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56話 これも予想外過ぎるって

 二人の攻防が続くけど、こりゃぁダメだ。カイルの攻撃は全部弾かれて、逆にレイジの攻撃がどんどん当たってる。


 今だって、


 カイルが切りかかる

 しかしレイジのシールドで弾かれる

 受け止めたレイジはシールドバッシュの要領でカイルにカウンターを放つ

 カイルはシルバームーンで受け止めるが、ビームが拡散し体にダメージを負う

 さらにレイジはソードで追撃、体勢が崩れたところを的確に薙ぎ払う

 受け止めきれなかったカイルはダメージを受け、さらに吹き飛ばされる


 という攻防だったし。


 レイジって能力もそうだけど技術も高いね。カイルだって決して弱くないのに全然歯が立たないとか、正直すごいわ。

 前世だと〝敵の勇者その一〟って印象が強かったけど、ここまで強くなってたら〝レイジという強い勇者が居る〟って印象になるね。





『ぜーぜー、ったく、マジでお前すげーな』

『ふぅ、君も凄いと思うよ。僕も強くなったと思ってたけど、まだまだひよっこだって再認識させられたよ』

『それは俺に対する皮肉だぞ? 全然届かないじゃねーか』


 カイルはそろそろ限界かな、真魔装の維持すら怪しくなっている。

 対するレイジはまだ余力たっぷりみたい。


「お嬢様、どうしてレイジ少年はあそこまで余力があるのでしょうか? 駄狐もそこまで弱くないはずなのに、差が凄いです」

「それは魔力の使い方が違うからだね。カイルはわたしたちと同じように身体機能も魔力を使って動かしてるの。けれどレイジは魔力を身体機能の補助にとどめてる。なので魔力の消費がカイルに比べてだいぶ抑えることができるの」


 カイルが10の攻撃する場合、10の魔力だけ使う。でもレイジの場合、筋肉を動かすため5の体力を、残りの5を魔力で補うことになる。

 この差があるため、レイジに対しカイルの方が先に魔力が枯渇するという弱点が生まれる。

 さらにレイジは魔力が無くなっても体力で踏ん張ることができるし、魔力自体を使わないで攻撃もできる。


 たしかに身体のすべてを魔力で動かせば強力なんだけど、持久力の面では魔力以外も併用して体を動かした方がいいんだよね。

 そうアリサに説明したら、すごい納得してくれた。


「まぁわたしとかの場合、魔力が枯渇しないよう緊急時は大気の魔素を大量に取り込み、一気に魔力変換して回復するんだけど、カイルはそれができないみたい。それができれば状況がまた変わるんだけどね」

「なるほど。回復できれば逆に相手の体力切れを待ち、一気に反撃するのですね」

「そのとおりだよ~」


 正解したアリサをなでなで。

 というか、最近はアリサも身体機能のほとんどが魔力で動くように体が変化してきているんだよねぇ。順調にわたしたちと同じ存在になってきて、ちょっとうれしい。





『はぁ、はぁ、くそっ、魔力の残りがヤバいな』

『ずっと魔力を使っているみたいだね、僕の方はまだまだだけど』

『かーっ、ほんとお前すげーな。だがな、俺も意地がある。簡単に負けるわけにはいかないな!』


 ほー、カイルのやつ、諦めてはいないのね。しっかりとレイジの方を見て、シルバームーンも構え直してる。ほんと意地だねぇ。


『君も凄いな。でもどうしてそこまで必死なんだい? 言ってはあれだけど、これは余興なのでそこまでの物じゃ』

『いいや、この戦いには絶対負けられない理由がある。それはだな、』

『それは?』


 あー、嫌な予感してきたわ。

 すっごいシリアスな顔して二人が語ってるけど、ぜーーーったいにシリアスな理由じゃないと思うよ。


『ここで勝てばユキとデートに行けるんだぞ!』

『……はい?』

『男ならわかるだろ、惚れた女を誘うチャンスなんだぞ!』


 頭が痛いわ。大勢の前でそんなドヤって言うようなことじゃないでしょうに。


「お嬢様、ちょっとあの駄狐を始末してきてもよいでしょうか?」

「気持ちはわかるけどやめようね」


 お母様とシズクさんは苦笑い、お姉様は唖然、お兄様は大笑いしてるし、ほんと何考えてるのよあのバカは。

 というかわたしの名前を挙げるんじゃないよ、恥ずかしいわ!


『えっと、ユキってあの狐族の子?』

『そうだ。な? 気持ちはわかるだろ?』

『可愛いとは思うけど、まだ子供じゃないか。さすがにどうかと』

『わかってないな。確かに今は子供だ、だが5年後、10年後はどうだ? 今以上になるんだぞ? 素晴らしすぎだろ!』


 おーい、なに真面目な顔で熱く大勢の前で語りだしてるのよ。レイジの方も唖然としてるよ。

 てかほんと勘弁してください、周りの貴族どもがすごい納得しだして居心地がひじょーに悪いです。


「お嬢様、やはりここは」

「気持ちはすっごいわかるけどダメだよ」


 アリサが暴走しかけてるせいかな、逆にわたしの方は冷静になれるわ。アリサが居なかったらわたしが乗り込んであのバカを殴ってそうだもの。


『何事も早め早めだと思わないか?』

『ま、まぁ、わからないでもないけど。でもなぁ』

『いいか、よ~く見てから想像してみるんだ。すでにあの可愛さ、そして約束されし未来図、おまけに不老だぞ。サユリ殿に匹敵する美しい姿がずっと続くんだぞ?』

『……いいな』

『だろ?』


 まてまてまてーい! なにそこ共感しあってるのよ。しかも肩組んで語り合いだしたよ。

 ほんとやめてください、視線がすごくてもう恥ずかしいから。


「お嬢様、少し殺ってきますね」

「ちょ、まって、ありさぁぁぁぁぁぁぁ」


 わたしが制止する前に一気に駆けだしたと思ったら、もう二人の前に立ってるんだけど。あれ? アリサってまた天魔じゃないよね? 天魔以上に速そうなのは気のせい?


『なっ、メイド!? なぜここに』

『もちろん駄狐、あなたを始末するためですよ。あなたの言動でお嬢様がどれだけ恥ずかしがっているか、おわかりでしょ?』


 あーあ、もうだめだ、アリサは止まらないわ。鬼のような形相のアリサを目の前にしたせいか、カイルはすごい青ざめた感じになったけど。

 はぁ、お母様たちが止めないってことは、アリサにそのままやらせる気なんだろうけどさぁ。


『くそっ、おいレイジ、ここは手を組むぞ!』

『え? いや、なぜ僕まで』

『ばっか、親友だろ!』

『そうだった? いやまぁ君の気持ちもわからなくもないが、だからってこのメイドさんと戦うのは』


 いやほんと、あいつらいつ親友になったんだよ。

 それに肩組んでひそひそ話してるけど、全部聞こえてますよ。


『二人同時でも構いませんよ。それでも私がいる限り、お嬢様に指1本触れることすら無理ですが』

『上等だ! 今日こそおまえを倒し、ユキを貰っていく!』


 穴があったら入りたい。アリサたちの話が進めば進むほど、わたしに対する視線が増えるんだもん。ほんとーに勘弁してください。





『レイジ、ここはコンビネーションで行くぞ!』

『よくわからないけど、彼女がどの程度強いのか気になるし、付き合うよ』

『ありがとうな。それじゃ行くぜ!』


 いやまって、いつコンビネーション覚えたんだよあの二人。しかもノリノリなのか、二人並んでかっこいいようなポーズで構えてるし。

 対するアリサはアリサで大太刀を下に構えて、こう、ラスボスみたいな出で立ちだし。


『シルバームーン、Typeウンディーネ! シルバームーン、Codeコキュートス、イグニッション!!』

『支援魔法、パワーライズ! そして武装魔法、サンダーウェポン!』


 カイルは氷をまとわせたね。わたしが月華で使うのとだいたい同じかなぁ。

 レイジはパワーライズで自身の力を強化し、サンダーウェポンで武器に雷を付与したわ。どっちもこの世界での魔法だね。


 さて、アリサは……反撃のためか大太刀に魔力を込めだしたね、ってまさか受ける気なの? 避けないって、いやいやそんな無茶な。天魔に進化していないアリサじゃ厳しいどころじゃないでしょうが。

 怪我しちゃうかもしれないから、受けるのはやめなさいよ……。


『うおぉぉぉぉぉぉっ!!』

『はあぁぁぁぁぁぁっ!!』


 そんな心配をしていたら、二人が左右に分かれ、そのまま挟むようにアリサへ切りかかる。あの速度、たぶんアリサじゃ反応できない。お願いだから怪我する前に下がってもらいたいわ……。


『術技、烈破二連!』


 でも結局下がらずに術技を放った。術技の二連はその名の通り、1回の攻撃で2発分の術技を与える技。二人よりも強いか同等であれば一気に吹き飛ばせる可能性もあるけど、たぶんむ、え?


『ぐへっ』

『がっ』


 いやいや、うそでしょ? 二人が射程に入った瞬間、烈破二連を二人同時にあてたよ。しかもあたった二人がすっごい吹っ飛ばされたんだけど。

 というかレイジはビームのシールドでとっさに防御したのに、そのビーム部分を破壊して吹っ飛ばしたんだけど。あれって今のわたしの全力か、それに近い威力がないと無理な気がするんだけど……。どういうことよほんと……。





『あっけないですね。その程度でお嬢様をものにしようなど、片腹痛いですね』

『メ、メイド、おま、え、つよ、すぎ』

『一撃、とか、わらえない、な』


 二人はそう言い残してどさっと倒れた。……マジ? 二人をたった一撃で倒しちゃったの?

 ちょくちょくあるけど、アリサってたまにわたしの全開状態並みの力を発揮するから、今回もそういうことなの? なんていうかすごいんだけど、よくわから


「お嬢様、お一人にさせてしまい申し訳ございません。駄狐と駄人の片付けが終わりましたので、ご安心ください」

「うひゃぁ!? ちょ、アリサ、いろいろと突っ込みたいんだけど」


 気配を察知させずに戻ってきて、平然と隣に居るんだけど。いやほんとどうなってるの? お母様とシズクさんは納得顔で頷いてるけど、普通にありえない状況なんですけど……。


「えっと、どうやって倒したの? どう考えてもアリサの勝てる相手じゃなかったはずなんだけど」

「そこはお嬢様の専属メイドですから、あの程度は簡単な事です」

「あ、はい、そうですか」

「そうなのです!」


 専属メイド万能説、また出たよ。

 はぁ、わたしが戦う前になんかいろいろと疲れたわ。

通常状態のアリサ - 弱くはないが強さはそこそこ

専属メイド万能状態のアリサ - よくわからないけどすっごく強い

という謎システムが実装されております(バージョンアップの可能性もあり)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ひえっwww この子が専属メイドならユキちゃんの百合百合物語も安泰やね!! 二人主従仲良く一生イチャラブしときや!!笑
[一言] 転生ボーナスならぬ百合ボーナス 愛の力はどんな敵にも勝つ!!
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