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帰還だけが取り柄の女子高生、ダンジョンで稼ぐ  作者: 愚者さま


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第25話 風返しは、風を返す

こんにちばんわ!!


 翌日の朝、B2の案内板に新しい紙が追加されていた。


『第二通路「風返し」入口確認済み』

『通行可能 ただし、第一曲がり角まで』

『送風切替中は、入口より先へ進まないこと』


 栞は紙をスマートフォンで撮影した。


「もう確認したんですか」


 報告台の担当者へ聞くと、昨日の写真と照らし合わせた地図を見せてくれた。


「入口の構造だけです。通路の中は、遠隔の風量計を置いてあります。今のところ、第一曲がり角までは歩いても問題ありません」


「その先は」


「未確認です。あなたの許可なら、確認済み範囲まで。新しい範囲は、現地で勝手に広げないでください」


「分かりました」


 栞は地図を受け取った。


 昨日まで壁だった場所に、細い線が一本増えている。


 それだけで、B2の外周は少しだけ広くなった。


 今日の目的は、第一曲がり角まで行き、帰ること。


 紙の余白に、いつものように書く。


『入口から曲がり角まで』

『送風切替中は進まない』

『二十分で戻る』


 B1北側の階段で、白い扉を置いた。


『帰還可能』

『残り時間:五十九分』


 タイマーは二十分。


 B2へ降り、風抜けの外周を東へ進む。第一固定点で耐風索を留め、案内索へクリップを通し、第二固定点まで渡った。


 風待ち棚の右側に、昨日の灰色の扉がある。


 今日は、扉の横に新しい札が掛かっていた。


『B2第二通路 風返し』

『現在確認範囲 第一曲がり角まで』


 栞は扉を押した。


 蝶番は重かったが、ひっかかりはなかった。


 中は、風抜けより狭い。左右の壁に短い手すりが続き、床には等間隔で固定輪が埋め込まれている。


 耐風索のクリップを、入口の固定輪へ移した。


 手すりを離さず、三歩進む。


 風は、前からではなく、背中側から来た。


 風待ち棚で受けた横風とは違う。通路の奥へ押す風だ。


 栞は足を止めた。


 押される方向が分かっているなら、急ぐ必要はない。


 壁の手すりを握り、固定輪を一つずつ使って進む。


 四つ目の固定輪を過ぎたところで、通路の照明が青く変わった。


『風向切替 あと十秒』


 栞はその場で腰を落とした。


 通路の奥から風が戻り、今度は入口へ向けて吹き抜ける。耐風索が張り、腰が後ろへ引かれた。


 クリップが固定輪を確実につかんでいる。


 それでも、索があるから進めるわけではない。


 手すりを握って、風が止むのを待つ。


 止んだとき、タイマーには十二分と表示されていた。


 第一曲がり角は、すぐ先だった。


 そこには二枚の表示があった。


『確認範囲 ここまで』

『次区画 現況確認中』


 曲がり角の先は見ない。


 栞は表示を撮影し、来た道を戻った。


 入口で耐風索を元の固定輪へ戻し、扉を閉める。風待ち棚を出る前に、二つのクリップが自分の腰から外れていないことを確かめた。


 第二固定点から案内索を渡り、第一固定点へ戻る。


 白い扉をくぐったとき、表示は四十一分だった。


 地上の報告台で、栞は写真を見せた。


「切替風を受けました。通路の中では、前後の風が入れ替わります」


「風返し、という名前どおりですね」


「曲がり角の先は見ていません。表示が現況確認中でした」


 担当者は記録へ入力し、地図の第一曲がり角に青い印を付けた。


「次回は、ここから先を確認できるかもしれません。ただし、今度も範囲が更新されてからです」


 栞は頷いた。


 今日、通路は少しだけ長くなった。


 けれど、栞が持ち帰ったのは、風の向きと、戻るための固定輪の位置だけだった。


 それで十分だった。

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