57話 昨日ぶりの対面ですね
アリサによって強制終了したのは置いといて、そろそろわたしの番なのかな? 壇上に居るオッサンは苦虫を潰した様な渋い顔してるけど。
まぁわかるよ、アリサの一撃でご自慢のレイジが倒れたからね。そりゃ苦々しい感じになるよね。
『う、うむ、素晴らしい戦いでした。さて、余興はここまでとなります。それでは皆様に披露しましょう、我が娘エレンの実力を!』
おやまぁあからさまに話を変えてきたわ。
そして一人の少女を壇上に招く、うん、昨日会ったエレン本人だね。豪華なドレス姿だけど、成金とかの嫌みっぽい感じはしないね。
壇上にエレンが上がるとすっごい拍手、主役は違うねぇ。
『エレンです。本日はお忙しい中ありがとうございます。この後はなぜかわたくしの力を皆様に披露することになりましたので、ご興味のある方は見ていただけたらと思いますわ』
おー、お辞儀の洗練さからしてまさに貴族のお嬢様って感じだね。しかもちょっと大人っぽいぞ。だからかな、あのお爺さんとオッサンも満面の笑みだわ。
だけどエレンは少しむすっとした感じで、さらに挨拶の内容が少し刺々しかったんですけど? ぜーったいにこれ、エレンは乗り気じゃないやつだよ。
『御覧の通り、我が娘は只人族です。ですが生まれながらにして天魔であり、昨年にはあの〝竜槍〟の所持者となりました。それだけでなく、才能にも恵まれ――』
そんなエレンに気付いていないのか、うちの娘はすごいんだぞアピール始まっちゃったわ。とゆーかさっきも言ってなかった? わたしは聞いてなかったけど。
しかしなるほど、エレンも生まれながら天魔なんだね、わたしと同じでちょっと親近感が沸く。でもそのせいだね、あのお爺さんとオッサンがわたしに対して完全な敵意を持っているのって。娘と同じとか認めたくないとかそんなんだろうねぇ。
長々と娘アピールしてるけど、まだ終わらないのかな? 長すぎると逆効果だよー。
『さて、娘の紹介は以上になりますが、本日はレグラス王国よりサユリ殿だけでなく、その娘殿にもお越しいただいています。そこでサユリ殿、一つご提案があるのですが』
『言ってみて』
うわー、すっごい冷たい声でお母様答えてるよ。案の定、オッサンがビクッとしてる。
『それはわしから話そう。どうじゃサユリ殿、そなたの娘をここで紹介してくれんか?』
『何が目的かしら?』
『単刀直入に言おう、興味があるのじゃよ。伝説の金狐の娘はどのような者なのか、とな。この席でも見たことがない者が大勢だからなおさらじゃの』
確かに知らない人が多そうだね。でもそれってさぁ……
『私の娘を見世物にする気かしら?』
お母様が睨みながら言い切ったわ。
だけどほんとそうなんだよねぇ、わたしは客寄せのための人形じゃないのに。
『悪く言えばそうじゃ。だが、そなたもそれを見越したうえで今日は連れてきたのだろ?』
『……そうね。本当は蹴っても良かったけど、こっちにはこっちの事情もあるわね』
うわー、お母様とあのお爺さん、ピリピリしながら会話してるよ。いつでも戦闘入れまーすって感じの殺気まであるわ。
そんな雰囲気でもお姉様たちは平気そうだけど、あのオッサンは雰囲気に飲まれすぎたのか真っ青だね。でも貴族だからか、失禁しないようにこらえているのがちょっと笑える。
『まぁしょうがないわね。それじゃユキちゃん、こっちへいらっしゃい』
さっきまでと打って変わって、お母様が優しい声で手招きしてくれる。いつも思うけど、お母様ってこの温度差がすごいよね。わたしも無意識にそうなってるみたいだけど。
「ではお嬢様、行きましょうか。私は後ろから付いて行きますので」
「りょうかーい。やれやれ、ちゃんと貴族っぽく歩いて行かないとかぁ」
思いっきり見られながら歩くとか、すっごい恥ずかしいんだけど。変な歩き方してないかちょっと心配になっちゃうなぁ。
壇上に上がると、さらに視線が集まってくる。
え? アリサはシズクさんたちの方に行っちゃうの? むぅ、一緒に来てくれてもいいのにー。
「ローガン、この子が娘のユキちゃんよ」
「初めましてローガン様」
このスカート掴んでのお辞儀ってほんと慣れないなぁ。ドレス自体着慣れてないのもあるけど、どうもわたしっぽくないというかなんというか。
それにしても、壇上からだといろいろな声が聞こえてくるなぁ。
『あれが噂の娘か』
『確かにサユリ殿と瓜二つだな』
『噂では術装まで同じ系統らしいぞ』
『容姿だけでなく力も受け継いでいるわけか』
『気が付いたか? あの娘の付けている宝石類』
『あれは、もしや精霊石か!? あのような純度の物を複数付けるとは』
『しかも平然としている。普通の者であれば精霊石に秘められし力で押し潰されるというのに』
『よほど精霊との相性がいいのだろうか』
『よく見ろ。あの娘だけでない、サユリ殿やシエラ王女、従者たちまで付けているぞ』
『なんということだ、レグラス王国はそれほどまで精霊と……』
値踏みされてる気がしてなんかヤダなぁ。
というか精霊石にやたらこだわるね、まぁこの純度だからしょうがない気もするけど。
「これはこれはご丁寧に。しかしサユリ殿と違ってまだまだの様じゃな」
「どうかしら? ユキちゃん、隠している尻尾も出していいわよ。このお馬鹿さんにちゃんと見せてあげなさい」
「は~い」
ここで出すわけね。だから今日のドレス、尻尾を外に出すタイプなんだね。昨日はスカートの下に隠すタイプだったけど、アピールするからこれなわけか。
んじゃ偽装解除っと。
「なっ、すでに3本じゃと!?」
「そうよ。付け加えるなら、ユキちゃんの尻尾は生まれながらよ。あらあら、その顔だと相当驚いたようね」
お母様がしてやったりって顔をしている。予想通りの反応でうれしいわけですね!
にしても、ほんとすっごい驚いてるね。でもカイルも2本あるからそんなに驚くことなのかな? もしかしてこのお爺さんの予定と何か違ったのかしら。
エレンは……、うん、あの目は知ってる。アリサと同じでモフモフしたいって目だわ。
「いやすまぬ、あまりのことでな。さて、エレン、ここに来て挨拶を」
「わかりましたわ。初めましてサユリ様、お会いできてとても感激しておりますわ。そして昨日ぶりですわユキさん」
「昨日ぶり~」
可愛く手を振ってみると振り返してくれたね。
おや? お爺さんとオッサン、なんかまた驚いてるよ。
「エ、エレンよ、昨日ぶりとはどういうことじゃ?」
「あらお爺様、わたくし昨日ご説明したではありませんか。街で可愛らしい狐族の女の子と仲良くなったと」
「だがサユリ殿の娘とは聞いておらんぞ!」
「それはわたくしも知らなかったからですわ。でも知っていればきっと」
「うむ、知っていればそうじゃな」
仲良くならなかったのかな? お爺さんすごい頷いてるけど、エレンのあの顔はたぶん……
「知っていればサユリ様のサインを頂けないか、お願いしていましたわ!」
「なんじゃと!? わ、わかっておるのか? サユリ殿だぞ」
「えぇわかっていますわ、あのサユリ様ですものね」
「そうじゃぞ、わしらのて」
「わたくしの憧れですものね!」
あーらら、お爺さんとオッサンあんぐりしちゃったよ。敵って言おうとしたのに、エレン自身はその真逆だからねぇ。
おや? お母様は笑ってるね。しかもなんかいろいろ知ってそう。
「初めましてエレンちゃん。あなたのことはタヌ蔵からいろいろ聞いているわ。私も一度会ってみたかったから、今日は来てよかったわ」
「本当ですの!? ありがとうございますわ! わたくしも憧れのサユリ様にお会いできて、本当に感激ですわ!」
推しのアイドル目の前にした女の子みたいな感じだね。でもあなたのお爺さんとお父さん、魂が抜けたように茫然としてますよー。
「ねーねーお母様、タヌ蔵ってたまにうちに来るお母様のお友達、天魔狸のタヌ蔵おじちゃんのこと?」
「そうよ~。あのおじちゃん、この国の宰相さんなの。エレンちゃんはタヌ蔵に術式を学んでるそうなの」
「ですわ。でもまだまだ半人前、これからも精進ですわ!」
なるほどねぇ、お母様の友達であるタヌ蔵おじちゃんに術式習ってるのかぁ。
となると、術に対する知識はわたしと同じって考えたほうが良さそうね。ますますわたしと同じ感じだねぇ。
「ま、まつのじゃエレンよ。術式を習っているだと? わしらは聞いておらんぞ」
「あら、言いませんでしたか? もっと強くなるために術を習っていると言ったはずですが」
「確かに聞いたが、サユリ殿たちが使う術式とは聞いておらんぞ……。それに我が一族に伝わる竜魔法はどうしたのじゃ!」
「竜魔法ですの? もちろん使えますが、サユリ様たちが構築した術式と比べ効率が非常に悪い、発動も凄く遅い欠陥魔法なんです。固定砲台として強力な魔法を放つくらいしか使い道がないですわ」
エレンが苦笑いしながら答えると、お爺さんとオッサンが思いっきり固まったわ。
まぁ一族に伝わった術か何か知らないけど、その竜魔法をただの固定砲台扱いだからね。しかも自分たちが誇っているエレンがそんなことを言っちゃったわけだし。
さらに他の貴族がいっぱい居る中でその発言、ほんとやばいね。
当初の予定よりもすっごいボコボコになってる気がするなぁ、この後どうするんだろ。




