23 妖精
悪寒、悪寒、悪寒――そして危険。
私の中で警報がガンガンと煩く鳴り響く。
フラムさんは笑い、モアは殺気をさらに増幅させる。
「…どういうこと…?妖精を殺すって…」
「…母様にはいつか説明しようと思っていました。我ら妖精は里に住んでおります。妖精の里。そこは誰も立ち入ることのできない妖精の…我らだけの国。そこでは妖精は姿をいつもゆらゆらと変え、あやふやな力の塊として存在しています」
モアが静かに語りだした。
「そなたたち人間は”妖精を造る”と解釈しているようですが、それは違います。たとえば水妖の作り方。コップに一杯の水を製造し、そこから生み出すのだと。しかし、実際には作られた水は我らの里とつながり、一種の門として機能しています。そして、そこからその水の作り手に一番魔力の波紋のあうものが選ばれ、その門を通ります。そなたたちが作っているのは妖精の入る器。もちろん、我らが入るだけの器をつくるのは並大抵の魔力ではできない。だから小規模なもの――動物などしか普通は作れない」
「モア、何を…」
「しかし我らは器に入るだけの力しか扱えない。魂までは入れない。だから普通妖精は死ぬことはない。その力は消えても、里に残った魂は消えないから。ですが母様。そなたは最上級の器を作ってくれた。それは、我の魂をいれるだけの器だった」
えーっと、つまり。
「モアは、もし倒されたら死んじゃうってこと…?」
「はい。ですが私は死なないだけの力を操れます。魂まで入れたのですからね」
「え、で、どうして今そんな話を…?」
モアの顔が引き締まった。
「この男が、火妖達を、我らの同胞をそのやり方で殺しているからです」
「…え?」
「最上級の器を与え、魂までこちらに引きずり込んで、殺す。そうやって我らの同胞は殺されていった。一番許せないやり方。だから我は許さない」
「クク、そこまで分かっていたんですね、水妖。だって、それ以外に妖精を殺す方法などないでしょう?」
「我らは神の眷属だ。それぞれの属性の四神の使い。四神に愛されたホーリーしか顕現をさせることを許されていない、神聖な者だ。それを大量虐殺するなど…覚悟は出来ておろうな」
「もしあなたたちが妖精の里に入れてくれれば、最小の犠牲で弾圧できたのですがねぇ。それに応じなかったのはあなたたちでしょう?」
「馬鹿なことを。そなたのような低俗な輩を妖精の里が侵入を許すと思うか」
「それがこういう結果を招いたんですがねぇ」
フラムさんは残念そうに――本当に残念そうに肩をすくめた。
――怖い。
この人は、狂っている。
「何故そこまでして、世界の罪を犯してまで、妖精の里を望む。手に入れたがる」
「あなたたちが大事に大事に守っているものをいただきたいんですよ、僕は」
「…何…?そなた、まさか…っ」
モアの顔が、怒りから驚愕へと変わった。
目を見開き、体が小刻みに揺れている。
「そなた、やめろ!それは、それは駄目だ!その罪は犯してはならない!どういう結果になるか想像くらい付くだろう!?」
モアは必死に叫ぶ。
…どういうことなのだろう。
モア達妖精が守りたいものを、フラムさんは欲している。
そのためにモアの仲間を殺している。
そういう、ことなのだろうか。
「ついていて、それでもなお僕は欲しているんですよ」
「…っ!!」
モアが走り出した。手が刀に変わり、フラムさんに飛びかかる。
――が。
「クク、舐められたものだ」
モアの体を一線。
炎が舞った。
ドサ、とモアの体が地面に伏した。
「モア!!」
「そ、なた…まさか…っ、妖精喰らいを…!?」
「殺すだけではもったいない。あなたたちの力は素晴らしい。おかげで僕はこんなにも強くなった!その点は感謝しますよ、愚かな神の使いよ」
フラムさんはモアに止めをさそうと、さっきモアをなぎ払った炎を待とう大剣を掲げた。
「さようなら」
「モアーっ!!」
私が足を踏み込み、フラムさんは大剣を下ろしたときだった。
カキン、と金属音がなる。
「そこまでだ」
私とフラムさん、二人の動きが止まった。
…この声…。
「…お前、また僕の邪魔をするのか!」
「黙れ」
フラムさんの剣を、斧で止めたこの男の人は。
「ア、ヴェル…?」
「遅くなって悪かったな、アクア」
アヴェル、だった。
妖精の説明!!最近のお話は楽しすぎますwその代わり全然神殿に行ってませんけどw




