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【現実】 (2)

「結論を言おう。現実世界は一つのゲームなんだよ」

 ヒジリはシルクハットの中に手を入れ、細長い物体を取り出した。彼女がGカウンターを呼ぶ物体が現れた。

「ゲームをクリアして、しずかな目で世界を観察した者は、早ければクリア直後に、遅くても数年内に、一様に同じ経験をする。それは『この現実世界がゲームだと判明する』という経験。やがては『ゲーム』の端緒を自力で発見するに至る」

「え? どういうこと?」

 私は訊き返した。何を言っているのか?

 まさか、現実世界が本物のゲームだと言っているのだろうか?

「現実世界というフィールドも相対的なものということは、『ゲーム』を経験した君ならもう分かっていると思う。現実世界というのも一つのフィールドに過ぎないんだ。――しかし、通常のゲームと比べると何倍も複雑で巨大なフィールドのため、ゲームだと実感するまでは時間が掛かる。それでも、君は薄々は感じているはずだ。だから結論を先に渡しておく。現実世界はゲームであり、あたしはゲームへの入り口を既に知っているって」

 私は、慄然とした。現実世界はゲームなどではない――それは鉄板を億枚も重ねたごとき摂理だと思っていた。「世界がゲームである」という絵空事が可能なのは、ゲームや小説の中だけっであると。

 ゲームで済ませることができないから、私は言葉を尽くして現実世界がいかに「現実」であるかを言い募ってきた。現実世界で顕著な「現実」感は、まさに現実世界がゲームでないことを語っている肉体的感覚だった。――すなわち、ヒジリの発想は、リアリアである限りは決して至らないか、至っても空想の域を出ない。ふつうは本気では検討しないものだ。

 しかし、「現実世界がゲームである」という逆転的発想を思いつき、心から考え抜いたのなら。または、その発想こそが事実であると知っているのなら。そして、事実である証拠を見つけたのだとしたら。

 今は、私は、リアリアではない。そして、ゲームをクリアしたことで、現実世界を相対感をもって見ることができる。ゲームなのに「現実」を感じたこともあった。「現実」の根はわたしの内側にあったのだと分かっている。

 ならば、「現実」を取り去った現実世界は、どういうものなのか。ヒジリの言う通り、巨大なひとつのゲームのフィールドであっても不思議はない。

 いや、今の私の肌感覚は、既にその結論を肯定している。おそらくゲームクリアした者に特有な肌感覚。ゲームの先輩であるヒジリの言う事は信じられる。

 ヒジリは新しいGカウンターを私によこした。

「今から疑念を消してあげる。Gカウンターはゲームをクリアした証。そして、新しいゲームの探知機にもなる。論より証拠、明日からでもゲームを始めましょう」

「――本当なの?」

 私はGカウンターを受け取った。ずっしりと重かった。ヒジリが言うことだから、明日にでも私は「ニューゲーム」の存在を確信しているかもしれない。でも実際に「ニューゲーム」を始めるまでは完全に納得はできない。

 一つだけ疑問が残る。ここは現実世界ではないか。今は「現実世界というゲーム」ではないのか? ヒジリに疑問をぶつけた。

「今もゲームの中に居るわよ。でも、ゲームをプレイしている感じはないでしょう? 今はゲーム上の進展は無いというわけ。『現実世界ゲーム』をプレイするにはコツが要る。あたしたちは現実世界では世界に同化されている。だから世界からノイズを受ける。現実世界というゲームフィールドを俯瞰し、ルールや道筋を見定めることは、通常のモードのあたしたちでは困難。ゲームを感覚し、プレイヤーの視点を得るには、あたしたちの側の準備を整える必要がある。Gカウンター等を使ってそれは行うの。そう言われれば納得できる?」

 なるほど。「現実世界もゲームのようなものだ。だからポジティブに生活せよ」などという標語を言う気ではないようだ。確かに本物のゲームだというわけだろう。そして、『SC』に比べてだいぶ高度なゲームだという予感がした。私はプレイする前から興味をそそられた。それはきっと面白いゲームだろう。

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