↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還だけが取り柄の女子高生、ダンジョンで稼ぐ  作者: 愚者さま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/31

第23話 風待ち棚には、触らない表示がある

こんにちばんわ!!


 B2外周東側の地図を、私は前の日から何度も見ていた。


 一つ目の固定点。


 その先にある、手すりの切れ目。


 二つ目の固定点。


 そして、風待ち棚。


 朝倉さんが確認台の上へ耐風索を置く。


「切れ目の上には、固定点同士を繋ぐ案内索があります」


 地図の点線を指した。


「耐風索の金具を案内索へ通したまま、次の手すりまで移動してください。途中で金具を外さないこと」


「手すりがなくても、索は繋がったまま」


「はい。ただし、走らない。送風開始の表示が出たら、最初の固定点へ戻ること」


「風待ち棚まで行けるのは、送風停止中だけですね」


「そうです」


 今日は、二つ目の固定点まで。


 風待ち棚で、一回だけ送風を待つ。


 それ以上はしない。


 私は予定を書いた。


『二つ目の固定点まで』


『風待ち棚で送風を一回待つ』


『三十分』


     ◇


 B1北側の通常階段脇に白い扉を置き、B2へ下りた。


『帰還可能』


『残り時間:五十九分』


 スマホのタイマーは三十分。


 外周東側の最初の固定点へ行く。


 黄色い金具に、耐風索を留める。


 次の手すりまでは、五歩。


 前回は、ここで止まった。


 今日は、止まらない。


 でも、急がない。


 手すりの切れ目の上に、細い銀色の案内索が張られている。


 私は耐風索の金具を、その案内索へ通した。


 かちり。


 腰のあたりで、索が軽く引かれる。


 前の固定点とは、まだ繋がっている。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 格子溝を見ない。


 次の手すりだけを見る。


 五歩目で、指先が金属に届いた。


 私はすぐに手すりを掴み、二つ目の固定点へ金具を留め直す。


 それから、やっと息を吐いた。


 風待ち棚は、すぐ横にあった。


 壁が少し奥へ引っ込み、三人くらいなら立てそうな狭い場所になっている。


 正面は、格子溝ではなく厚い金網で塞がれている。


 送風が来ても、ここなら風を受けにくい。


 棚の床には、濃い青の石が二個落ちていた。


 風冷石より、少しだけ重い。


 地図の端に書かれている。


『風留晶 傷なし:一個一千二百円前後』


 私は周囲を見てから、一個を拾った。


 もう一個も、手すりのすぐ近くにある。


 採取袋に二個入れる。


 そのとき、棚の一番奥に、小さな金属板があるのを見つけた。


 表面は黒く汚れている。


 でも、丸の中に三本の階段みたいな印だけは見えた。


 灰色のヘルメットと同じ印。


 リュックの中で、灰色のヘルメットが鳴る。


 かちり。


 私は取り出した。


『搬送設備 閉鎖』


『接触不要』


 金属板の文字を、スマホのライトで照らす。


『旧・帰還支援庫 庫外返却棚』


『現在使用不可』


 風待ち棚は、ただ風を避ける場所じゃなかった。


 昔は、誰かの持ち物を返すための棚でもあったらしい。


 でも、今は使えない。


 触らない。


 登録しない。


 私は写真だけを撮った。


 ちょうどそのとき、案内板が鳴った。


 かん。


『送風開始 あと十秒』


 私は棚の手すりを掴んだ。


 耐風索の金具を、二つ目の固定点にもう一度確かめる。


 風が来る。


 ごう、と金網の向こうで音がする。


 棚の中まで風は入ってこない。


 でも、金網の向こうの格子溝では、小石が流れている。


 私は金網の外へ手を出さない。


 濃い青の石を、もう一つ探そうともしない。


 送風が止まったあと、スマホを見る。


 タイマーは残り十二分。


 今日は、戻る。


 来た道へ戻り、案内索を使って一つ目の固定点へ戻る。


 金具を外すのは、手すりを掴んでから。


 最後まで、朝倉さんに言われた順番のとおりにした。


     ◇


 白い扉の前まで戻る。


『帰還可能』


『残り時間:四十一分』


 スマホのタイマーは、残り十二分。


 私は扉を開けた。


     ◇


「風待ち棚まで行きました」


 地上で写真を見せると、朝倉さんの表情が少しだけ変わった。


「庫外返却棚が残っていたんですね」


「使えないって書いてありました。ヘルメットにも、接触不要って」


「それで正しいです。今の返却物は地上窓口へ回すので、その棚には触れないでください」


「わかりました」


 風留晶は二個で、二千四百円だった。


 でも、今日持ち帰ったのは石だけだ。


 古い棚は、写真と報告だけにした。


 持ち帰る物と、持ち帰らない物。


 B2でも、その順番は変わらない。

ブクマ、評価、感想

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。