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バンドマンになりたいコミュ障陰キャの転生先は、『バンド』の概念がない世界でした ~戦闘力0だけど、ギターで魔王に挑みます~  作者: 小雨☂


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第13話 代償

気が付くと、目の前には果てしない暗闇が広がっていた。

 その闇よりも暗い()()が、僕の前にゆらゆらと揺れている。

 一瞬、黒い甲冑のような影が、闇の奥で静かに佇んで見えた。


 ――オマエハ、ナゼ、タスケタ?


「え?」


 闇の中から声が聞こえてくる。


 ――ジブンヨリモ、ツヨイモノヲ、オマエハ、タスケタ。


「なんのこと……?」


 ――オマエハ、ヨワイ


「そうだけど……いきなり失礼だな」


 ――ナノニ、タスケタ。ナゼダ。


 声は聞こえてくるが、何が言いたいのか僕にはさっぱりわからなかった。


 ――ナゼ……


 その声はどんどん小さくなっていき、暗闇の中へと消えていった。





「うぅん……」


 瞼を開くと、目の前には見知らぬ部屋が広がっていた。

 僕はベッドから体を起こし、辺りを見渡した。

 そこはどこかのお屋敷のようで、広くて立派な部屋だった。


「ここは、どこだ?」


 確か、ダンジョンで騎士の人たちに助けてもらって……そのまま倒れたんだ。


 コンコン――


「失礼いたします」


 ノックとともに、執事服を着た年配の男性が部屋に入ってきた。


「おや、お目覚めでしたか。ご気分はいかがでしょうか?」


「は、はい……! 元気です!」


 丁寧な問いかけに思わず背筋を正すと、執事服の男性は穏やかに微笑みを浮かべた。


「お目覚めになられたばかりのところ申し訳ありませんが、客間にお越しいただけますか?」


 状況が飲み込めないまま、僕は男性の案内で客間へと向かった。



 ガチャ――


「……アルバート!!」


 そこには、今にも泣きそうな顔を浮かべるアリアの姿があった。


「無事で良かった!! …………アルバート、本当に、ごめんなさい……私……」


 肩を震わせながらアリアが俯く。


「アリアも無事で良かった。 怪我は大丈夫?」


 僕の問いかけに、アリアはぎゅっと唇を噛み締めた。


「アルバート様、アリアお嬢様。旦那様がお見えになりました」


 先ほど案内してくれた男性がそう告げると、部屋のドアが再び開いた。


「…………!」


 部屋の空気が張り詰める。

 入ってきたのは、立派な甲冑に身を包んだ大柄な男性だった。

 顔にはいくつもの傷跡があり、死線を越えてきたことが伺える。


 男性から溢れ出る圧に、全身が一気にこわばった。


「アリア……お前は何度、テンポルバード家の顔に泥を塗れば気が済むんだ」


 甲冑の男性は、鋭い眼光をアリアに向けた。


「お父様……」


「お父、様……?」


 アリアの方をチラリと見ると、アリアは怯えた表情を浮かべていた。


「こちらは、テンポルバード家のご当主にして、王国騎士団団長のアレクサス・テンポルバード様でございます」


 ぽかんとしている僕の様子を察してか、執事服の男性が紹介してくれた。


「騎士、団長……!?」


 僕は、アリアがやたらと周りの視線を気にしていた理由がやっとわかった気がした。


「アリア。縁談から逃げ出してまで入った()()()()()はどうした? まさか、もう追い出されたのか?」


「それは……」


 縁談? パーティー……?


 僕を置いてけぼりに、初耳の言葉が次々と飛び出てきた。


「上級の冒険者たちに相手にされなくなったお前は、低レベルの彼を唆してフォルツァンドに無断で侵入させたんだろう。そして、命を危険にさらした。なんと、愚かなことを……」


 騎士団長は、呆れたように大きなため息をついた。

 アリアは俯いたまま、肩を震わせている。


「お前たちは、冒険者ギルドとフォルツァンドから永久追放する」


 騎士団長は、僕たちに冷たい視線を向けたままそう言い放った。


「そんな! お父様……アルバートは、私に脅されてやむを得ずダンジョンに入ったんです。彼は何も悪くありません!」


「ならばお前は、脅されたのなら、窃盗を行っても、人を殺めても許されるべきだというのか?」


「それは……」


 騎士団長の言葉に、アリアは口をつぐむ。


「牢獄送りでないだけ有難く思え。次に問題を起こしたら、二度とテンポルバード家の敷居は跨がせん」


 騎士団長はくるりと背を向けると、部屋の扉に手を掛けた。


「待ってください、お父様! 私……強くなったんです。騎士団に入って、必ずお父様のお役に立ってみせます!」


 アリアは立ち上がり、騎士団長へと手を伸ばした。


「黙れ。女は大人しく家庭の務めを果たせと何度言えばわかるのだ。騎士団にお前を入れることなど断じてない」


 ギロリと向けられた鋭い視線に、アリアは肩をびくりと跳ねさせた。


「私は忙しいんだ。これ以上邪魔をするな」


 騎士団長は、バタンっと力強くドアを閉めると、そのまま部屋を立ち去って行った。


「お父、様……っ」


 アリアは膝から崩れ落ち、その場で泣きじゃくった。


「アルバートっ……本当に、ごめんなさい……私のせいで、あなたまで……」


 涙を拭いながら弱々しい声で謝る姿に、胸の奥がズキンと痛む。


「アリア……君は、騎士団に入りたかったのか」


 僕の問いかけに、アリアは小さく頷いた。


「お父様みたいになるのが、小さい頃からずっと夢だったの……みんなを助けられる強い騎士に私もなりたくて……だけど、お父様はっ……」


アリアの瞳から、ぼろぼろと涙が溢れ出す。


「アリアお嬢様、これを」


 執事服の男性がそっとハンカチを渡し、アリアを椅子へと座らせた。


「ありがとう、爺や……」


 男性が穏やかに微笑むと、アリアは少し落ち着きを取り戻した。


「お父様に『女は騎士団に入れない』って言われて……だから、魔王を倒せるくらい強くなれば、きっと認めてもられると思って……」


「そうだったんだね……」


 アリアの強引で無謀なこれまでの行動に納得がいった。

 彼女も、自分の夢を叶えるために必死だったんだ――


「お父様たちの王国騎士団は、もうすぐ魔王討伐に出るの」


「え!?」


 僕は大きく目を見開いた。


「お父様はこの国で一番の戦士よ。だから、魔王も倒してしまうかもしれない……そしたら認めてもらえる機会を失くしてしまうから、先に私が倒したかったの」


「だから『間に合わない』って焦ってたのか」


 アリアがこくんと頷いた。


「でも……もう無理だわ。お父様にも失望されてしまったし、上限解放できない私に魔王はきっと倒せない」


 アリアは拳をぎゅっと握りしめた。


「迷惑かけて、本当にごめんなさい」


 そう言って、アリアは僕に深く頭を下げた。


 「…………」

 

 僕は、

 夢を否定されることの辛さを知っている。

 夢を諦めることの難しさを知っている。


 夢を叶えるためなら、なんだって乗り越えられる気がする。

 

 夢はいつだって、僕に力をくれるんだ。


「…………お父さんの騎士団に入れないなら、アリアが騎士団を作ってみたら?」


「え?」


「アリアと同じで、みんなを守りたいって思う仲間を集めてさ。実績を出せば、いつかお父さんの騎士団に入れてくれるかもしれないよ?」


 アリアは、きょとんとした表情で僕を見つめていた。


「どんなに障害があっても、諦めない限り案外何とかなるかもしれないよ」


 僕がへらりと笑いかけると、アリアは目をぱちぱちとさせた。

 すると、後ろで話を聞いていた執事服の男性が微笑みを浮かべた。


「アリアお嬢様、素敵なお仲間を見つけられましたね」


 アリアは目を丸くした後、ふっと笑みを溢した。


「……ありがとう、アルバート。そうね、私も諦めないわ」


 ハンカチで涙を拭い、アリアはぱっと顔を輝かせた。


「バンドも忘れないでね?」


僕の言葉に、「わかってるわよ」とアリアは少し眉尻を下げながら、笑顔を浮かべた。

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