63話 精霊神衣
もう一つのとっておき〝精霊神衣〟でも顕現させるには精霊と仲良くなるだけじゃダメ。精霊側が心から力を貸してくれるような存在でないと顕現できない。
そもそもわたしってそこまでできてるのかな? 仲良くなってはいるんだけど……。
『大丈夫ですよ。ユキ様は我ら全員の加護と祝福、何より全員の友ですから』
へ? この声って光の精霊神?
でも精霊術は使ってないし、顕現もさせてないって、あれ? 周囲をよく見ると半顕現した状態でみんな居るんだけど。
『そりゃお嬢がついにアタシ達の力を最大限に使う時だからね! その場で見たいに決まってるさ!』
まさか火の精霊神が言うことのためだけに来たの?
実は別の動機があるとかじゃ?
『もちろんワタシ達の力を使っていただくためだけに来たのですわ。だってワタシ達はユキ様のために存在してますもの』
いやいや水の精霊神、あなたたちはわたしのお友達だけど主はお母様でしょ。
わたしはあくまでお友達よ、お友達。主従関係もないはずだよ?
『そうだけどねー。でもでも、ボクたちはサユリ様の娘だからユキちゃんと仲良くしたり、願いを叶えてるわけじゃないんだよ』
なんかすごい意味深なんだけど?
風の精霊神がそういうこと言うとか、ちょっと珍しすぎて余計気になる。
『わたしたちは、ユキちゃんが大好きだから。サユリ様の娘なのは、オマケ、みたいなもの』
オマケって、そんなお菓子の付属品じゃないんだから。
なんていうか、土の精霊神も可愛い性格なのにすごいこと言うね。
『ユキは最初の召喚時から妾達とただ仲良くなりたい一心だったからの。力を欲するのではなく、願い叶えるためでもなく、ただ仲良くしたい友達になりたい、そういう心を妾達はより好むわけじゃ』
だってお母様にすごい精霊さんがいるって聞いたら、絶対に仲良くなりたいって思ったんだもん。
というか闇の精霊神、そんなハッキリ言うとこっちが恥ずかしくなるから。
『それに我らが与えるだけでなく、逆に我らが好む精霊力を頂いてますしね。それもサユリ様に教わる前からずっとです。精霊にとって精霊力を頂くのは好意の中でも特別で大切な物、我らがユキ様を好くのは当然です」
だって加護とかわたしのために色々くれるんだもん。ちょっとでもお返ししたいなぁって考えたら自然とそうなったというか。
でも光の精霊神までハッキリ言うとか、恥ずかしすぎるよぉ。
『でもこれでお分かりでしょう? 我らは誰かに命じられたのではなく、我らの意思でユキ様をお慕いし、仕えたいと思っているのです。ですのでユキ様、なにも恐れる必要はありません。我ら精霊神、ユキ様決して裏切ることはありません」
そう言われると、やっぱ嬉しいなぁ。
うん、できそうな気がしてきた! よーっし、やるぞー!
「あら? 攻撃をやめたと思ったら、ユキさんの様子がさっきと違うような」
「いやぁとっておきの中のとっておき、今まで一度も使ったことない物を試してみる決意ができてね~」
「まぁまぁまぁ! それは興味深いですわ!」
あらまぁ、すっごいキラキラした目で見られちゃったよ。なんていうか、こういう反応もわたしに似てるねぇ。
「それでエレンにお願い、1回だけ術式使うのを許可してもらいたいんだ」
「構いませんわ。でも1回だけでいいのです?」
「ありがとー。うん、1回だけで十分だよ。それも攻撃の術とかじゃないからね」
懐から術札を出して術式を構築。初めてだけど、うん、何とかなる。
というかあなたたち、半顕現の状態で抑えてるからわたしとお母様にしか姿が見えないのをいいことに、そんな近くでじっと見なくてもいいじゃない。ちょっと緊張しちゃうよ。
『えー、だってユキちゃんがボクたちの力を思いっきり使うんだよ、じっくり見たいじゃーん』
『風のが言う通りじゃ。さらに成功すればより妾たちとの仲が深まるというわけじゃしな』
『ユキちゃん、がんば』
あぅ、余計にプレッシャーだよぉ。それにもしかしたら失敗ってことも
『お嬢が失敗するはずないだろ?』
『ですわ。ワタシたちの同時召喚も最初の1回目で既に完璧でしたし』
『なのでユキ様、いつも通りで大丈夫です。それにもしも失敗……はどう考えても無いですしね』
その圧倒的なまでの信頼はなんなの!?
でも、うん、わかった。こうなったらこれも1回で成功せるんだから!
「よしっ、それじゃやってみる」
「興味津々ですわ!」
すごいニコニコ顔ですね、こっちは緊張でドキドキなのに。まぁやってみるけど!
「術式展開! 森羅万象を司りし大いなる精霊よ、汝らの力を我に示せ! 顕現せよ、精霊神衣!」
精霊力でできた巨大な魔方陣が現れ、陣からは火水風土光闇の強大な精霊力の塊が出現する。
そして塊はわたしを包み込み、魔力ではない精霊力でできた衣へその姿を変化させる。
ふむふむ、見た目こそ魔衣で作ったドレスと似ているけど、細部がより派手になったというか、フリルとリボンが増えたというか、ちょっと派手になったかも?
さらにリボンの中央には大きな精霊石があるけど、純度がちょっとヤバい。精霊神が本気で創造する精霊石と同程度かも。
それにしてもこれ、着ているだけでも異常なのが分かるね。
精霊力が今までとは比べ物にならないくらい、とんでもない状態。それこそ精霊神全員の力を合わせこんだくらいなんだけど、予想以上だわ。
『気を付けてください、今のユキ様のお体では精霊神衣を使用できるのは長くとも10分です。それを過ぎると半精霊ではなく、精霊の身になってしまいます』
それってなんかヤバいの? なんとなく精霊になるだけな気がするんだけど。
『あくまでユキ様は半精霊の身です。精霊に偏りすぎると存在が維持できなくなります。精霊の身になっても精霊にはならず、その力を世界に拡散させた後に消滅してしまいます』
うげ、それってすっごいヤバいじゃん。時間を気にしないと駄目なのかぁ。
『ユキ様の魔石が全快すれば大丈夫ですが、今の状態ですとそうなります。もっとも我らもそのような事は望んでいないので、時間になった場合は我らの力で強制解除しますのでご安心ください』
ほ~い、気を使ってくれてありがとー。
でも迷惑かけないようにわたしがしっかりやらないと!
「っと、何とかできたかな。これ、ちょっと扱いが難しいかも」
「な、なんというか、ちょっと震えてきましたわ。その力、精霊力ですわよね? 今まで感じたことがないほど、それこそ世界を相手にしているような……」
あら? エレンが冷や汗かいてるんだけど。外から感じると何か違うのかな?
着てるわたし自身は引き出された精霊力がとんでもない状態だなぁって感じるくらいで、威圧感とかはないんだけど。
さてさて精霊神衣だけど、ん~、身体や魔力の強化は天衣の方が上だね。おそらく純粋な防御力も天衣の方が上かもしれない。
でも圧倒的な精霊力。これは半精霊でなおかつ術装が精霊刀なわたしには、天衣より精霊神衣の方が相性良いかな。
「面白くなってきましたわ! それでは、行きますわ!」
「かかってこーい!」
エレンが一気に突っ込んでくる。やっぱり速い!
回避をしって、あら? 意識してなかったのに風をまとってサクッと回避できたわ。まさかこれ、風の精霊神の力が自動で発動ってこと?
『そうだよー。ボクの性質は風だから素早さとかだね。火は力、水は魔力、土は防御になるよ。光と闇は月華を見ればわかるよー』
月華をってあれまぁ、片方は光を、もう片方は闇をまとってるじゃないですか。
ひょっとしてこの状態って、六大精霊神の力を常時発動できるってこと?
『その通りじゃ。妾達すべての力を注ぎ込んだ特別な防具、それが精霊神衣という物じゃ』
『それにな、お嬢が使うと相性が良すぎて、精霊力がさらに強力な状態になるんだよ』
『強力ということは、制御を誤ればその身を滅ぼしてしまいますの』
『でも大丈夫。だって、わたしたちのユキちゃんだから』
いやいやちょっと!? それ精霊神衣を使う前に聞きたかったよ! 案の定、回避のつもりが勢い余ってすっごい距離避けちゃってるし。
でも今ので何となくわかったから大丈夫、調整もできる!
『さすがですねユキ様、サユリ様と全く同じですよ』
『1度で使いこなせるとか、まさにじゃな』
それはちょっと嬉しいかも。んじゃもっとがんばろー
どこかで書くかもしれませんが、精霊神にとってユキの存在は
光:娘的存在兼守るべき主君
闇:娘的存在
火:妹的存在
水:妹的存在
風:嫁的存在
土:嫁的存在
だいたいこんな感じです(他の精霊も似たような感じ)




