11:ギルド支部
・前回のあらすじです。
『広場でユノが司祭の演説を聞く』
〇
西区の丘にある建物。
高台に建つ大きな館は、エルドランの町をふくむ周辺地域をおさめる領主が寄付したものである。
正面玄関の看板には、『冒険者ギルド支部』と大陸語で彫られていた。
剣と盾のエンブレムが、そのうえに堂々と輝いている。
ユノは、そのギルドの受け付けにいた。
「どういうことなんですか?」
職員の男に問いかえす。
細身で眼鏡の、ベテラン風の壮年が、事務的な表情でくりかえす。
「ですから。グールの掃除をおまかせしたいと」
「でも。彼らはもともと人間なんでしょう?」
ほかと比べても小奇麗なギルド内は、仕事を受けにきた戦士たちで賑っていた。
職員に食い下がっているユノの声も、待合所にいるグループの談話や、なかまをスカウトする声、報酬額に対する職員へのクレームなどにまじって、雑音の一部になっている。
受け付けの男――制服の左胸にさげた大きな職員バッジには、【ピグマリオン】と彼の名が捺されている――は、日焼けのしていない白い首をかるく振った。
「人間の皮をかぶった化け物ですよ。ユノさん。とおっしゃいましたか。司祭さまの演説がまだでしたら、聴講をおすすめしますが?」
壮年の男――ピグマリオンは、それで説明は果たしたとばかり、ユノに退席をうながした。
うしろには【依頼書】を手にした戦士たちがひかえている。
彼らに小さく会釈して、ユノはカウンターからすごすごと退いた。
質問のために剥がしてきた小さな紙を、掲示板にもどしにいく。
奥にあるコルクボードには、エルドラン近郊で見つかったグールの巣の一掃が、教会経由のたのみとして貼り出されていた。
押しピンで掲示板に刺された、もう数えるほどしか残っていない正方形の紙切れをながめる。
実入りがいいため、競うようにはがされてゆくのだろう。
(ほとんど教会からのグール退治だ)
あいているスペースに、ピンで紙を留めなおす。
ペンドラゴン国王からは、この手の仕事を手伝えと言われたが。
(慎重に考えないと)
――依頼の怪物、グールは、エルドランの町に来る以前に何人か退治したことがあった。
もとが人だとは知らなかったとは言え、手にかけたのは実際にやってしまったこと。
そして知ってしまった以上、ユノは【グール】を斬りふせるのに、今までの気構えではいられなくなっていた。
(もう人殺しはしないって、フローラ王女とも約束したし。これ以上は……)
一歩。ユノはうしろにさがった。
真新しい紙が一枚、ボードの端にあるのに気づく。
(これは。モンスター退治じゃないな)
両目をすぼめて、ユノは内容を確認した。
手に取って、引きはがす。
それも教会からの依頼だったが、
「探索のクエストだ。探すのは……。えッ?」
パンドラの箱。
と、ユノは短い名前をくちずさんだ。




