29 ランル
若干後ずさりしつつ、中へ連れられた私はまず感動した。
「…凄い…」
風鈴の一人が自慢げに言う。
「この国の城は豪華なことで有名なのです」
へぇ、そうなんだ。
どこの世界に行っても、芸術品っていうのはいいもんだなぁ。
「っていうか、どこ行くの?」
「女王様のところです」
「…そう…」
一気に心が重くなった。
礼儀作法とか、あんまり知らないし、この違う世界となれば尚更だ。
と、アヴェルは苦笑して、
「いや、この国には礼儀作法など気にしなくていいぞ。なにしろ女王がアレだからな」
「?アレ?」
っていうか何気に心ん中読まない。
アヴェルは答えず、まあ気にするなということだ、とまた苦笑。
…なんなんだろう。
と、前にでっかい扉が現れた。
「ここの奥が我らが女王のいる間です」
風鈴の人たちはここで待っているらしい。
私は扉を開け、中に入った――と。
「コラっ無礼者っレディの裸を見るでないっ!あっちに行けぇ!」
「…はい?」
なんか、幼女が真っ赤な顔でバスタオル一丁で声を張り上げていた。
「無視するなぁ!わっちが誰だか知っておるのか!わっちは――」
「この国の女王でしょう。お久しぶりです、ランル女王」
ランルと言われた女王らしい幼女は、はた、とアヴェルの顔を見て、
「おお!アヴェルではないか!久しぶりじゃの!これこれ、わっちが何度も顔出しにこいといったのに、こんとはまったくのう」
嬉しそうにアヴェルを見てふんふん鼻歌を歌うランル。
「…アヴェル、本当にこの子が女王なの?」
まだ子供じゃない?
私が尋ねると、アヴェルはああ、と頷いた。
ランルは(ない)胸を張って、ふふん、と威張る。
「わっちこそこのアネモスの女王、ランルじゃ!わっちは人気者の女王なのだぞ?お城を抜け出してお忍びで街にいったら、民はわっちにお菓子をたっくさんくれるのじゃ!」
…それはただ単に子供を甘やかしているだけなのでは?
と思ったけど言わないことにした。
「でもアヴェル。こんなのが女王で本当に国成り立つの?」
「ああ。…この人は聡い。だから、あどけなく振る舞い、油断をさせて逆臣を落とす。そしてそれを気付かせない。もちろん、気づいている奴らもいるけどな。この人の聡明さに。重臣はこの人を敬うし、逆臣はこの人を邪魔に思う」
「…へぇ」
つまり、凄い女王なのか。
その凄い女王ことランルはくるくると回り(何してんだ)、はた、と気づいた。
「そうじゃ、忘れていた。大巫女似合いに行け」
「まあ、神殿には行く予定だけど…」
私が言うと、ランルは嬉しそうに頷いた。
「そうか。なら尚更好都合だな。わっちの風で送ってやる。少し待っていろ」
ランルは風で運んだらしい服に着替えて、にやりと笑った。
アヴェルが後ろでう、とか呻いてたのは…気のせい、だよねー?
「わっちの風邪は少し荒々しいからの。吐かないように気をつけろ」
その後、何かあったのかは記述したくない。
「っっっっっっっぷっはぁーっ!!!」
地面がこんなに恋しいとは思わなかった。
地面にペタリとへばりつく。アヴェルも同じようにへばりついていた。
ランルはくすくすと笑って
「なんじゃなんじゃ。この程度でへばりおって」
「いや…あれは荒々しいとかそういうレベルじゃありませんから…っ」
アヴェルが抗議しつつ、立ち上がった。
私も大きく息を吐いて立ち上がる。
ついたのは、神殿。
ギリシャ神話みたいな神殿だった。
「…おお…」
と、向こうに誰か倒れている。
誰だろうと思い一人で近づくと、赤色の巫女服をきた女性。
「…え…?」
私の頭が、それを認識することを拒む。
巫女服を染めているのは、血。
そう。
それは。
真っ赤な――――死体。
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