32 神無
神無は全体的に白かった。
長くて白い髪がとくにそれを際立たせるし、巫女服も下のスカートのようなものの赤色をのぞけば、真っ白だ。
肌もとても白いし。
「貴方は、この世界の人間じゃない」
神無はその薄い唇を開いた。
私はビクリと震える。
「なんで、知ってるの?」
「私が、大巫女だからです」
なんてことない風に言われましても。
それ以上話そうとはしない。どうやら、無口の部類に入るらしい。
表情も乏しく、何を考えているのか分からない。
恐らく、何も考えていないのだろう。
「…アヴェルとモアは?」
「二人なら、この下の階層の巫女の間にいます」
「じゃあ、あわせて」
「駄目です」
即答だった。
私は眉をひそめた。
「どうして?」
「貴方が、呼ばれているから」
「誰に?」
「我が神に」
神、ということは、もしかして風神なのかもしれない。
「風神?」
「そうです、風神。会いたい、と」
私の予想は当たりだった。
神無はまた黙って、今度は私に背を向けた。
「付いてきてください」
神無は歩きだした。
私は慌ててそれを追いかける。意外と、早い。
私達はそれ以上言葉を交わそうとはせず、黙々と歩く。
数分くらい歩いただろうか。神無が止まった。
「ここです。神の間。ここに、我が神がいます」
柱が何本もたった、神聖な場所。
中央より少し後ろの方に、玉座に似たものがある。
神無は”神の間”にはいり、私の玉座の前に座るよう指示した。
私が素直にそれに従うのを見届けると、自分は玉座に座り、手を組んでお祈りをするポーズととった。
そして、目を閉じ、口を開く。
「連れてきました。我が神よ。お応えください。どうか」
数秒、神無は微動だにしない。
と、神無の白い神が銀色に光った。
その銀色は、私が今まで見た中で一番綺麗で輝いた銀色。
そして、ゆらりと神無は立つ。
開かれた瞳には、先ほどの感情のない薄紫ではなく、髪の色と同じ銀。
「…お前が、アクアか」
ぞわりと、悪寒。
それから、鳥肌。
まるで、自分よりも遥か高みにある”者”へ、対立したような――。
そんな、気分に陥った。




