53:善性
〇前回のあらすじです。
『精霊ビビアンが、ユノたちのはなしを聞いてくれるようになる』
精霊の女にユノはひととおりの経緯をかいつまんで説明した。
魔女のマーリンに、シチリ島で会ったこと。
現在の人間世界で起こっているゆがみ――。とりわけ、人間のグール化。
セレンの予言。善のちからの純化が、やがて人間をみずから破滅たらしめ、その運命は、平定の要たる黄金の竜が帰ってこない限りまぬがれない。
そして竜の返還は、ユノの行動如何にかかっている。と。
「ふーん」
玉座で話を聞いていたビビアンは、今日の夕飯のメニューが一昨日と同じだった時みたいな声をした。
緑の瞳がアウラを見あげる。
「人間のグール化は、もともとよね」
「そうですね」
「そもそも人間ってのは魔族の奇形なわけで。魔法の才にめぐまれなかった出来損ないが、いろいろと知恵をしぼってべつのかたちに進化した、亜種なのよ。でもって。一部の人たちがありがたがってる善性ってのは、人間が騙る――なんていうのかな……」
「道徳ですか?」
のどの奥に魚の小骨がひっかかったみたいに首をさするビビアンに、ユノは訊いた。
彼の表情は険しい。
ぱちんとビビアンが指を鳴らす。
「そう。それね。その、どーとくっとかってのとは、まーったく、なんの関係もないわけよ。むしろそーゆーのはね。それこそ善性ってのに見放された人たちが、必死に自分たちも持っているフリをして、その“フリ”を真実らしく見せるための、口弁でしかない」
「だから、どんどん歪みは大きくなっていくのです。取り返しがつかないくらいに」
精霊のそばから、アウラがユノに補足した。
彼女たちの言っていることは分かる。




