第8話 返却先登録済みは、案内板に奪われない
米印なんですけど
AIのランニングコストを支払えるくらい、読んでもらえるの咽び泣いて喜びます
翌日の放課後、私は管理センターの講習室にいた。
前に受けた初心者講習より、ずっと人数が少ない。
椅子は十席あるのに、座っているのは私を含めて三人だった。
「本日は、旧・帰還支援班の装備に関する安全確認です」
前に窓口で対応してくれたお姉さん――朝倉さんが、前のホワイトボードを指した。
そこには、灰色のヘルメットと同じ、丸の中に三本の階段みたいな印が描かれている。
「帰還支援班は、今から十八年前に廃止されました。ダンジョン内で迷った探索者の誘導、取り残された装備の回収、帰還経路の安全確認を担当していた部署です」
「十八年前……」
父さんがいなくなったのは三年前だ。
なら、父さんは廃止後に、何をしていたんだろう。
聞きたい気持ちはあった。
でも、今日は講習だ。父さんのことを聞くために来たわけじゃない。
「旧式の装備には、今でもダンジョン側の施設や魔物が反応する場合があります。今回の真壁さんの件も、その一つと考えられます」
朝倉さんは端末を操作した。
壁の画面に、二つの言葉が表示される。
『回収予定品』
『返却先登録』
「回収物には、所有者や返却先が不明なものがあります。そういう品は、回収系の魔物や設備に引き寄せられることがある」
「案内板の魔物も、ですか」
「おそらくは。回収対象が移動している、と判断したのでしょう」
昨日、灰色のヘルメットを狙った魔物。
あれは私を襲いたかったわけではない。
ヘルメットを、どこかへ運びたかっただけだ。
「でも、もう『返却先登録:真壁栞』になりました」
「はい。少なくとも、昨日と同じ理由で狙われる可能性は下がっています」
朝倉さんは少しだけ間を置いた。
「ただし、絶対ではありません」
「ですよね」
「旧帰還支援班の装備がどこまで残っているか、管理局でも把握しきれていません。見つけた場合は、無理に使わず報告してください」
「わかりました」
無理に使わない。
無理に深く潜らない。
帰る時間は残す。
言葉にすると簡単だけど、ダンジョンの中では、目の前に何かが出てくると忘れそうになる。
だから私は、スマホのメモに打ち込んだ。
『欲しい物より、帰る時間』
画面をロックして、ポケットへしまう。
◇
講習のあと、私はいつものB1へ入った。
今日は、灰色のヘルメットも持っている。
被るのは黄色いほう。
《衝撃遮断》があるからだ。
灰色のヘルメットはリュックの上部、すぐ取り出せる場所に入れた。
《帰路設置》を使う。
コンクリートの壁際に白い扉が現れた。
『帰還可能』
『残り時間:五十九分』
「三十分で戻る」
タイマーを設定する。
今日は、魔物と戦う練習も少しだけするつもりだった。
危ない魔物に会うためではない。
逃げるだけではなく、逃げるために一回だけ攻撃する練習。
それができれば、昨日みたいに背中を追われても、少しは落ち着けるかもしれない。
通路を進む。
石灰キノコを二個。
鉄灰苔を一束。
売値はたぶん、千円にも届かない。
でも今日は、順調だった。
私は壁の角を曲がり、床に落ちている小さな魔石を見つけた。
透明に近い、薄い青色。
「これなら、拾っても大丈夫そう」
周囲を確認してから、しゃがむ。
その瞬間。
リュックの中で、灰色のヘルメットが鳴った。
かちり。
「え?」
取り出す。
内側に白い文字が浮かんでいた。
『帰還導線 異常』
『迂回を推奨』
同時に、私の前方の通路で、金属音が鳴る。
かん。
かん、かん。
青い案内板。
昨日の魔物かと思って、私は短槍を構えた。
けれど、現れたのは魔物ではなかった。
壁から生えた一枚の案内板だった。
青い板に、白い矢印。
『出口』
矢印は、私が設置した白い扉とは反対の方向を指している。
「また嘘の出口?」
私は動かない。
昨日なら、焦っていたかもしれない。
でも今日は、白い扉までの距離も、帰還可能時間もわかっている。
案内板の下に、小さな文字が浮かんだ。
『通行不可』
その直後。
私が立っていた通路の床が、音もなく沈んだ。
「っ!」
とっさに後ろへ跳ぶ。
次の瞬間、床のコンクリートが大きく割れた。
黒い穴。
深さは、ライトを向けても見えない。
遅れて、下からぬるい風が吹き上がってくる。
もし魔石を拾おうとして、一歩前へ出ていたら。
考えたくない。
私は灰色のヘルメットを見た。
『帰還導線 異常』
『迂回を推奨』
「……ありがとう」
ヘルメットは答えない。
でも、父さんが残したのは三分の猶予だけじゃなかったらしい。
帰るための道を、危ないと知らせる物。
それなら、持っていく意味がある。
私は穴から距離を取り、来た道を引き返した。
戦闘の練習は中止。
魔石も拾わない。
今日はもう、十分に危なかった。
◇
白い扉の前まで戻ると、取っ手に触れる。
『帰還可能』
『残り時間:四十七分』
余裕はある。
それでも私は、すぐに扉を開けた。
白い光の向こうへ出る。
管理センターの休憩スペースへ戻ってから、朝倉さんに報告した。
「B1の西通路で、床が崩れました。灰色のヘルメットが先に異常を知らせてくれて」
「場所はわかりますか?」
「たぶん、ここです」
探索用マップを見ながら、通った場所を示す。
朝倉さんの表情が変わった。
「そこは、昨日まで通行可能扱いだったはずです」
「急に崩れたんですか」
「確認します。真壁さんは、今日はもう潜らないでください」
「はい」
素直に頷いた。
今日はもう潜らない。
その約束を守ることも、探索者の仕事だと思う。
朝倉さんが連絡用の端末を持って奥へ行く。
私は休憩スペースの椅子に座り、灰色のヘルメットを膝に置いた。
内側の文字は消えていた。
ただ、三本の階段の印だけが、少しだけ明るく見える。
父さんは帰還支援班で、誰かが帰る道を見ていた。
そして今、その装備が私の道を見ている。
だったら私は、もっとちゃんと帰らなければならない。
その日の探索収入は、石灰キノコ二個と鉄灰苔一束。
たぶん、七百円くらい。
でも私は、穴に落ちなかった。
それだけで今日は、かなり儲かった気がした。
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好きなラノベなんですか?
SAO、魔法科高校とかの世代?なんですけど
エロマンガ先生とかも記憶にあるな
俺妹だっけ、タイトル長いやつ。あれもいいよね
最近?だと青春バニーガールとかよう実とか?
実家にたくさんあるけど、何が揃っていたか覚えていないですね。
最近、なろう以外だと
メイジアンカンパニー?くらいしか買ってなくって
時間ないのもあるんですけどね




