74話 担任が決まったり先輩がアレだったり
「やっと解放されましたわ。お待たせしました、ユキさん、アリサさん」
「おつかれー。モテモテだね~」
「ぜんぜんうれしくないですわ!」
クラスのほとんどの人がエレンのとこに居たからねぇ。
まぁ、うん、うれしくないのはわかるわ。崇拝される感じでほんと嫌なんだよね。対等になりたいのに、勝手に上下関係作られるからなぁ。
ただ、囲まれていたストレスをわたしで癒すのはどうかと思うよ? 隣に座ったと思ったら、すぐにわたしの尻尾をモフるとかどうなのよ……。
しかも尻尾はスカートの中に隠す状態だったから、わたしのスカートの中に手を突っ込んでるという、ひじょーに危ない光景なんですがー。お尻触ってる痴漢にしか見えないよこれ。
まぁ、アリサとエレンには好きな時に触って良いって言っちゃったからなぁ。触られること自体は嫌じゃないからいいんだけど。
って、アリサまで触りだすとか、わたしの尻尾がモテモテすぎー。
だけどね、そのね、テンション上がったのかもしれないけど、モフモフしすぎないでぇぇぇぇぇぇ。
ここは学園です、しかも教室です、さらに言うなら初日です。最初からから痴態を晒すとかさすがにやめ、うにゃぁ。
「ひよっこども、席に着け!」
アリサとエレンにモフられてたせいでちょっとふにゃけてたら、剥げたおっさんが教室に入ってきた。歳は50代くらいなのかな? 体を見る感じ、術者じゃなくて騎士とか戦士っぽいね。
しかし剥げたおっさんだったせいか、あからさまにがっかりしてるのがいるねぇ。わからなくもないけど。
「全員居るな? オレが貴様たちの担任となるマクレンだ。しっかり覚えておけ!」
うひゃぁ、挨拶っていうよりも威圧って感じだよ。これはもう先生っていうより、教官って言った方がいいんじゃないかな。
あー、貴族のお坊ちゃんたちがなんか抗議しだしたわ。その態度は何だとか、なぜ貴様のような男に学ばなければならないのか、などなど。何と言うか、お約束な反応だなぁ。
「不服のようだが、理由を言ってみろ!」
「は、はいっ! どうしてエルフのお姉さんが先生でないのですか? 僕らはそれを楽しみに……」
「エルフの方は担任などせん。講師の中にはおられるが、その授業を受けられるかは貴様の成績次第となる」
学校の資料には女エルフの先生が載ってたけど、何でそれが担任だと思うのやら。ほんと男ってバカだなぁ、気持ちはわかるけど! エルフのお姉さんとかすっごく良いですよね!
あぅ、心を読まれたのか、アリサとエレンにジト目されたわ。って、まてまてまって! もしかしてエレンにもバレバレなの? 思ってることが全部バレてるとか、わたしのプライバシーさんどこに行ったんですか……。
そういえばこの学園って選択科目なんだっけ。しかもその科目ごとに評価があって、高評価であればより優秀な講師の下で勉強できる。逆に悪ければ受講すらできなくなる。
となると遊び惚けることはできないかなぁ。良い評価を貰ってお父様とお母様に褒めてもらいたいし。あっ、そうだ
「せんせー、従者への評価は、主人の評価や態度とかは影響しないですよね? あくまで従者自身の実力が評価されるんですよね?」
「そこに気付いたか。その通りだ、従者であっても生徒に変わりはないからな。だが主人と従者は一緒でなければならない。よって、成績の悪い方に合わせた講師の下で学ぶようになると考えてくれ」
「なーるほど、ありがとうございまーす」
わたしとアリサが一緒に頑張らないとダメってことだね。それにきっとエレンも同じ授業受けるように頑張るだろうし。
これはあれかな、お友達との勉強会イベント起こったりするかな? 前世だとそんなイベントを経験した記憶がないから、ちょっと楽しみが増えたかも。
その後も評価は誰がするのか、必須授業はあるのか、出席率は評価に影響するかなど、細かいことを一通り聞いたけど、予想通りだったからよかったわ。
特に出席率が評価に影響しないのは良かったなぁ。ダンジョン行ってたせいで出席がぎりぎりでしたとか、絶対やりそうだし。
それにしてもこの先生、言い方はきつめなんだけど良い人っぽい。資料に載ってそうな事でもちゃんと答えてくれたし、補足などもしてくれたわ。
でもまぁ、うん、バカな生徒相手にはすっごい厳しい感じだね。悪い見本として気を付けよう。
「そろそろ時間だな。他に質問などがあったらいつでも聞きに来い。さて、これから貴様たちには先輩生徒が付き、施設の案内をする。入ってきてくれ」
先生がそう言うと、数人の生徒が入ってきた。
入ってきたんだけど、まぁ、うん、予想通りだったわ。なのでここは抱きつき!
「はいアリサ、飛び出しちゃだめだよー」
「あ、あの、わ、分かりましたから。その、周りに見られてますので」
「わたくしも抱きつきましょうか?」
「いえ、大丈夫ですから! 飛び出しませんから!」
周りから見られてるけど、ここでアリサが武器持って暴れた方がヤバいからね。それに女の子同士だし、抱きついても変には思われないでしょう、たぶん。
しっかしマジでカイルが先輩だったとはねぇ。
カイルを含めた先輩方の自己紹介が済んだところで案内が始まった。
ただ、案内すべき先輩の一人がわたしに対するアピールや説明が多いのはどうなんだろね? わたしは望んでないんだけどなぁ……。
それにしても、カイルって人気者なのかな?
『きゃー銀の貴公子様よ!』
『やっべ、俺初めて見たわ』
『相変わらずかっこいいよなぁ。俺も狐族で生まれたかったぜ』
といった声が聞こえてくるんだけど。
「ねーねーカイル、あなたってここだと〝銀の貴公子〟なんて二つ名ついてるの?」
「よくぞ聞いてくれた! そうなんだよ、二つ名持ちなんだよ!」
あらまぁすっごい興奮しちゃって。
まぁ色眼鏡無しで客観的に見れば、顔はイケメンっぽい、背も高め、体も引き締まってる、しかも天魔に進化済みで強い、そして狐族ゆえに何となく色気もある。
二つ名ついてもおかしくはなさそうだけど、貴公子ねぇ。そういうキャラじゃないなぁ。
「二つ名持ちって他にも居るの?」
「結構居るぞ、案内してる全員二つ名持ちなくらいだ」
「へー。ちなみに二つ名って誰が付けてるの?」
「生徒が勝手につけてるのが大半だな。だいたいは学園での大会や普段の行動なんかをみて、後輩が勝手に呼び出したのが広まるってことが多いか」
予想通りといえば予想通りかな。
ということは、目立たなければ二つ名はつかないってことだね! なら目立たないように……は無理だろうなぁ。どうせすぐにわたしがどこの家の出身で、だれの娘なのか広まるだろうし。せめて変な二つ名は付きませんよーに。
それにしても
「銀はわかるけど、貴公子って何よ?」
「カッコイイだろ? まぁ正直、俺にもわからん。おそらく学園主催の武術大会で何度も圧勝してるからだとは思うが」
なっとくなっとく。確かにカイルの実力ならそこいらの天魔には負けないから、圧倒的な力の差って感じになっちゃうんだろうね。
でも世間の二つ名に対し、わたしたちが納得するかは別なわけで。カイルの普段の振る舞い知っていると、とても貴公子とかの紳士的なイメージが湧かないんだよねぇ。
学園を引き続き案内されてるけど、ほんと広いなぁ。間違いなく迷子になるよこれは。
でも施設がいっぱいで、ちょと楽しみが増えたかも。術や精霊に関する施設もあるのも興味深い。
しかもオマケ程度の施設じゃなく規模が大きいから、本格的に研究してそうだね。うちとは違う考えがあるかもしれないし、授業受けてみるべきだね。
食堂は二つあった。一つは貴族の人が使う用、もう一つはそれ以外の人が使う用で分かれてるとか。専用じゃないから貴族の人が一般の方、一般の人が貴族の方で食べることもできる。ただ内容も金額もそれ相応になるそうな。
でもカイルいわく、貴族向けは当たり前だけど、一般向けのもなかなか美味しいらしい。これはちょっと期待しちゃってもいいかしら。
学園内には売店もあった。というかこれ、前世で言うところのコンビニよね。ちょっとした日用雑貨から雑誌類、お菓子やお弁当、飲み物とかそのまんまだわ。しかも下着まで売ってるし……。
違うのは店員さんが学園の生徒さんだってことか。学園公認のアルバイトらしく、ここで働くと商業関連の単位がもらえるそうで大人気とかなんとか。わたしもちょっとやってみたいかも。
次に案内された図書館もすっごい大きい。これにはわたしとアリサがちょっと興奮。本を読むのが大好きだからしょうがないのです!
さすがに古文書などはないそうだけど、古い伝記やアルネイア王国の過去の資料なんかはあるみたい。なによりアルネイア王国発祥のおとぎ話とかがたくさんあるそうで、ちょっと入り浸りたいかも。
残念なのは持ち出し不可ってとこだね。ベッドの上でゴロゴロしながら読むができないのはひじょーに残念。
最後に来たのは闘技場、ここもでっかい。というか小さい施設が一ヵ所も無いんだけど……。
訓練に使うのはもちろん、武術大会でも使うとのこと。しかも大会はお祭りのような賑わいらしいから、ちょっと楽しみ。お祭りってことはきっとおいしい屋台がいっぱい出るはずだもんね!
案内されて分かったけど、正直不安になる箇所はいくつかあった。だけど楽しめそうなところも多くて、ちょっとワクワクですね!
ちなみにマクレン先生はカッコイイハゲです




