表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/71

18:問い




   〇前回ぜんかいのあらすじです。

   『冒険者ぼうけんしゃのアドニスとフレデリックが、むらむすめのアリアに、いずみみずをもらう』





   〇


 むしが飛んでいた。

 ぷああ~ん……。

 みみもとを羽音はおとがかすめる。

 ぱちんッ。

 自分のほおを打つと、手のひらにおおきめの虫がひっついた。

(やぶ()だ)

 はついていないので、われるまえだったのだろう。

 つぶれた死骸をズボンにこすりつけて、ユノはひとり森をあるいた。

 やまのふもとである。

 木々(きぎ)は紅葉こうように染まっていた。

 気候きこうはすずしく虫がおおい。

 岩肌いわはだ目立めだち、地形は起伏きふくがはげしかった。整備された、道路のようなみちはない。

 動物どうぶつとおって自然にできた獣道(けものみち)をユノはすすむ。

 地図ちずもなく、草をわけてほそい通路をのぼっていく。

 さらさら。谷には沢がながれていた。

 水辺みずべに人のむ地はあるため、せせらぎを目印めじるしに辿るかたちで上流じょうりゅう目指めざす。


 ――ぎ。……きぃ。

 なにかがしなるおとがした。

 こしいたの剣帯をユノはる。

 つるぎれたものでも、肩かけかばんのショルダーベルトがたてた音でもない。

 の枝にロープがぶらさがっている。

 なわ垂直すいちょくに下にかってのびていた。

 その先に、茶色い生きものがぶらさがっている。アナウサギだ。

 だれかの仕掛けたわなにかかったのだ。前脚まえあし後脚うしろあしをロープでまとめて捕らわれて、抵抗もむなしくちゅうづりになっている。

 きょろきょろとユノはあたりをまわした。

ひとは……。いないな)

 うさぎに近きながら、ユノは剣の(つか)を握る。


 くろをうるうるさせて、アナウサギは旅人に慈悲をうていた。

 ひゅんっ。剣を一閃(いっせん)

 木から垂れたロープを切った。

 やわらかい土のうえにアナウサギはちる。

 ころがって、あし拘束こうそくしていたロープがほどけた。

 うさぎは一散(いっさん)に逃げていく。

 もりおくに、茶色い影がちいさくなっていく。

 やがてうさぎはえなくなって、ユノは息をついた。

 わなにかかった獲物えものは、これまでにも何度なんどとなく見てきた。人がいなければたすけたが、それはユノに利己的な満足感まんぞくかんをもたらすと同時に、憂鬱ゆうつたね発芽はつがさせもした。

 もし。先ほどのうさぎに(つの)一本(いっぽん)でもえていて、「あれは魔物まものですよ」とおしえられれば。どうしただろう。

 いきなり殺すとまではいかずとも、「罠にかかっているのを解放かいほうするかどうか」くらいはなやむ。

 そう考えたとき、かつて妖精ようせい女性じょせいに言われた言葉ことばおもい出すのだ。

 宗教しゅうきょう色のつよい【コルタ】というまちに滞在していた時。森の奥深おくふかくにんでいた【魔族まぞく】の少女しょうじょが、住民じゅうみんたちの迫害はくがいすえに殺された一件(いっけん)

 町人(ちょうにん)たちに逆上ぎゃくじょうしたユノに、妖精の族長ぞくちょうセレンがげかけたい。


 ――あなたのやってきたことと、なにが違うんです?――


 魔物まもの魔族まぞくのちがいは、ただすがたが動物か人型かの違いにすぎない。

 そしてものと人間の区分もまた、だれかが作って勝手にったラベルの差でしかない。

 もの以外のなにかを無条件むじょうけんにたすけるたびに。

 怪物かいぶつである生きものを、罪悪ざいあく感もなくほふる自分を自覚した瞬間しゅんかんに。

 あの。セレンの疑問はユノの脳裏のうりぎり――。

 ふたをしては、またひょっくりかおを出す機会をうかがうのだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ