64話 やっぱね、負けたくないんです
とんでもない精霊力だから、油断すると自分の体がどうにかなりそうなのは確かだね。
でも同時にすっごい安心感もある。自分が半精霊な存在なの、ほんと実感できる。
しかも今まで魔力で体を動かしていたのが、精霊力で体を動かすようになってるみたい。魔力部分が精霊力に置き換わってる感じだね。
さてさて、それじゃ
「術技、烈空!」
遠距離からの試し撃ちっと。
うん、思ったとおり水の精霊神の力で魔力がすっごい底上げされてる。しかも術技自体、魔力と精霊力の複合になってるわ。
二刀それぞれで放ったら片方は光を、もう片方は闇をまとって発動した。これはすべての攻撃に光と闇属性を追加付与できるってことだね、すっごい便利!
「今の攻撃はちょっと危なかったですわ。わたくしと同じかそれ以上に見えましたもの」
「でもちゃんと避けているんだね。それはそれですごい気がするけど」
当たるとは思ってなかったけど、掠るかな~程度は期待したんだよね。でもまるっきりだし、ほんとすごいなぁ。
同世代だとまず間違いなくエレンは今までで一番強いね。正真正銘の化け物仲間ができたみたいでちょっと嬉しい。
「ですが、力なら負けませんわ!」
一気に接近してきて、ドラグーンを振りかぶってくる。
普通なら避けるとこだけど、今のわたしの場合はきっと
「やはり先ほどまでと全然違いますわね!」
「うん、まさかわたし自身こうなるとは思わなかったわ」
吹き飛ぶことなく片方の月華で受け止めることができた。
とゆーか、かち合ってすらいないよね。明らかにこれ、土の精霊神の防御壁でしょ? 月華とドラグーンの間にうっすら土の魔力膜があるもの。
で、おそらく力を入れちゃうと
「な、なんという力ですの。わたくしの全力と互角とか、本当にすごいですわ!」
「あー、うん、でもこれ、わたしの力じゃないから……」
こんどは火の精霊神の力でしょ、ちょっとズルしてるようになってきたなぁ……。
『あーお嬢、それ違うわ』
『わたしたちはユキちゃんの力の補助だけだよ』
『ボクたちの力をそのまま使ってるわけじゃないんだ』
『ユキ様の精霊力をワタシたちの力に変換しているのですわ』
え? それってつまり?
『ユキ様は我ら精霊神の力を、ご自身の精霊力で再現しているのですよ』
『妾達の力を全て込めたが、発動するにはそれに見合った精霊力が必要なのじゃ。発動できるということは、ユキは妾達と同等以上の精霊力を持っているということじゃ』
あー何となくわかったわ。精霊神の能力を使うなら、みんなと同じくらいの精霊力を流し込まないと発動すらしないってことね。
って、わたしってそんなに精霊力高いの?
『後ほどサユリ様が説明してくださると思いますが、ユキ様は魔力より精霊力の方が高いのですよ』
『それにユキの魔石は半分精霊石と化してるんじゃぞ。半精霊ということはそういうことじゃ』
マジ? まぁ悪い事じゃないからいいんだけど、なかなか衝撃的だわ。
さてと、思考を加速させすぎて戦いの支障にならないように意識を調整してっと。精霊神って時間も操れるから、こうやって思考加速していても通常会話できるからすごいよね。
「うん、どうやら違うみたい」
「どういうことですの?」
「今ちょっと思考を加速させて精霊神に聞いたんだけど、この力は一応わたしの力らしいわ。精霊神の力をわたしの精霊力で再現してるんだって」
「それはまた面白いお話ですわ。では、わたくしの魔力とユキさんの精霊力、どちらが上かの勝負ですわ!」
そういうとエレンは笑顔のまま距離を取る。おそらくさっきの奥義をまた撃つんだろうね、ドラグーンに魔力を集中させてるし。
当然こっちもそれに応じないといけないし、それを期待してるよね。
でも属性はどうしよ? エレンは天竜って状態だから、おそらく今までの属性全部かわたしの知らない属性のどっちかだろうし。
『だったらボクたちの力を全部まとめちゃえばいいんだよ!』
『ユキちゃんなら、できる!』
また無茶ぶりを……。でもまぁなんとなくできるような気もするけど。
『だってお嬢だもんなぁ』
『できないわけないですわ』
いつも思うけど、みんなのそのわたしに対するすさまじい信頼は何なのよ……。失敗するかもしれないんだよ?
『でも事実ですから。我らが知る限り、こういう場での失敗は一度もありませんし』
『失敗するのは、新たな物を作ろうとしての試行錯誤の時くらいだの』
事実に基づく裏付けですか。ん~、まぁ失敗する気はさらさらないし、やってみるかー
月華を双刄刀の状態にって、うわぁ、月華同士を接合する精霊石もとんでもない物になっちゃってる。さっきの何千倍の純度だよね。
冗談抜きにこれ投げつけて精霊力を暴走させるだけで、ここら一帯が塵も残さず完全に消し飛ぶわ。
まぁ、うん、深く考えないでおこう。
普段なら魔力多めに流し込むけど、今の状態なら精霊力を多めに流し込んだ方がいいかな。
それじゃ精霊力を多めに流し込みって、うっく、これ、わたしの精霊力が思いっきり持ってかれるんだけど!? 連発は無理、精霊力の消費がほんとやばいからできて2発ってとこかな。
何より周囲から集まる精霊力も巨大すぎて、集束させるのがきつい。意識を集中させないとすぐに拡散しそう。
エレンを見ると、案の定わたしの知らない属性だわ。桜色をした魔力なのはわかるけど、属性が全くわかんない。
辛うじてわかるのは赤青黄緑白黒の魔力が含まれていて、そこに桜色の魔力が追加されてるというとんでもない物。
……間違いない、エレンはわたし以上の魔力を持っている。
ふふっ、同年代で完全に互角な人が目の前に居るとか、すっごく面白くなってきた!
「お互い準備は良さそうですわね。ではでは、これがわたくしの全力全開です、受け止めてください! ドラグーン全魔力開放! 奥義、天竜滅衝破!!」
桜色をした魔力でできた竜が迫ってくる。
それじゃわたしもぶっつけ本番のとっておき、やってみるよ!
「全力で撃ち迎える! 月華、精霊神開放! 術技、烈天精霊破!!」
精霊神の力を込めてできた巨大な精霊力の光弾で迎え撃つ!
今まで使ったことが無い強大な力のせいか、撃ったわたし自身にもすごい反動が来る。2発撃つなんて無理、反動もすごいけど1発撃つだけでわたしの精霊力が枯渇しそう。
しかも衝撃で全身が痛みだすし、気を抜いたら意識が飛びそうでちょっときつい。
瞬く間に互いの全力の攻撃がぶつかり合う。
さっきまでとは規模が全然違う、周囲の空間が崩壊し無数の亀裂も発生、さらに亜空間まで発生している。
ほんと面白い。精霊神の力を使っても互角とか、ほんとエレンってすごい!
ここまで来たら気絶覚悟ですべての精霊力注ぎ込んで相手をしたくなってきた! そしてこのまま耐えきってみせて!
「いっけぇぇぇぇぇ!!!」
「負けないですわぁぁぁぁぁ!!!」
わたしもエレンもさらに力を注ぎこんだけど、それでも互いの攻撃は完全に拮抗してる。どこまで行っても同等ってことみたいね。
だけど、徐々にわたしの攻撃がエレンの攻撃を飲み込んでいく。威力は同じなのにどうして?
あぁそっか、エレンは魔力だけ使ってるけどわたしは違う。
確かにわたしも精霊力を使って技を放ってたけど、どうやら無意識のうちに精霊力だけでなく魔力も流し込んでたみたい。
その結果、精霊力と魔力の複合技に変化している。精霊力のみでは拮抗していたけど、魔力と精霊力の合わせ技になったことで、徐々に押すことができているってことね。
変化もそうだけど、なによりわたしはここで負けちゃいけない理由がある。
だって
「精霊神のみんなが見てるんだ、絶対に負けないんだからぁぁぁぁぁ!!!」
わたしのために来てくれた友達のため絶対に負けない! 完全に意地だけど、これだけは譲れないの!
数日寝込むくらい上等、体が悲鳴をあげるけどお構いなしにありったけの精霊力と魔力をさらに注ぎ込む。正真正銘、これが今のわたしの全部だよ!
「うそっ!? さらに強くなるなんて、このままでは!」
変化は突如起こる。
わたしの攻撃が少し押してきたと思ったら、一気にエレンの攻撃を飲み込み、そして
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
エレンに直撃し巨大な爆発が起こる。
その衝撃はすさまじく、わたしも反動で一気に飛ばされた。
でもこれで、
「わたしの勝ち、かな」
魔力も精霊力も底をついたけど、何とか倒れずにすんだわ。といっても根性で立っている状態、かなりきついけど。
対するエレンは衝撃で倒れたままで天竜装は消滅、衣服もボロボロな状態になっている。ドラグーンも元の黒い状態だわ。
だけど体には大きな傷も無く、命に別状はないみたい。あの一撃を受けてもかすり傷程度とか、ほんとすごいね……。
だけど、これはもう勝負は決まったよね? 第2ラウンドとかないですよね?
バトルはあっさり
補足ですが、二人の各能力を比較した場合
力 :ユキ<エレン
防御:ユキ=エレン
速さ:ユキ>エレン
魔力:ユキ<エレン
精霊力:ユキ>エレン
魅力:ユキ=エレン
だいたいこんな感じになってます




