12:ニュッ。
・前回のあらすじです。
『冒険者ギルドで、ユノが【パンドラの箱】を探すクエストをみつける』
〇
亜麻色の髪がゆれる。
肩にかかるカーブのかかった地毛。
それをわずらわしくはらって、少女は丘を駆けのぼった。
砂色のマントに、旅人の服をまとっている。背は低く、顔立ちはおさなく愛らしい。
木々(きぎ)に覆われた登り坂には、ほかにも旅装束のものがいる。
みな手や背中、腰に武器をたずさえて、皮や金属の帷子をものものしく鳴らしていた。
戦士たちのすきまをくぐるように、少女は高いところにある建物を目指す。
『冒険者ギルド支部』と看板をかかげた建物が、梢の向こうに顔を出す。
玄関口から、人々は吐きだされていた。
そのなかにまじって、黒髪の、のっぺりした顔つきの少年が出てくる。
長めの剣を腰にさげ、なめし皮のベストと厚手のロングパンツ、ゲートルで武装した戦士だ。
彼のことを少女はよく知っていた。
(あっ。ユノさんだ)
目当ての人物をみつけて、少女は足をはやめる。
旅用の――しかし大地を歩くことは実はあまりしていないので、さほど汚れていない――ブーツが、小気味よい音をたてる。
景色が、にゅッと少女の背後でゆがんだ。
空間が裂ける。
静かにのびた白い手が、少女のマントの襟をつかんだ。
行き交う人々の、だれも気づかない。
「えっ」
と少女が言った時には、小さなからだが宙に浮く。
パーティーメンバーと雑談していたほかの冒険者たちが、かすかな声に気づいて振りむいた。
その時には、もうそこにはだれもいなかった。
丘の岩肌に沿ってめぐる坂道だけが、相変わらずのびている。
冒険者たちのなかのチームのひとりが、虚空を注視する。
「おいフレデリック。どうした?」
「あ。いえっ」
高価な鎧――金属の全身鎧だ――で身をかためた青年が、黒髪の男に呼ばれてそちらに急いだ。
みじかい金髪に、さわやかに輝くとび色の瞳。
二十歳ほどのいさおだが、『武人』というよりはおひとよしな隣人。という風采の若い男だった。
彼はうしろで面妖な気配がして振りむいたのだった。
子どもの声がした気がしたが。あらためたところでなにもない。
自分と同じように、きつねにつままれたような顔をしている冒険者が何人かいるのが気になったものの、ほかのものと同様に、気のせいかと言いきかせた。
前方で待っている、もと上司の男のほうに駆けていく。




