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帰還だけが取り柄の女子高生、ダンジョンで稼ぐ  作者: 愚者さま


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第21話 買うものを、先に決める

こんにちばんわ!!


 風冷石を二回持ち帰ったあと、私は管理センターの装備販売棚の前で立ち止まった。


 B2用の手回し灯。


 予備の発煙筒。


 風よけのゴーグル。


 そして、一番下の段に、黒い帯みたいな物が並んでいる。


『耐風索 六千円』


 腰に巻く細い安全索。


 先端の金具を、B2の壁際にある手すりへ留める。


 送風で足を取られたとき、体が格子溝のほうへ流されないための物だ。


 朝倉さんが隣に来た。


「次の外周まで行くなら、持っていたほうがいいです」


「中央へ入るための物じゃないですよね」


「違います。手すりのある安全な外周で、退避を確実にするための物です」


 それなら、欲しい。


 風が来たとき、両手で手すりを掴んだ。


 あれで足りた。


 でも、手すりまで三歩あった。


 風針虫がいたときも、あと三歩だった。


 次は、その三歩を少し短くできるかもしれない。


「風冷石二回分で、四千二百円です」


 私は、財布の中の明細を数えた。


 足りないのは千八百円。


「あと三個、傷なしを持ち帰れたら買えます」


「目標としては、ちょうどいいですね」


 朝倉さんは値札を戻した。


「ただし、買うために三個拾うんじゃありません。安全な三個があったら、です」


「わかっています」


 私は値札の六千円を、スマホのメモに打ち込んだ。


『耐風索 6,000円』


 次にB2へ潜る理由が、一つできた。


     ◇


 その日のB2は、前より早く送風が来た。


 私はB1北側の通常階段脇に白い扉を置き、スマホのタイマーを二十五分にする。


 風抜けへ下りると、案内板には最初から文字が出ていた。


『送風開始 あと二分』


 私は採取袋を握ったまま、手すりのすぐそばへ行った。


 二分で、遠くへは行けない。


 だから壁際だけを見る。


 最初の風冷石は、手すりの根元に落ちていた。


 傷なし。


 採取袋へ入れる。


 二個目は、その二歩先。


 拾ってから、すぐ手すりへ戻る。


 三個目は見つからない。


 私は無理に探さなかった。


 案内板の表示が変わる。


『送風開始 あと十秒』


 私は手すりを掴んだ。


 ごう、と風が走る。


 格子溝の上を、小石と冷たい空気が流れていく。


 前に見たときほど怖くはなかった。


 でも、慣れたわけでもない。


 風が止まったあと、私はもう一度だけ壁際を見た。


 さっきまで何もなかった場所に、風冷石が一個落ちている。


 風で運ばれてきたらしい。


 手すりから一歩。


 周囲を見る。


 格子溝から、音はしない。


 天井も、壁の穴も大丈夫そうだ。


 私はそれを拾った。


 採取袋の中で、三個の水色が小さく鳴る。


 スマホを見る。


 タイマーは残り十五分。


 もう一個あれば、明細は少し増える。


 でも、耐風索に足りる金額は、三個で届く。


 私は袋の口を閉じた。


「今日は、これで買える」


 だから、戻る。


     ◇


 白い扉の前まで戻ったとき、残り時間は四十九分だった。


 スマホのタイマーは、残り十五分。


 私は扉を開け、管理センターへ帰った。


 風冷石三個の買取は、二千百円。


 朝倉さんが明細を出す前に、私は言った。


「耐風索を買います」


「本当に、今日でいいですか」


「はい。必要な分だけ、持ち帰れました」


 風冷石二回分と、今日の分。


 六千三百円。


 そのうち六千円を、私は耐風索に替えた。


 黒い帯は、思ったより軽い。


 腰へ巻き、先端の金具を手すりの見本へ留める。


 かちり、と小さく鳴った。


「これを付けても、危ない場所に行けるわけじゃない」


 朝倉さんが言う。


「はい。手すりのある場所で、帰るために使います」


 金具を外し、耐風索をリュックへしまう。


 残った三百円と、新しい装備。


 今日は、何かを買えた。


 次にB2へ入るときは、これを使える場所まで行く。


 ただし、行けるようになったから行くんじゃない。


 帰るための準備ができたから、少しだけ先へ行く。

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