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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
妖精の里編
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39 大問題





 次の日。

 朝ごはんを食べに宿の食堂へ行くと、宿のおばちゃんが私宛ての手紙を渡してくれた。誰かから預かったらしい。

 封を切ってみると、ランルからだった。


「ランルだ」


「何が書いてあったんだ?」


 中に入っている紙切れを取り出すと、『至急王城へくるように』とだけ書いてあった。

 っていうかランル凄い達筆だ。あれでも王様なんだなぁとしみじみ。


「よほど見られたくない内容のことなのでしょうか」


 神無が首をかしげ無表情に私に尋ねた。

 私がわかるわけもなく、とりあえず行こうという結論になった。

 …そういえば。

 モアがまだ出てこない。そんなに昨日力使ったのかな。

 

「アクア、行こう」


「あ、うん」


 そんなことを考えつつ、私は王城へと向かった。




 

「大問題なのじゃ」


「…はい?」


 ランルは本の山に囲まれ、その一つをものすごい速度でよみつつ溜息を付いた。


「だから、大問題なのじゃ」


「…うん説明しようか」


 がばっと本から顔をあげたランルの瞳には、少し焦りが混じっていた。


「…?」


「妖精の里が、危ないのじゃ」


「…妖精の里って…」


「モアよ、出てくるがよい」


 その瞬間、モアが私の指先からするりと出てきた。


「わかってる」


「やはりそうか。お主はどうするのじゃ?」


「もちろん、とめる」


 そうか、とランルは唸った。

 訳の分かっていない私達三人は困惑を顔に浮かべる。


「モア、ランル、どういうこと?」


 モアは困ったように眉を下げた。


「なんていえばいいのかわかんない」


「フラムが何かしているのじゃ」


 それにはピクリ、とアヴェルが反応した。


「本当ですか!」


「ああ。”妖精喰らい”なんぞしてるから、何かあるのかと思って調べておったらな、あやつ、もしかしたらあの魔法を使おうとしているのかもしれぬ」


「あのまほー。妖精の里へいくためのとくべつなまほー」


 モアが説明するように付け足した。

 っていうかちょっと待って。


「”妖精喰らい”って何?」


 それにはランルが答えた。


「妖精を喰らうこと。そのまんまじゃ。といっても本当に食らうわけではないがな。妖精の魔力を吸い取る、というほうがあっているかもしれぬ」


「喰らうって…どうやって?」


「魔方陣の中に妖精を閉じ込めて”糸”を繋ぎそこから通して魔力を根こそぎ奪う。まあ、見なければ実感は難しいであろうな。そして、魔力を失った妖精は、死ぬ」



「妖精はまりょくのぐげんか。まりょくがいのち。妖精からまりょくをうばうのは、命をうばうのとおなじこと」


 ランルの言葉を引き継ぐようにモアが呟いた。

 水色の髪が、揺れる。


「ゆるさない」


 ランルはまた溜息を付いた。

 そこには、どこか憐憫が含まれているような気がした。


「とにかく、命と同じような高密度の魔力を体に取り入れるのじゃ。死の危険ももちろんないわけではないが、ちゃんとそれと自分の魔力が同化した場合、とてつもなく強くなる。そして、同時に複雑だったり難しい魔法も使えるようになる」


「普通のにんげんじゃ使えない、妖精の里へ行くためのまほう。にんげんは、それを”通路アイル”となずけた」


「アイル…?」


 こくり、とモアが頷いた。


「ふつうのにんげんは使えない。だから妖精の里はいつも平和。だからこそ、踏み荒らすことはゆるさない。それに、あいつ、多分”アレ”を盗むつもり。だから絶対、いれさせない」


「”アレ”…って?」


 モアはそれには答えなかった。

 神無とアヴェルは不安そうにこちらを見ている。


「どうするのじゃモア」


「妖精の里にもどる」


「…アクアは」


「…それは」


 モアが目を伏せた。

 

「えと、私のことなら気にしなくていいよ?」


「いや、違うのじゃ」


「…?」


 ランルは頭を振った。

 モアは悔しそうに言う。


「ままはもあと契約した。妖精は契約をした相手と一定の距離から離れられない。妖精の里はその距離の範囲外」


「契約…?」


「もあがここにきて、まま、なまえつけた。それが契約。もあという名前はままがもあの持ち主である証」


 成程、よくわからないけどモアは私から離れられないために妖精の里にいけないのか。

 じゃあ簡単だ。


「私も妖精の里に行くよ」


「…え?」


 それには皆が目を見開いた。


「だって、私も行けばモアは里帰り出来るんでしょ?」


「うん…まま、いいの?」


「うん、当たり前でしょう?」


 モアが嬉しそうに笑った。

 屈託のないその笑顔に、相変わらず癒された。


「いいのか?」


「駄目なの?」


「…駄目じゃないが…」


「なら行ってくるね。できるだけすぐ帰ってくるから」


「…ああ、分かった」


 神無もアヴェルと一緒に頷いた。

 よし、二人の了承も得たので、行くとしようか。


「じゃあ、ランルも。行ってくるね」


「…あ、ああ。わかったぞ。行ってくるがよい」


 ランルも戸惑ってはいたが、力強く頷いた。


「まま、モアの手をにぎって。それから、目をふさいで」


「うん、分かった」


 私はモアの手を握り、言われるまま目をつぶった。

 モアが何かを呟いた。

 その瞬間、瞼の裏が強い明かりで赤く光ったように感じた。



ようやく書きたかった妖精の里編です!わーい

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