54:全否定
〇前回のあらすじです。
『道徳と善いこととは、一切関係ありません。ってはなし』
「じゃあ。あなたたちや神の言う善性って、なんなんですか?」
意気込んでユノは訊いた。それは、ただ知りたいというよりも――。
「なにも教えてくれないくせに。ボクらが一生懸命考えて、時にまちがった形で実行までしてしまうことを、後になってから『そうじゃない。ああじゃない』って、罰を与えて否定するだけなんて、ひどいですよ!」
ユノは憤慨していた。
かつて知り合った魔族の女の子は、そうした誤解の善行によって殺された。
フレデリックだって。ユノはあまり好きではなかったが、彼は彼なりに自分の正義を信じていた。その信念は、愚かではあったかもしれないけれど、化け物になって、友人に殺されていいほど、罪深いものではないはずだ。
まちがっても、仮に自分が神さまだったとして、ユノはフレデリックのような青年に、そんな仕打ちをくだそうとは思わない。
ユノは叫んだ。玉座の精霊に。
「あんまりなんだよッ。なにが善いことか分かってるなら、最初っから、教えてくれたらいいじゃないか!!」
背後で――。
そして、段上の王座の脇で、近衛たちがいっせいに武器を抜く。
彼らに――彼らのなかの、誰かたったひとりにでも背後から斬りかかられれば、冷静さを欠いている今のユノでは、為す術なく打ち倒されてしまうだろう。
ただ捕えられるというだけなら、まだやさしい。
この場合、打たれた先に待っているのはきっと『死』だ。
白い片手をビビアンが上げる。
兵たちが、武器をおさめる。




