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帰還だけが取り柄の女子高生、ダンジョンで稼ぐ  作者: 愚者さま


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第26話 曲がり角の先では、立ち止まる

こんにちばんわ!!


 地図が更新されたのは、前回の探索から三日後だった。


『B2第二通路 風返し』

『第一曲がり角まで 確認済み』

『曲がり角の先 現況確認中』


 担当者が赤い線を引いた箇所は、ほんの十数メートルだった。


「次の確認が終わるまで、曲がり角の先へは進めません」


「見える範囲も、ですか」


「見える範囲もです。風の流れが変わる場所は、立っているだけで引かれることがあります」


 栞は地図に視線を落とした。


 見えることと、行けることは違う。


 それは、第一曲がり角へ行ったときにも分かっていた。


 今日の予定は、曲がり角まで行き、そこから先を確認すること。


 入らない。


 だが、確認のために見ることまで禁止されているわけではない。


 栞は紙へ書いた。


『曲がり角で停止』

『先の風を観察』

『表示が変わるまで進まない』


 いつもの白い扉をB1の階段脇へ置く。


『帰還可能』

『残り時間:五十九分』


 タイマーは二十五分にした。


 前回より五分長い。


 ただし、進む距離を伸ばすためではない。風が止まるまで待つ時間を残すためだった。


 B2へ降り、外周東側へ向かう。


 第一固定点、案内索、第二固定点。順番を崩さずに風待ち棚まで進む。


 灰色の扉を開けると、風は弱かった。


 入口の固定輪へ耐風索を移し、手すりを握って三歩進む。


 前方から風が来る。


 栞は足を止め、壁の表示を見た。


『風向切替 あと二十秒』


 前回より長い。


 通路の奥から、低い音が近づいてくる。


 栞は腰を落とした。索に引かれないよう、手すりを強く握る。


 風が入口へ向きを変える。


 身体が半歩だけ後ろへ滑った。


 耐風索が張ったところで止まる。足裏が床を捉え、栞は姿勢を戻した。


 魔法具は、止めてくれた。


 止まったあとに立ち直ったのは、自分の足だった。


 そのことを確かめてから、栞は曲がり角へ進んだ。


 曲がり角の壁には、前回と同じ表示がある。


『確認範囲 ここまで』

『次区画 現況確認中』


 その先は、照明が一つだけ点いていた。


 床は見える。


 けれど、床に置いた手回し灯の光が、曲がり角の先で細く横へ流れている。


 風が、通路の奥ではなく、横から来ている。


 栞は細い紙片を一枚、床へ置いた。


 紙片は一瞬で横へ引かれ、見えない先へ吸い込まれた。


 曲がり角の先には、正面の通路だけではない。


 横へ抜ける風の道がある。


 栞は身を乗り出さなかった。


 次の固定輪が見えないからだ。


 手すりも、曲がり角の内側で途切れている。


 耐風索を伸ばしても、留める場所がなければ帰れない。


 タイマーを確認すると、残りは十七分だった。


 観察は終わりにする。


 栞は曲がり角の手前で写真を撮り、来た道を戻った。


 扉を閉め、第二固定点へ戻り、案内索を渡る。


 白い扉の表示は、四十六分だった。


 地上へ戻ると、栞は紙片が吸い込まれた方向を地図へ書き込んだ。


「曲がり角の先は、正面だけではありません。横から風が抜けています。次の固定輪と手すりが見えないので、そこで止まりました」


 担当者は地図に新しい矢印を引いた。


「これは、確認範囲を広げる前に調べる必要がありますね」


「先に固定輪を見つけないと、進めません」


「その判断で正解です」


 栞は頷いた。


 曲がり角の先には、道がある。


 ただし、帰るための道具がない。


 それなら、今はまだ進む場所ではない。


 次に必要なのは、強い装備ではなく、風の向こうにある固定輪の位置だった。

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