21:お料理つくるで
〇前回のあらすじです。
『村に入ったユノが、バリトに家事をまかされる』
〇
鹿の解体をすると、バリトはそのまま家を出ていった。
村長の屋敷に牢の食事番の変更を伝えに行ったのだ。
民家の床に、ユノはショルダーバッグをおろす。上着のジャケットもぬいで、テノンが指定した服かけにつるした。
バリトとテノンの家には、三つの部屋がある。
玄関からはいってすぐの部屋が、ユノたちのいるダイニング。炊事場は食事場といっしょになっていて、居間も兼ねている。というより区別がない。
奥が兄弟の寝室。
隅っこのちいさな部屋は御不浄だった。
湯あみのできる場所はない。
村人は毎日、森のなかにある泉まで出かけて、身体の汚れをすすぐのだ。
男女で入れる時間は別れていた。正午から夕刻までが、子どもと女性の時間帯。日没から夜ふけまでが、男性の時間帯となる。
煮焚き場で、ユノはさばかれた鹿肉を料理する。あつかったことのない食材なので、テノンの指示を受けての調理だった。
石の台にあいた、丸い穴のなかで火が燃えている。薪に火打ち石で点けたものだ。
じゅうじゅう。
フライパンを片手に、塩と胡椒、乾燥した香草で味つけをした薄切り肉を焼いていく。
「なあユノお」
「うん?」
「まだー?」
「赤いところまだ残ってるけど。それでもいいなら」
「あたったら怖いからやだ」
ぐでっ。とテノンはテーブルで伸びていた。板ばりの床のうえで、足をぶらぶらさせている。
(すっごい暇そう)
緩慢な空気をユノは背中に受けて、ながす。
村特産の植物オイルが、肉の香りづけに一役買っていた。いい匂いがする。




