19 雷狼
次の日。
アヴェルと話し合った結果、一週間はギルドで稼いで、それから旅にでようという話になった。
レベル9が二人とレベル8がいれば、一週間で普通の生活をするなら一生食べていける額を稼げるらしい。
支部へ行き、今度は2階に向かった。
2階は依頼所で、依頼をする側と依頼を受ける側で受付が違う。
「そういえば、戦闘部ってやついかなくていいの?」
「あれはパーティーとかを求めるときに必要なんだ。それに、”戦闘部”の掲示板がほら、あそこにあるだろ?」
アヴェルが指を指している方を見ると、たしかにある。
「あそこで依頼を見るけることも可能だからな。人それぞれだと思うが、俺はめったにいかない」
「ふーん…」
とりあえず掲示板の下に行って、いろいろ見てみた。
「あ、これいいかも。100匹近い大群の”雷狼”の討伐だって。ここから歩いて1時間ってとこだし。一人金貨10枚かーちょろいちょろい」
「ちょろいー」
モアが真似してのんびりと言った。どうやら暇ならしい。
「…お前まだ殺されかけたこと根に持ってるだろ…」
「えー、なんのことー?」
呆れた顔をしたアヴェルに私はすまし顔をしてみる。
アヴェルは溜息をつき、その依頼が書かれた紙を剥ぎ取って依頼所の受付にいく。
「じゃあ、コレを」
「何名様で行かれますか?」
「三名。アヴェルとモアとアクアで頼む」
「かしこまりました。ご武運を」
受付が終わると、アヴェルが戻ってきて、「行くぞ」といった。
はじめての依頼、なんかやる気出てきたなー。
初めてこの世界にきたときにいた森とは正反対の場所にも雷狼はいるらしい。
というか、ここも森だった。
「もしかして雷狼の生息地って森?」
「ああ、そうだ」
アヴェルが斧を構え、モアは水を近くに浮かせ、私はゆったりと剣を持ちつつぼーっと辺を見渡す。
ついでにここは森の中なので、凄く、そう凄く視界が悪い。
――が。
「”水の波紋”」
水の波紋というのは目に見えない程度の薄い水を私を中心に波紋のように広げ、気配や魔力を察知する魔法だ。
あ、そこだ。
「水月!」
雷狼がいた場所へ水月を落とした。
キャウンッという悲鳴が聞こえて雷狼が息絶える。
…ふ、あの時の恨み晴らしてやる。
やっぱ恨み残ってるんだなとかいうアヴェルの呟きは無視して、雷狼のいる場所に水月やら水の弾丸やらをぶち当てていく。
雷の属性は水の属性に強いとかそんなのは私とシャーマさんのときの戦いのように圧倒的な私の強さによってもはや意味はなくなっていた。
あの時の私と今の私は違うんだなぁ、としみじみ思う。
あの時は死を覚悟していたっていうのに、今は立場が正反対だ。
数分後、200匹近くいた雷狼の群れは全滅した。
「ままーおつかれさまー」
モアが癒やし系マスコットとしての役割と十分に果たしてくれる。
ああ、可愛いなぁもう。
水色の髪はふわふわで、撫でているととても気持ちいい。
「あー、この後ってどうする?」
「ギルドにいって任務完了を知らせなくてはな。あとは休めばいいんじゃないか?」
りょうかーいといってちょっとゴロゴロと森の中でモアと戯れる。
が、なんかアヴェルが考えている。
「どしたの?」
「いや、100匹と書かれていたのに200匹もいたからな。この異常な多量発生はどういうことだろうと思っただけだ」
「うーん、でも倒せたからいいんじゃない?」
「…まあ、そうだな」
アヴェルが腑に落ちないまま頷いたときだった。
ガサ。
まだ残党が残っていたのかと私達は身構えて――
あっ、と私は声を出した。
「フラムさん!」
「アクアさん、やはりあなたでしたか…よかった、ご無事だったんですね」
何故かフラムさんが部下っぽいのを引き連れて、森の中に入ってきていた。
「雷狼なら全部倒しちゃいましたけど」
「それは…さすがですね。素晴らしいご活躍です」
そのとき、「やっぱりフラムというのはお前か」というアヴェルの少し苛立った声がした。
「…ふん、アヴェル、貴様まだ生きていたのだな」
「生憎とお前が朽ち果てるまで死ねないのでな」
「貴様程度がこの水神のホーリーを連れにするとはどんな小賢しい知恵を使った?」
「お前の知ったことではない」
えーっと。
なんで睨み合ってるの?
モアは怖くなったのか私の影に溶け込んじゃうし。
「なんか、仲…悪い、です、ね…?」
一応声をかけてみる。
フラムさんはアヴェルに対してのとはうって変わって
「ちょっとした犬猿の仲ですよ」
ちょっとじゃないと思いますけどね?
「アクア、もう行くぞ」
「え?う、うん…」
アヴェルが私の手を引っ張り身を翻した。
良くわからないまま、とりあえず森を後にした。
やっと三角関係ですね!w




