:譲渡(じょうと)
〇前回のあらすじです。
『ユノの疑問に答え終えた精霊が、パンドラの持ち物に目をつける』
乳白色の、四角い表面。
子どもの片手にさえすっぽり包みこめそうな、それは小さな箱だった。
精霊の、無言の律令にしたがって、箱はパンドラの眼の高さにまで浮かんでいた。
ピタリと。その位置で静止させたまま、ビビアンは溜め息をつく。
「これが、実験台のなれの果てってわけね。それで、パンドラ。誰があなたに、これを渡したのかしら」
「セレンです」
「理由は?」
「こちらのユノさんにあげるようにと。それで、教会の人たちもその箱を狙ってるから、そちらに横取りされないように、精霊さまの加護のあるテリトリーまで案内してからになさい。と」
「ま。妥当ね」
「目的のためなら手段は選びませんからね。竜神教は」
アウラのささやきを受けて、ビビアンは「相変わらずね」と嘆息した。翡翠の視線をスライドさせて、箱を、パンドラの隣りに立つ剣士にすべらせる。
胸の高さに移動してきた箱を、剣士――ユノは黒い双眸で見下ろした。自然に両手を差し出す。
剣術用のグローブをはめた彼の手のひらに、ビビアンは箱を下ろした。
宿り木に小鳥が羽休めするように、すとんと箱は、ユノの手のなかにおさまった。




