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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
妖精の里編
44/47

42 里/気持ち

B,part書きました。それから、A,partも少し追加です

A,part


 

 リィが言うには、私が尻餅をついた噴水は、妖精の里へ入る入口、逆にいえば”通路”の出口なのだそうだ。私がくぐり抜けたあの扉はその出口を具現化したものらしい。

 ついでに、”今はモアか”というのはどういう意味か、と聞いたところ、


「妖精にも名前はあんだぜ?生まれ落ちたときに授かる名前がな。けど、一応人間と共に入ってきた妖精を呼ぶときには、その妖精につけられた名前を呼ぶんだ。なんつーか、掟かな」


 そっか。モアにも名前はあるのか。

 今更ながらの事実に、私は少し驚いた。


「モア…って、名前、なんなの?」


「えー?おしえなーい。っていうかおしえちゃだめなの」


「これも掟だ。”いつでも逃げられるように”妖精は、自分の真の名まなを人間に教えてはならない。別に信じる信じないの問題じゃねぇ。そういうもんなんだ」


 どうやら妖精には掟がいろいろあるらしい。

 大変そうだねー。


「っていうかさ、リィは多分、雷神のホーリーの妖精、なんだよね?」


「いいや」

 

 と、リィは頭をふった。


「妖精にホーリーはないさ。妖精は魔力の塊だ。魔力の具現化。自分が持つ中で一番濃い力の色が繁栄される」


 力の色。

 ギルドへ行ったあと、アヴェルにいろいろ説明してもらったことを思い出す。

 私は水。だから”青”

 アヴェルは風。だから”銀”。

 フラムさんは炎。だから”赤”。

 イーリスは緑。だから”碧”。

 イーリスがモアの力を直していたときに碧の光を放っていたように、魔力には色がある。 

 それが、妖精には髪にも反映されるということだ。

 私達、”加護を受けたものホーリー”と同じように。


 …この世界、髪に関係するものが多いなぁ。 

 そこで、ふと思い出した。

 ずっと抱いていた、疑問。


「そういえば、ここはどこなの?」


「どこって、妖精の里…ってまあそういうことじゃねぇよな。ここはいわゆる”異界”とかそんなものじゃねぇぜ?ここの入るために”特別な手続き”が必要なのは、この里には特殊な結界が厳重に張り巡らされているからだ。ま、場所自体はただの秘境で、普通のとこだ。綺麗なのは認めるけどな」


「へー、でもなんでそんな結界を?」


「争いを持ち運ばないため、と聞いている。人間共がここに入ってきたら、里が乱れる。なかには随分と人間を恐怖しているものもいるからな」


「わるーい人はね、モアみたいな妖精たちをひどくこき使うの」


「ま、だからそのへんは運だよなー。その点お前は恵まれたよなー。こいつの従事とか超楽そうじゃん」


「うん、もあすっごく運いいー」


 褒められてるのか軽く見られてるのか。

 私が割と真剣に考えていると、


「それに、守らなくちゃいけねぇもんもある」

 

 ボソリ、とリィが呟いた。

 え?と聞き返すが、リィはそれには答えなかった。

 

「……」


「……」


「……」


 なんとなく、続く無言。

 ちょっと耐えられなくなって、ギブアップしたのは私。

 こういうのは、ちょっと、ね。


「そーいや、どこに向かってるの?」


「ああ、おめーさんの服を交換するために、あたしんちに向かってる。それから、姫のとこだな」


「もあ、ほーこく。ばばーん」


 どうやら服を貸してくれるらしかった。ありがたい。

 水が肌にはりついているのは気持ち悪いから。あんまり好きじゃない。

 っていうか、報告?


「えと、妖精喰らいって奴、とか……フラムさんのこと?」


 モアがこく、と頷いたとき、リィが素っ頓狂な声を挙げた。


「妖精喰らい!?」


「え?うん、なんか、フラムさんって人が…」


「そういうことか、最近噂になってた気配の消滅は…。おい、モア、説明しろよ」


「わかってる。めんどくさいから、姫のとき、一緒にいればいい」


「あたりまえだ」


 そんなに妖精喰らいって大変なことだったのか。

 まあ、人殺しと同じだもんね。

 と、そんなことを話していたら。


「ついたぞ。あたしんちだ」


 そういってリィが指さしたのは。


「………………え?」


 なんか、大木の枝に作られた小屋だった。

 …随分と、妖精はバイオレンスな生活をしているらしかった。




B,part


「そういえば、アヴェル様」


「?なんだ?」


 俺が支度を終え、立ち上がった時だった。

 神無はふと思い出したように声をあげた。


「ヴェンテの王が、近々この国にお呼ばれされると内密に決まっていました」


「!?そうなのか!?」


「はい。たしか、国同士の総会で、決まっていたかと」


「…なんで教えてくれなかったんだ?」


「すっかり忘れていました。どうにも総会では私は寝てしまうので」


 …この少女は国の大事な会議で睡眠をとっているらしい。

 と、そういうことか。


「もしかして、あれは、挨拶…か?」


「…ああ、そうかもしれません。近々襲うぞ、みたいなものでしょうか」


 敵は俺達の誰かを狙っていた。

 俺の可能性は低い。

 だが、この世界の住人ではないというアクア。

 風神の器である大巫女の神無。

 二人の大物がここにはいるのだ。

 だとしたら、どちらに?


「…私は、アヴェル様の可能性が高いと思っております」


「…何?」


「というより、アヴェル様の持つもの、でしょうか」


 あ、と思い出した。

 そして、ごそごそと腰につけた小さな袋から”それ”と取り出す。


「…珠…っ!」


 いろいろあってすっかり忘れていたが、そうだ、俺はこれの守り手なのだ。

 この力は強大だ。なにしろ、神の力なのだから。


「アクア様には申し訳ないですが、これは決まったこと。避けられない運命。どうか、それの守り手になるご覚悟と、契約を」


「…契約…」


 まるでアクアとモアみたいだな、と俺は思ったが口には出さないことにした。

 これは、この珠は、神と同じ、またはそれと同等の権威を持つものだ。

 妖精とは、違う。


「分かっている。アクアを守るためなら、な」


「…ずっと気になっていたのですが」


 神無は少し伏し目がちに俺に尋ねた。

 …なんとなく、嫌な予感がする。

 そして、そういのは大概当たるのだ。


「アクア様のことを、アヴェル様は愛しているのですか?」


「…っ!?!?」


 ブッと吹き出した。今飲み物を飲んでいなくてよかったと思う。

 神無は純粋な目で俺を見る。


「アクア様にも、そのような傾向が見られますが、アヴェル様ほどではないかと。アクア様が抱くアヴェル様への気持ちは恩義と純粋な好意です。けれどアヴェル様は、まるで過保護で、そしていつしむような――」


「待った!!ちょっと待て!!」


 俺は慌てて訂正した。

 たしかに、アクアは妹のようには思っている。思っているのだが!

 恋愛感情は、抱いてない、つもりだ。多分。


「お前は、盛大な勘違いをしている!」


「そうでしょうか?」


 というよりそんな恥ずかしいことを口にするな!

 

「私としては、そうとしか見えないのですが。悪いことではありませんし」


「とにかく、違うんだ。アクアは、なんというか、妹みたいなものだ。イーリスみたいにな」


「イーリスという方は存じませんが、そうですか。残念です」


 …何が残念なんだ。

 俺は頭を抱えてうずくまりたくなる衝動を必死に抑えつつ、珠と契約を結ぶことにしたのだった。



 

 

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