表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/71

23:種





   〇前回ぜんかいのあらすじです。

   『おひるごはんを、ユノがテノンと食べる』






   〇



 昼食ちゅうしょくえて、テノンは自分たちの寝室にはしっていった。

 手招てまねきされて、ユノも食器しょっきを片付けてからつづいていく。

 ごそごそ。テノンはたなを探っていた。でつくった短剣の模型や、いくらかの石ころが飾ってある木棚(きだな)だ。

「これがそうだよ」

 足場あしばの台からおりて、テノンは言った。

 少年しょうねんの突きだした手をみる。

「たね?」

 ちいさな袋からテノンが出したのは、はなたねらしき(つぶ)だった。

「うん」

えないの?」

()わらないんだ」

 まどの外をテノンはた。

 その先にある緑地(りょくち)ためしてみたのかもしれない。

「はねかえってくるっていうか……。種そのものがイヤがってるみたいに」

「そうなんだ」

 じっとユノは種を見つめた。


 『土壌(どじょう)わない』というのは、園芸などでも聞いたことがあるが、それは『枯れる』とか『育ちがわるい』という意味いみであって、種子そのものが土からはじかれるということはない。

精霊(せいれい)さまは、どうしてこれをきみに?」

 以前いぜんにユノも精霊とゆかりのつよい少女しょうじょ――【巫女(みこ)】から指輪ゆびわたまわったことがある。精霊のちからを宿したそれは、窮地(きゅうち)でユノに神聖なる剣【エクスカリバー】をもたらし、魔王まおう【ディアボロス】の首を()りとった。

 なら。テノンにたねあたえたのもまた、この世界においてなにか意味いみがあるのかとおもったが。

「わかんない。でも『いつかねがいをかなえてくれる』からって」

「ねがいを?」

「うん」

「だれの」

「そりゃあ。植えたひとのだろ」

「ふうん……」


 いつのまにかげていた腰をユノはのばす。テノンもたねを袋になおす。

「って言ってもオレ、べつにねがいごとなんてないんだよね」

「そうなの?」

 こくりとテノンはうなずいた。

おやはやくに死んじゃったけど、兄ちゃんいるし。のんきにめし食って家のことやって、あそんでのんびり生きてるからな。それ以上いじょうって、実はなんにもいらないんだよ」

「いいね」

 そんな暮らしをユノもしたかった。

 たびわったら、どこかでまったりごすのもよさそうだ。

「ねえ。」ユノは?」

「ん?」

「なんかある? 願いごと」

「どうだろう」


 しょんぼりとユノは黒いを伏せた。

 本当ほんとうにどんなねがいでもかなうなら、いますぐにでもこの世界に安息あんそくをもたらしてほしい。

 なにが(よい)だの(わるい)だのなんてもううっちゃって、自分のおもうように、なんの重責じゅうせきうこともなく、気ままに生きてきたい。

 ――一年(いちねん)まえに死んだ、魔族まぞく少女しょうじょを生きかえらせる。というのも考えたけれど、たして彼女かのじょ自身がそれをのぞんでいるのか。

 不思議ふしぎとユノは、彼女をねむりにつかせたままにしておきたかった。

(それに。精霊の渡したものってのが引っかかるんだよな)

 【精霊せいれい】や【妖精ようせい】は、この世界の自然力(しぜんりょく)――風火水土(ふうかすいど)などを司るものだと、まえにおしえてもらったことがある。

 厳密げんみつな区別についてはユノはまだ曖昧あいまいだが、例えはっきりしたちがいがわかったとしても、人間に対する認識は、精霊もまた妖精セレンと似たようなものの気がしてならなかった。


(なにかうらがあるような……)

「うーん」

 がつくと、のまえでテノンがうなっていた。彼はユノの横顔よこがおてなやんでいた。

「いいや。ユノ、これあげるよ」

 ちいさい袋と(ひも)でお(まも)りみたいになったたねをわたす。

「えっ」

 と仰天ぎょうてんするユノにテノンは言った。

冒険者ぼうけんしゃなんだろ。じゃあ、やばいモンスターと戦うこともあるわけじゃん。『まずい』ってなった時に使えば、きっとたすかるよ」

「でも。そんな大事なもの……」

やくに立つとおもうけどな」

 無理むりやりテノンはユノにちいさな巾着(きんちゃく)袋を握らせた。

「ぶっちゃけオレんとこにあっても、いつか知らないあいだにてちゃいそうでさ」

「きみの獲物(えもの)を逃がしたうえに、こんな貴重きちょうなものまでもらったんじゃ、ボク全然(すじ)とおらないよ」

「なあんだ。ちゃんと『わるい』っておもってくれてんだ」

「あたりまえじゃないか」


 ちちちとテノンはゆびをふる。

あまいぜユノ。だってバリト兄ちゃんはさあ、『わるかったー』とかくちではあやまるけど、ないしん心ではオレのせいにばっかしてるからな。つい疑っちゃうんだよ」

「じゃあ。お兄さんの性格なおしてもらえばいいのに」

 そうかっ。とユノの提案ていあんにテノンは手を打った。

 が。すぐに肩をすくめる。

「でもなんか。それはそれで気持ちわるいな」

 とことことテノンはノを横切よこぎってあるいていった。寝室を出ていく。

「さ。めしのつぎは薪割まきわりだ。ユノ、やったことある?」

「ない……」

「しょおがないなあー」

 言葉ことばとはうらはらに、テノンはキゲンよくむねった。

「じゃあオレがおしえてやるよ。ついてきて」

 意気揚々(いきようよう)と、テノンは居間いまから外にいく。おおきく振られた手にさそわれて、ユノも家からた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ