10:人間
〇前回のあらすじです。
『司祭が演説をはじめる』
「この聖なる陸に、魔のものたちが未だ蔓延り呪われた地たらしめているのは、我らが同胞になりすました【異端児】の手による。先日も、この土地にて十数名の科人が確認された。彼らの証言によると、まだまだ町のあちこちに、邪悪の手先が潜んでいるという」
魔女狩り。
という言葉がユノの頭に浮かんだ。
ユノのもともといた世界で、西洋史における中世時代に起こった大規模な虐殺。
『異端』の名のもとに無実の民をとらえ、拷問にかけ、何万人もの人間を惨死させたという。
(メルクリウス(この世界)でも、同じことが起こってる……)
【魔族】に対する迫害は今にはじまったことではない。
けれど。いまだに現実味のあるものとして、ユノには処理できなかった。
強烈な拒絶があった。
司祭の声がより大きく、深い韻をふくむ。
「みなよ。神の子らよ。やつらに情けは無用である。やつら邪悪の徒は、われら聖なるものの手にかかったとき、その本性をあらわす。すでに見たものもあろう――彼奴ばらが、醜い化け物、【グール】へと正体を明かす瞬間を!」
(えッ?)
ユノは顔をあげた。
しまった。と思ったが、広場にいた聴衆も同じタイミングで頭をあげていた。
「そうだあっ!」
「殺せ!」
「やつらに慈悲はいらない!」
「司祭さま。お導きください!」
うむ。
と司祭は彼らにうなずいた。しわくちゃの両手を振って、町人を鎮める。
――再び鐘が鳴るまで、司祭の言葉は続いた。




