35 再び
死体、反応しちゃだめ。
アれハチガう。チがうカラ。ダイジょウブだカラ。
アレハ、×××××ジャナイカラ。
「ああ、アクアさん、死体が苦手なんですね」
ぽい、となんてことないようにフラムさんは死体を放り投げた。
体が痙攣した。
あまりの酷さに、吐きそうになる。
「…やはり、わっちの見立ては正しかったようじゃの」
「ランル!?」
ランルが、風を纏い私達の頭上に浮かんでいた。
「居なくなってたし、てっきり帰ったのかと…」
「ああ、わっちも暇ではないので帰っていたのじゃが、嫌な予感がしてな。戻ってきたのじゃ」
フラムさんはランルをみて、それでも笑った。
その笑いに、嫌悪を覚える。
「女王ともあろうお方が、たかが騎士の反乱で出迎えてくれるとは。豪勢なことですね」
「ふん。たかが騎士ではないことはぬしも承知じゃろう。なぁ?騎士長よ」
「…騎士長って…」
それには、アヴェルが答えてくれた。
「騎士たちの長。女王と大巫女に次ぐ、No.3だ」
下っ端騎士と言っていたくせに。
私は、フラムさんを睨みつけた。
「どうして、言ってくれなかったんですか?」
「まだ貴方を信用した訳ではなかったのでね。ほら、今も敵同士だ」
後ろで、また爆発音。
巫女の間が、半分吹っ飛んだ。
「…おやめください。神殿が壊れます」
神無がようやく口を開いた。
言葉の端に、小さな怒りが見えた気がした。
そして、今まで黙っていたモアも、フラムさんを睨みつける。
「そなた、我の前に表すとはいい度胸だ」
「ああ、いたんですね、愚かな神の使いよ」
モアが殺気を隠すことなく放出させた。フラムさんはそれを笑って受け流し、私に向き直った。
「どうですか、アクアさん。この破壊をやめてほしかったら、僕のところへ来ませんか?」
「…なんで、私なんですか?」
私の問いに、フラムさんはくつくつと笑った。
…この人、ずっと笑っていて、気味が悪い。
「そりゃあ、あなたに惚れているから、とでも申しましょうか」
その瞬間、後ろで何かが動いた。
そして、金属音。
「アヴェル…っ!?」
いつの間にか、アヴェルとフラムさんが対峙している。
後ろで動いたのは、アヴェルだったらしい。
「ふざ、ける…なっ!」
「ふん。貴様もやはり同じか」
ぎりぎりと押しては押され、押されては押すという攻防が繰り広げられる。
アヴェルは、何かに怒っているみたいだった。
それが分からず、おろおろしていると、ランルは地に降り立ち、私に命令した。
「お前は、消火をしておくれ。水神のホーリーじゃ。お手の物じゃろ?」
私はこく、と頷き、モアと共に消火へいく。
見ると、ところどころに煙が立ち上っている。
私は、そちらへ向かって走り出した。
水を精蔵し、それを上からばらまく。できるだけ火があるところにのみ。水の防御膜で身を守りつつ、私は火の中に飛び込んだ。
「まま!?」
一緒に消火していたモアが驚いたように声をあげた。そりゃそうだ。ある意味、これは自殺行為だから。
でも、まだ中に人がいるかもしれない。
私は、火の中をくぐり抜け、生き残っている人たちを探しに突き進んだ。




