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バンドマンになりたいコミュ障陰キャの転生先は、『バンド』の概念がない世界でした ~戦闘力0だけど、ギターで魔王に挑みます~  作者: 小雨☂


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第12話 駆け抜けろ!

 絶望という言葉がこれ以上ぴったりなシチュエーションなんてあるだろうか。

 嘆いても何も解決しないのはわかってるけど、あまりにも詰んでて笑えてきそうだ。


 いや、嘘。

 全然笑えない。泣きそう、怖い。


 HP残り1、戦闘力0のLv.15の僕

 VS 

 デスナイトLv.99+ アンデッド多数。


 考えれば考えるほど、『絶望』という言葉が頭を埋め尽くしていき、だんだんと眩暈がしてきた。


 いや……諦めるな!

 僕は『紅焔竜ヴルカヌス』から逃げた男だ。

 今度だって逃げ延びてみせる。


 僕は鞄からMP回復の薬草を取り出し、かじりついた。


「すぅーーーーっ……サン、ダアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


【スキル魔法発動:レゾナンス】


 雷魔法の光とともに、轟音が部屋に鳴り響く。


 よし、魔物が怯んだすきに――


「…………あ、あれ?」


 咄嗟に逃げようとしたが、デスナイトとアンデッドは微動だにしていなかった。


「もしかして…………効いてない!?」


 確かに、骸骨に耳はついてないもんね!?


「どどどどどうしよう……!!?」


 一瞬にして、僕はパニックになった。


 唯一の切り札が、一切通用しなかった。その事実に、全身が一気に震え出す。


 アンデッドが呻き声を上げながら、じりじりと僕に迫ってきている。

 しかし、デスナイトは僕の方を向いたまま、その場で静かに佇んでいた。


 まずい、まずい、まずい!!

 何とかしないと! 何か、他にできることは……!?


 その時、ふと先ほどの出来事を思い出した。


「そ、そう言えば! 他にも魔法取得してたような……」


 ステータス画面を急いで開き、スキルを確認した。


「あ、これだ! スピードサウンド……」


「グァァァ!!」


 すると、一体のアンデッドが僕に飛びかかって来た。


「うわあああ!!!」


【スキル魔法発動:スピードサウンド】


 僕の足元が光り出し、魔法陣が現れた。


「グァ……?」


「……え?」


 気が付くと、僕は入口付近へと移動していた。


 な、何が起きたんだ……?


 少しの間、僕もアンデッドも呆然とするようにその場に立ち尽くしていた。


「よ、よく分かんないけど……」


 僕は全速力で一気に駆け出した。


「逃げろーーーーーーーー!!!!!」


 それを合図に、アンデッドたちが僕を追いかけて来た。

 少しだけ振り返ると、デスナイトだけは僕を追うことなく、こちらを見つめたまま佇んでいた。



「さっき回避できたのは、魔法のおかげだったのかな!?」


 走りながらステータス画面を確認する。


【スキル魔法:スピードサウンド…使用中、移動速度が大幅に上昇する。MPを常時消費する】


「移動速度が上がる!? 今の僕に打ってつけじゃないか!!」


 さっきは回避した自分の動きが速すぎて、気が付かなかったのか……!


「ありがとう、神様ーー!! これならいけるぞ!!」


「ギャオォォォ!!」


 目の前には、新たな魔物が現れた。


「スピードサウンド!!」


 今度は、魔物の動きがスローモーションのように見え始めた。

 僕は攻撃を回避し、そのまま上層の階段へと走り抜けた。



「はぁ……はぁ……!!」


 息が上がってきた。

 速く動けるだけで、体力が増えたわけじゃないもんな。


 魔物がいないことを確認し、僕はその場に少し座りこんだ。


「ふぅ……」


 ステータス画面を再び開くと、MPがほとんど残っていなかった。


「使用中はMPが減り続けちゃうんだな……でも、回復の薬草もあるし、出口まではとかなりそうだ」


 MPを回復しようと薬草にかじりつく。

 しかし、なぜか半分までしか回復されなかった。


「あ、あれ? これだけ食べれば、全回復したはずなのに」


 ステータス画面をじっと見つめる。

 すると、見慣れぬ表示があることに気が付いた。


「ん? 状態異常……呪い!?」


【デスナイトの呪い:HPとMPが半減する。デスナイトを撃破、または白魔法カース・ブレイクでのみ解除可能】


「えええ!? HPも!? 1しか残ってないから気付かなかった……攻撃をくらったときに付与されてたのか」


 MP全回復を繰り返せば、出口までなんとかなりそうだったが、半分となるとかなり厳しい。


「あんまりだ、神様!! 僕が何したっていうんだよーー!!」


「なんでもかんでもわしのせいにするでない」そんな声が聞こえてきたような気がした。


「グルルルル……」


 近くから魔物の声が聞こえてきた。

 嘆いても仕方ない。やるしかないんだ……! 


「うおおおおおおおーーー!!!!」


 僕は立ち上がり、再びダンジョン内を駆け抜けた。



「ギャオォォ!」


「スピードサウンド!」


「グァァーー!!」


「スピードサウンド!!」


「ピギャァァーー!!!」


「スピードサウンドォォォォーー!」


 道に迷いながらも、何とか二階層まで戻ってこれた。

 しかし、持っていた薬草は食べ尽くしまった。

 そして、MPも残りわずかに……


「うわあああーーー!! もうだめだーーー!!! 死ぬーーーーーー!!!」


 半泣きになりながら、僕はダンジョンを駆け回った。


「ギャオォォーー!!」


 目の前にヘルハウンドが飛び込んできた。


「うわあああああ!!!」



 あぁ、アリアの歌をもっと聞いてみたかったな。


 あの歌声にのせて、ギターを弾いてみたかった。


 僕は……また夢を叶えることが出来ないのか――






「アイアンロック!」


 突然、僕の目の前に岩の壁が現れた。


「君! 大丈夫か!?」


 甲冑を着た人たちが駆け寄り、ヘルハウンドを颯爽と倒してくれた。


 あぁ、アリアが助けを呼んでくれたんだ……!


 僕は、体の力が一気に抜けていくのを感じていた。

 意識もどんどん遠くなっていく……


「しっかりしろ! もう大丈夫だ」


 騎士の人たちの声を遠くに感じながら、僕はそっと、眠りについた。

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