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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
それぞれの出会い編
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4 ウィンディーネ

 


 ガヤガヤと騒がしくも楽しそうな酒場。


「…え?いきなり未成年飲酒?」


「いや、ここの上に俺の泊まっている宿があるんだ」


 …ああ、なるほど。

 雷狼のいる森から6時間くらい歩き、アヴェルが泊まっていた宿についた。

 アネモスの中でもわりと大きな街に宿はあり、表通りもワイワイと騒がしかった。

 クリフレットという街なのだそうだ。アヴェルが教えてくれた。


「もう昼だ。荷物を置いて飯を食いに行こう」


「…うーん、なんかごめんね?」


 面倒を見るということは赤の他人にお金を沢山支払わせちゃうってことだし。


「案ずるな、金ならある」

  

 …かっくいー。

 二階にあがり、部屋に入った。質素ながらも綺麗な部屋だ。アヴェルは斧を置き、私の方を振り向く。


「じゃあ、いこうか」


「うん」


 街にでると、そこには沢山のお店が立ち並んでいて、ほんとにRPGの世界だーと私はしばし呆然した。

 アヴェルは慣れた手つきで古びたお店に入る。


「よっ、アヴェル。…お?水神様の御子さんと仲良しになったのかい?」


 いきなりそんな言葉がこの店の主人からかけられる。

 アヴェルは苦笑して


「いや、面倒を見るだけだ」

「見るだけってお前…羨ましいなぁ、コノヤロゥ」


 二人で仲良く談笑しているのを見て、私はアヴェルに訪ねた。


「仲いいんだね」

「まぁな。昔馴染なんだ」


 ほー。それはそれは。


「嬢ちゃん、名前はなんてぇだい?」


 なんてぇだい?なんて言うんだい、ってコトなんだよね?


「アクア。よろしくね」

「アクアか!水神様のご加護に水の名前とは!嬢ちゃんいい名前貰ったねぇ」


 いや、自分で付けましたけど。

 気のいい主人は私とアヴェルを引き連れて、カウンターみたいなところへ案内した。


「どれにするんだい?」

「いつものやつを2つだな」


 アヴェルの注文を聞くと、何故かすごく楽しそうに奥へ入っていった。


「すまん、変な噂が多分明日にはすでにこの街には広がっている」

「変な噂?」

「あいつのことだ、どうせ俺とお前が伴侶とかでも言うつもりなんだろう」


 …皆暇人っすねー。


「アクア、飯が終わったら魔法の練習に行こう。お前も何かあった時のために護身術程度の技は覚えていたほうがいい」

「うん、わかったー」


 主人が持ってきたのは、モチモチのパンに何かの肉を挟んだ、ハンバーガーみたいなのだった。ウム、美味しい。

 食べ終えると、アヴェルはお金を出して勘定をすます。…おお、お金あるんだ。後でどんなのか聞いておこう。

 アヴェルが連れていったのは、大きい宿みたいなところだった。ここでいろいろな人が練習しているらしい。


「一部屋頼む」

「おお、これは”神の加護を受けたものホーリー”様!はい、ここをどうぞ」

「ああ」


 アヴェルの言うとおり、ホーリーとはやはり特別な存在みたいだ。

 なんか、店の人がすっごく憧れの人みたいな目で私達を見てくるし。

 アヴェルの話によると、こういう道場では魔法でドカンとやってもそうそう簡単には崩れない防御の魔法がかけられているそうで、魔獣などに襲われる心配もなく、使い勝手がいいそうな。


「まず、お前には”水妖ウィンディーネ”を作ってもらう。のちのち便利だからな、妖精は」

「ウィンディーネ?」


 これはまたファンタジーな。


「ウィンディーネは、水神の加護を与えられたホーリーだけが使える妖精を作る魔法でな。ホーリーの魔力でウィンディーネの強さは決まる」


 アヴェルはコップを用意した。


「ここに水を生み出すんだ」

「生み出す?」

「コップの上に手をかざせ。それから、強く水が在るイメージをするんだ。そしたら自然と魔力がコップに注がれる。ホーリーならそれで水を生み出せる。…出来るか?」


「うん、やってみる」


 私はコップに手をかざし、水のイメージを強く持った。


 ――水。

 ――沢山、溢れてて。

 ――とても澄んでいて。

 ――そして、綺麗な…。


 ブクブク、とコップのそこから何もしていないのに水があふれ出た。

 それは私の魔力が注ぎ込まれるのに順応し、どんどんと水の量が増えていく。


「…すごい…」


 アヴェルが後ろでつぶやいた。

 そして、コップいっぱいに水を生み出し終えると、アヴェルが制した。


「魔力を注ぎ込むのをやめろ」

 

 私はコップに手をかざすのをやめた。


「…これだけでいいの?」

「あまり多くの水を生み出すと、変な怪物が出たりするらしいからな。コップ一杯が適量らしい」

「アヴェル詳しいんだねー」

「俺が読んだ文献に載っていた」


 コップを見ると、綺麗な澄んだ水がゆらゆらと揺れていた。

 …おおー。自分で生み出したとだけあって、なんか感慨深い。


「じゃあ、この言葉を唱えながら、お前が望む姿を思い浮かべるんだ」


 私はこくんとうなづいて、アヴェルが言う言葉を覚えた。

 …よし。

 私はもう一度コップの上に手をかざし、目を閉じた。


「”我が力の塊よ  永遠の水源よ 我の望むべきすがたとなり、我を助ける道標となれ


  ――”水妖ウィンディーネ”!」


 コップから水が飛び出した。

 それは私の脳内のイメージに合わせるように、姿を変える。

 ぐにょぐにょと宙に浮かぶ塊が、徐々に形をもって静かに降り立つ。


 ――そして。


「…あぅ?」


 目を開けると、そこには美幼女がひょこっと私を見上げていた。


 …え?


 私の髪が蒼なのに対し、その子の髪の毛は水色だ。

 髪と同じ水色の瞳で私を見上げ、そして呟いた。


「ままー」


 ……………。


「え、ええええええ!?」



 後ろにいるアヴェルと一緒に、私も目を見開いた。




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