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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
それぞれの出会い編
28/47

26 事情



 

 宮殿のある首都デルラは、ここから馬車モドキで3日というところらしい。


 荷物をまとめて、その馬車モドキのあるところまで行く。


 その馬車モドキの馬の代わりは、ラントルという綺麗な銀色の鬣を持った馬よりも1回り大きく、とても可愛い獣だった。


「…可愛い…」


 私が呟くと、アヴェルが苦笑しつつ、イーリスもそんなことを言っていたな、と答えた。


 イーリスはこの国に残るようにアヴェルが苦労して言いつけた。行く行く私も行くーっ!と駄々っ子に最後なっていたが、アヴェルがお前の服はいろんな人が買うだろう?その人たちに迷惑をかけるつもりか?と諭し、ようやくぶすっとした顔で見送りをした。


 もし今度この街に戻ってきたら、イーリスに死ぬほど謝って、それから、お酒を飲みに行こう。


 ついでに、モアは今私の中で休養中だ。


 馬車もどきの乗り込み、出発した。結構揺れる。


 …そういえば。


「…ねぇ、どうしてアヴェルは私のことを何もきかないの?」


 何も知らなかったし、お金もないし、あんな所にいたし。


 アヴェルはんー、と考え、


「俺も何も俺のことを教えてないからな」


「…それは、そうだけど…」


「お前が『何も教えてくれないのはアヴェルでしょ!?』って言ったとき、結構堪えたぞ」


 と苦笑した。


 …ああ、あの時は、激情にまかせて言っちゃったからなあ…。


「でも、気にならない?世話してるのに」


「…お前は自分のことを知って欲しいのか?」


 そういうわけではない、と思う。


 知って欲しい訳ではない。


 ただ。


「…隠し事をしているみたいで、嫌」


 アヴェルは驚いたように目を見開いた。


 私は、ちょっと赤くなって、アヴェルの方を見ないように前を向く。


 …恥ずかしい。


「…それに、旅にまで付いてきてもらってる。言わなきゃ、駄目だと思う」


「…そうか」


 私はぐっと腹に力を込めた。そうでもしないと泣いてしまいそうだったから。


 何かに、は知らないけど。


「…私ね、この世界の人間じゃないの」


「…!?」


「私、本当はこの世界で生きてたわけじゃない。前の世界で死んじゃって、それで、金髪女神様に転生させられたの」


 正確にいえば殺されて、だけど。


「金髪女神…まさか、秩序の神か…?」


「秩序の神?」


「世界の秩序を守る、四神のさらに上の地位にいる、神だ」


 …あの人そんな凄い人だったのか。


 まあ、人を殺したり転生させたり簡単に出来るから、そうなのかもしれないけど。


「でね、私の転生させられた理由。今、冥界で反乱がおきようとしているんだって。それで、反乱を止めなきゃいけないの。こちら側に死者とかあふれたら、世界が崩れるから」


 だから秩序の女神か。


 秩序を守るため、最低限の犠牲は厭わない。


「私が選ばれたのは、瘴気に耐性があったから。冥界に充満する毒みたいな空気。人を魔人とし、獣を魔獣とする、嫌な力。それに、耐性があったの。だから選ばれたの。反乱を止めるには、冥界にいかなきゃいけないからね」


「…そう、だったんだな」


「…あんまり、驚かないんだね」


 アヴェルはまたんー、と考え、今度は優しく笑った。


「納得がいった」


「…そっか」


 なんでか、体中が火照る。


 嬉しい、のかもしれない。


 アヴェルが、私を疑わなかったから?


 アヴェルが、私のことを信じてくれたから?


 分からない。


 わからないけど――体中が歓喜に震えた。


「それでね、神殿に行って四神の力がいるのはね、四神の力を守る守り手には、瘴気に耐える力が与えられるからなの。冥界で戦う仲間は多いほうがいいって、金髪女神様が言ったから」


「…なるほどな。話してくれて、ありがとう、アクア」


 その瞬間。


 泣き出してしまった。


 もう、一人で抱え込む必要はない。


 そう、思えたから。


 アヴェルは、私の頭を撫でて、ずっと付き合ってくれた。



やっとアヴェルにも事情が伝わりました!

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