↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還だけが取り柄の女子高生、ダンジョンで稼ぐ  作者: 愚者さま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/31

第29話 通風板の横を渡る

こんにちばんわ!!



 固定輪が取り付けられたのは、四日後だった。


 案内板には、新しい札が掛かっている。


『第二通路内・第二固定輪 設置済み』

『壁沿い安全帯 通行可能』

『通風板への接触禁止』


「安全帯って、どこですか」


 栞が聞くと、担当者は更新された図面を見せた。


「通風板の左側に、細い足場があります。幅は十センチほど。黄色線の内側だけを使ってください」


「十センチ……」


「片足ずつ置けます。耐風索は第一固定輪から第二固定輪へ掛け替え可能です」


 栞は図面の線を目で追った。


 通風板の上を渡るのではない。


 板が開く場所を避け、壁と板の間に残った細い縁を進む。


 安全帯と呼ばれているが、落ちれば終わる場所には変わりない。


 栞は予定を書いた。


『第一固定輪から第二固定輪まで』

『黄色線の内側だけ』

『第二固定輪で一度止まる』


 タイマーは二十五分にした。


 白い扉をB1北側の階段脇へ置く。


『帰還可能』

『残り時間:五十九分』


 B2へ降り、外周東側へ向かう。


 第一固定点で耐風索を留め、案内索を通して第二固定点へ渡る。風待ち棚を抜け、灰色の扉を開ける。


 第一曲がり角までは、前回と同じだった。


 右壁の第一固定輪へ耐風索を掛け替える。


 その先には、黄色い線が引かれていた。


 線の内側に、幅の細い金属の縁が続いている。


 栞は片足を置いた。


 靴底の半分しか乗らない。


 それでも、床板の上ではなかった。


 横から風が来る。


 腰を壁側へ寄せ、壁の取っ手を一つずつ使う。耐風索は背中側へ伸び、通風板の前でたるんでいる。


 板が開けば、風は下から来る。


 だから、板の端へ近づかない。


 六歩進んだところで、表示が変わった。


『風向切替 あと十秒』


 栞はその場でしゃがむ。


 板が開き、下から風が噴き上がった。


 安全帯の金属縁が震える。


 耐風索が張った。


 栞は片手で取っ手を握り、もう片方の手で壁を押さえる。足は動かさない。


 風が止まるまで、十秒。


 止まったあと、栞は残りの三歩を進んだ。


 壁の右側に、銀色の輪が見えた。


 第二通路内の第二固定輪だ。


 栞はその場で止まり、クリップを掛け替えた。


 腰に掛かる索が、短くなる。


 第一固定輪から第二固定輪までの安全帯が、帰還経路になった。


 栞は固定輪の先を照らした。


 通風板は終わっている。


 その先には、壁際に浅い棚が続いていた。棚の奥には、青白い石が二つ並んでいる。


 風冷石だった。


 ただし、棚の床には細いひびが走っている。


 栞は取りに行かなかった。


 第二固定輪へ着いたことだけで、今日の目的は終わっている。


 タイマーを見ると、残りは十三分だった。


 栞は来た道を戻り、第一固定輪で耐風索を掛け直した。通風板が閉じている時間を選び、安全帯を一歩ずつ戻る。


 風待ち棚を出て、第二固定点、案内索、第一固定点の順に進む。


 白い扉をくぐったとき、表示は四十三分だった。


 地上で報告すると、担当者は風冷石の写真を確認した。


「棚の石は、次回の回収候補ですね」


「床にひびがあったので、取りに行きませんでした」


「それで大丈夫です。新しい係留点へ到着したことが、今回の成果です」


 栞は地図へ書き足した。


『第二固定輪まで到着』

『風冷石 二個確認。未回収』


 通風板の横は、渡れた。


 けれど、渡れたからといって、棚まで行っていいわけではない。


 帰るための輪が増えたなら、次は足場のひびを確認する番だった。

ブクマ、評価、感想

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。