50:ストイック
〇前回のあらすじです。
『側近の女が、主・ビビアンの過去を、勝手にはなしはじめる』
固唾を呑む音がする。
広間にいるもの全員がじっとしていた。
居並ぶ近衛らのなかには、聞き飽きたものもいるようで、あくびの声も聞こえたが。
「そう。ビビアンさまは、かつて地球より、彼の魔法使い・マーリンを呼ばれました。時の魔王を倒すために」
――じゃあ。とユノは思った。彼女も自分と同じ、異世界から召喚された勇者だったのかと。
ビビアンがブツクサ言う。
「あのころには、地球にもまだ魔法があってね。まあ。その後もろもろの事情があって、失伝しちゃったみたいだけど。それはともかくとして」
「こちらに来る以前から、マーリンは強くあられました。なのでビビアンさまも、期待されたのですが――」
「なにか不都合があったんですか?」
隣りの主の補足を継ぐかたちで事情を説明する女に、ユノは訊いた。しかしこれには主人たるビビアンが答えた。
「あいつってば。言うこときかなかったのよ。無理強いしようにも、べらっぼうに強くってさあ……」
「ちからづくで言うことをきかせようとしたビビアンさまを瞬殺した挙句、どういう原理か、精霊のちからの一部を奪って、更に手がつけられなくなってしまったのです。不幸中の幸いだったのが、彼女はただの、知の探究者であったこと。ひとり静かに研究をつづけられる場所があれば、他にはなにも望まず、精霊から獲得したちからも、無暗に振りまわしたりはしないと、約束されました」
「すごいストイックな学者さんだ……っ。かっこいい」
きらきら。
パンドラが目を輝かせて息を熱くする。
ユノはただ、感激している少女が将来そんな風にならないのを祈るばかりだ。
いや。ストイックになるのはべつにいいのだが。




