44 妖精の里/作戦
A,part
30分ばかし歩くと、そこには大木があった。
リィの小屋がある木よりも大きな、とても大きな木。
「ふわぁ…でっかいねー」
私がそう呟くと、リィはニヤニヤ笑って木の中に”消えた”。
「…え?」
「まま、はやくー」
「え?いや、ちょ、待って!?なんか、消え、たよ!?」
「いいからー」
ぐいぐい、とモアは私の背中を押し、大木へと近づける。
「ちょ、ま、っ、」
そして、ぐにゃり、と通り抜ける感触。
一瞬視界がくらくなり、そして、次の瞬間には綺麗な世界が広がっていた。
「…う、わぁ…」
ぺたん、と脱力したように私は尻餅をついた。
すると、リィが目の前にニヤニヤと笑って近づいてくる。
「どうだ?吃驚したか?」
「吃驚、っていうか…その、わけわかんなかった…」
そうだろ、とリィが笑う。
そこで、どし、と背中に体重がのしかかり、私は前につんのめった。
「ままー!びっくりした?びっくりした?」
「うんうんした。だからどういうことか説明しなさい」
モアはえーっとね、と人差し指を顔に寄せた。なんだそれ可愛すぎる。
「ここはね、姫の住む、ままでいうきゅうでんってやつ。こここそが、本当の妖精の里」
そして、リィとモアは二人で方を並べ、私に手を差し出した。
「「ようこそ、妖精の里へ」」
B,part
そろそろヴェテアの王がこちらにくるだろう、と神無と話し合い、王の護衛という役割で謁見に立ちあい、隙を見ていろいろ尋問しよう、ということになった。
なので、今は宮殿に向かっている。
「ところでアヴェル様」
「なんだ?」
「王とは旧知の間柄のように伺えましたが、それはどうしてですか?」
「…、・・・」
少し、言葉がつまった。
あの頃のことを、思い出した。
『どうせ、みんなわっちを殺すつもりなのじゃ!』
あの王の言葉に、イーリスがぶっ叩いたことも。
三人で、遊んだことも。
「昔、イーリスと一緒に王の世話役みたいなのをやっていたんだ。それだけだ」
「そうですか…」
納得がいかなそうな神無だったが、それ以上は突っ込んでこなかった。
そうしているうちに、王の元へとたどり着いた。
「アヴェル!神無!どうしたのじゃ?」
王が俺達に気づくと、嬉しそうに声を上げた。
「近々ヴェテアの王が謁見にくるのではないですか?」
「おお。・・・なぜじゃ?」
その問いに、神無が答えた。
「ヴェテアの王が、巫女殺しと襲撃の犯人です」
「…!?なんと・・・」
王は驚いたように声をあげ、それからうーむ、と考え始めた。
「それで、ぬしらは何が望みじゃ?」
「その謁見で、護衛を」
「・・・成程の」
それだけで理解したらしい。
相変わらずの聡明さだ。
「わかった。よかろう。謁見は明後日じゃ。それまでにくれぐれも気をつけよ」
はっと俺はその命に応じた。
神無もこく、と頷く。
帰ろうとした俺達に、王がそうじゃ、というように声をかけた。
「イーリスに、いつか、会えるかの」
それは、あの頃のような声音。
王ではなく、”ランル”としての、問いかけだった。
だから俺も、あの頃と同じように応じる。
「ああ。また、きっと会える」
「そうか!」
”ランル”は嬉しそうに笑った。
それ以上は何もないようだった。
神無と俺は、また、街へと戻った。




