表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/71

41:地の底 空の彼方



   〇前回のあらすじです。

   『魔族まぞく少女しょうじょ・パンドラが、ふたりのおとこをしりぞける活路かつろいだす』






 インボリュートのジャグリングがわる。ぱしッ。と片手に持った剣が、パンドラの脳天のうてん目掛めがけて、振りろされた。

(このおとこの人たちも魔法まほうは使えるはず。それも、転移系を。なら、フツウとはちがうことわりはたらくところにでも行ってもらわないと――)

 思考しこう一瞬いっしゅん

 めまぐるしく回転する意識の途中とちゅうで、すでにパンドラはとなえていた。

しずめインボリュート。奈落ならくの底に!」

 わかい男――インボリュートの動きは止まらない。

(……真名まなじゃ、ない!?)

 曲刀きょくとうやいばよるやみを切り裂いて、がくぜんとするパンドラの亜麻あまいろ頭髪とうはつにせまる。慣性かんせいのままに。

「なっ――、」

 あしいこまれた。インボリュートの脚だ。かれの身体がしずむ。坂道さかみちにずるりと。まるで地面じめんが唐突にぬかるみになったように。

 真実の名前なまえだったのだ。

「くあっ……?!」

 パンドラにかっていた短剣が軌道を変える。

 どうまでを大地にくわえられたインボリュートが、地面じめんに突き立てようともがいたのだ。鎌状かまじょうの剣は、ガッ! と硬いおとをたててかわいた足場あしばに刺さった。だが。


「この……っ。小娘こむすめがあああ……」

 けんつかもまた液状えきじょう化して、インボリュートの救済きゅうさい放棄ほうきする。

 わかりのあるおとここえが、またたく地面じめんの底へと消えていく。

 ――とぷんっ。

 なおも地を掴もうと、天にばした男の手の指先ゆびさきが、最後に波紋はもんを打ってしずむ。

 そして大地は、なにごともかったかのように元の状態じょうたいを取りもどした。

 かれのいた場所ばしょに、彼の得物えものである、ふた振りの剣をのこして。

「な……っ」

 相棒あいぼう青年せいねんこったできごとを、ようやくハインツは理解した。そのために、初動しょどうおくれた。

「なんとっ。小賢こざかしい!」

 戦槌せんついを。野球やきゅうのスイングのように振りぬきながら、ハインツがその巨体きょたいいのししのごときいきおいではしらせる――。

 はやい。

(でも、私には充分じゅうぶんなのよ。それで)

 同等どうとう呪詛じゅそくには、こと足りる時間だった。

 ハインツの反応はんのおおくれは。

 パンドラは手を振りげてとなえる。


べハインツ。ほし彼方かなたへ!」

「ぐっ、」

 途端とたん。ハインツのおおきなあしが浮く。

 ブおウンと振った戦槌せんつい――それはパンドラの前髪まえがみをかすっただけだった――に、それだけが命綱いのちづなのようにしがみつき、しがみついたまま、ハインツの巨躯きょく夜空よぞらへと打ちげられる。

 びゅーん。

 と滑稽こっけいなほどのもうスピードで、あっというに、ハインツは星空ほしぞらへと消えてしまう。

 ふかやみを越えて。雲を突きぬけて。恒星こうせいのまたたきと、巨大きょだいな月を横切よこぎって。大気のそうをつらぬいて。

 そらにキラリと、星がひとつえた。

「ふう……」

 く手をはばんでいたふたりのおとことうげみちからいなくなったのを、パンドラはひたいあせをぬぐいつつ確信した。


   〇


 広間ひろまに浮かぶ、玻璃はりかがみ

 任意にんい場所ばしょを映し出す魔法まほうの道具だ。それを玉座ぎょくざすわってながめていたおんなは、ただひとり、夜道よみちのこった魔族まぞく少女しょうじょに、をぱちくりさせていた。

 ハインツとインボリュートをユノたちの元へやったあるじだ。彼女かのじょは気づいていないが、玉座の間にいるほかの面々(めんめん)も、似たようなかおをしていた。

 きょとん。とか、ぽかん。とか。そんな感じの表情ひょうじょうである。

 インボリュートとハインツが子どもにしてやられたことに対して――というより。彼らが『地の底』と『宇宙うちゅうて』にいやられてしまったことに対しての反応はんのうだった。

 名前なまえもっ相手あいてを制するとは彼らも知る技術ぎじゅつであり、どこかにワープさせるというのは手段しゅだんとして常套じょうとうだが、それにしたって、成層圏せいそうけんを越えた領域りょういきや、地核ちかくに行けとめいじるなんてことはしない。

「え……」

 玉座ぎょくざおんなの声が、広間ひろまに響く。それはこのにいるもの全員の感情かんじょうを代弁していた。あんぐりと。彼女かのじょは言ったのだった。

「えぐいことするわ……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ