37 意思
「…はい?」
神無はなんてことないように言った。
「神のご意思です。秩序の神と交渉したそうで。力を貸す代わりに旅の行く末を見物させろと」
…えーっと。
どうすればいいんだろう。
別に反対はしない。しないのだが…。
「…神無がいないと、この神殿は困るんじゃ…?」
「私の後継者がいます。大丈夫です」
「…そうですか」
神無はそれ以上は用がない、とばかりにこの場から立ち去ってしまった。
と、入れ替わりにアヴェルがやってきた。
「アヴェル!」
「アクア、無事だったか」
「私は大丈夫…フラムさんと戦ったんでしょ?」
私の質問に、アヴェルが不思議そうに言った。
「それが、火の海に飛び込んだかと思うと、消えてしまった」
「…?」
アヴェルもよくわからなかったみたいで、二人で首をかしげていると、モアが全ての火を消し終えて戻ってきた。
「熱かったよーままー」
「うん、お疲れ様」
モアは私の中に入って休むことに決めたようだ。
すっとその姿が消えた。
「あ、そうだアヴェル。神無がね、旅についていきたいって」
「…なに?」
「神様の命令っぽいから、断るのは難しいかも」
「…そうか。まあ構わないが」
「なかなかに面白いことになっておるな」
「ランル…」
いつの間にか、ランルが頭上にいた。
軽い口調とは裏腹に、どこか顔は苦々しい。
「…アクアよ、お主に聞きたいことがある」
「何?」
「お主のもつ妖精が、奴のことを…フラムのことを、”妖精喰らい”などと言ってはおらんかったか?」
「…え?」
確か、あのテントで、モアがそんなことを言っていたような気がする。
私が頷くと、ランルはそうか、と憎々しげに呟いた。
「…やはり、あの力…」
「…ランル?」
ランルは風の威力を増させた。
「すまん、わっちにはやるべきことができた。先に帰る。」
そう言って、瞬間、居なくなった。
「…???」
「アクア、とりあえず俺達は宿にでも行くか」
「…ここ、すっごいボロボロだけどいいの?」
多分私が目的だったんだろうし、復旧作業くらい手伝わないといけないんじゃ?
「大丈夫だ。さっきここへ向かっている途中に巫女にあってな。ここのことは気にするな、先を行けと言われたんだ」
「…そっか、じゃあ、神無も一緒に行かないとね。神無を呼びに…」
「私はここにいます」
「うわぁ!?」
いつの間にか後ろに神無が立っていた。
心臓がバクバクする。驚かせないで欲しい。
「神殿に行って、神具等必要なものを持ってきました」
そう言って、神無はぽんぽん、と荷物の入った袋を叩く。
という訳で、宿へ出発です。
どうやら、私が眠っている間に宿はとっておいたらしく、そこから毎日神殿にモアと二人で通いつめていたらしい。
宿の部屋につくと、神無は袋からお香を取り出した。
「…どうしたの?」
「炊くのです」
「…何故に?」
「霊力を高めるためです」
「魔力じゃなくて?」
「はい」
要領を得ないので、アヴェルに聞いてみることにした。
アヴェルはああ、とわらって
「巫女が持つ力は神に侵され続けるから神聖なモノへと変わってるんだ。魔力から邪なモノが取り払われたもの、それが霊力。つまり、とても純粋で強い力だ。どちらかといえば、ホーリーの持つ力は霊力のそれに近い」
「えーっと、つまり、魔力は人間が持つ力、霊力は神が持つ力で、神に近い存在であればあるほど、魔力が浄化されて霊力に近くなる、とそういうこと?」
そうだ、とアヴェルは頷いた。
なんか、この世界もめんどくさいなぁ。
知らないことばかりだ。
私は溜息をついて、ベットに腰掛けたのだった。




