34 弱さ
「…どうして、アヴェルが…?」
私の声は震えていた。
今更だとは思っている。だけど、あんまり巻き込みたくなかった。
それに、リスクがあると風神はいった。
リスク――それは、なんとなくだけど、命に関わるものだと思う。
だったら、尚更、駄目だ。
「…駄目」
「アクア?」
「アヴェルが守り手になるのは、駄目」
神無は表情の無い顔で私を見つめ、首をふるふると横に振った。
「予言を変えることは認められません」
「…駄目。絶対、駄目」
「貴方の一存で決まることではありません」
「それでも、駄目!」
私はキッと神無を睨みつけた。
神無は何も言わず、私をじっと見つめ続ける。
「何を恐れているのですか?」
「…恐れて、なんか」
「誰かを失うことですか?」
「…うるさい」
「誰かを巻き込むことですか?」
「…うるさいって言ってる」
「それとも、あの時のように、誰にも――」
「黙れっ!!!」
神無の胸ぐらをつかみ、私は激昂した。
アヴェルが驚いたように私を見る。私は、気にしない。
嫌いになればいい。
そして、離れてくれればいい。
「お前が何を知っているのかはしらない。そんなの知ったこっちゃない。でもね、私はあの時のことを、誰かに話されるのは嫌。あれは私の問題だ。口を出すな」
「……貴方は、弱いですね」
神無は、胸ぐらをつかまれながら、それでも感情を表さず、静かに言う。
その言葉にじくり、と胸がいたんだ。
「そして、脆い」
「…うるさい」
私は神無から手を離し、壁にもたれかかった。
神無はまだ、じっと私と見つめている。
「傍にいるのに、見られない寂しさが、わかるわけ、ない」
言葉を区切って、自分に言い聞かせるように。
だから、私は、誰にも心を許さない。許したくない。
神無は私を見つめるのをやめ、溜息をついた。
「…貴方は、本当に、弱いです」
知ってるよ、そんなこと。
私が一番、よく知っている。
その時だった。
「また会いましたね、アクアさん」
「…え?」
後ろで、爆発音がした。
嫌な予感が、体中を駆け巡る。
後ろを、振り向いた。
「…フラム、さん…?」
そこには。
死体を抱えた、フラムさんがいた。




