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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
それぞれの出会い編
19/47

17 獣人



 先にどうぞ、と言われたので遠慮なくぶちこむことにした。


「”水月”!」


 水の球体がシャーマさんを襲う。

 

 ――が。


「ッ!?」


「ふむ、中々に素晴らしい威力だな。質もいい。だが私とやりあうには足らない」


 水月が蒸気に変わり、散った。


「一瞬で、水月を蒸発させた…?」


「良くわかったな。私は炎神のホーリーだから炎を操ることなど朝飯前だ」


 ニヤ、とシャーマさんが笑う。


 本来ならば水神のホーリーである私の方が有利なはず。


 だけど、余りにもシャーマさんが強いがゆえ、そんなのは不利にも有利にもならない。


 剣を片手に私は飛び上がった。


 そして、水を放つ。


「ふん、効かないのが分からないのか?」

 

 その水が、水蒸気に変えられ――私はにやりと笑った。


 水蒸気は視界を濁らす。


 例えそれが一瞬だとしても、隙になる。


「成程!」


 シャーマさんが嬉しそうに笑って、私が水蒸気に隠れて斜めに切りかかった剣を受け止める。


「…白羽どりとか初めて見たんですけど」


 ちょっと呆れてしまった。万能すぎる。


 シャーマさんはくつくつと笑って、「転換コンバート」とボソリと呟く。


「…!」


 ピョコン、とシャーマさんの頭から耳が生え、同時にお尻から尻尾が映える。


 元々つり目気味だった目がさらに上がり、金色の瞳には獣のように線が現れる。


「…獣人…」


「私は”狼族”のホーリーでな。狼族特有の瞬発力と力に加え炎を操る力をもって生まれたんだ。この私を倒せるか?」


 多分、この姿で戦ってくれるってことは、私は一応認められたんだろう。ある程度は。


 獣人についてはアヴェルから前聞いた。


 獣の姿と半獣の姿の両方しか取れないものが多く、完全な人型になるには多大な魔力を必要とし、人型になれる獣人は必然的に強者だと。


 その中でも狼族はかなりの高等な種族だ。


 ゾクゾクした。


 嬉しくてたまらなかった。


 そう、私は戦いたかったのだ。


 こういう、強い相手と。


 剣道をやっていたとき、誰も私に勝つことは出来なかった。いつも私の圧勝で、全然物足りなかった。

 

 戦いたい。


 そして、勝ってやる。


「いい目だ」


 シャーマさんが私を褒める。


 私はもう一度飛び上がった。今度は、先ほどよりも上へと。


 一気に振りかざし、白羽どりなんて出来ない威力をぶつけてやる。


 ――が。


「ッッッ!?」


 シャーマさんが私と同じ位置まで軽くジャンプしてきた。そして、私の腹に蹴りを入れる。


「ぐ、ぁ…っ!?」


 床に勢いよく叩きつけられ、意識が飛びそうになりつつも、必死に意識を保つ。


「いい根性だ」


「おい!シャーマやめろ!アクアが死ぬぞ!」


 ビク、と私の肩が跳ねる。


 …この戦いを、…やめる?


 ギリ、と剣を持つ手が強くなる。


 ――冗談じゃない。


「アヴェル、いい。私戦う」


「でも、お前じゃ無理だ!」


「…でも、戦う」


 戦いを辞めるのを決めるのはアヴェルじゃない、私だ。


 ゆらりと立ち上がって、シャーマさんを睨みつける。


「あなたも、床に叩きつけてあげます」


「望むところだ」


 私の剣とシャーマさんの手刀がぶつかった。シャーマさんになぎ払われて宙を舞ったが、くるくると回転して衝撃を抑えつつ着地する。


「水地獄」


 シャーマさんの床下から水の竜巻のようなものがはい上がってくる。


 それはシャーマさんを包み、ぐるぐると回転する。


 しかし。


「効かないと言っている」


 水地獄でさえも、一瞬にして水蒸気に変えられた。


 ――けど、水地獄はただのめくらまし。


「後ろ、取りました」


「な!?」


 剣を思いっきり振りかぶる。


 首に衝撃があたって、シャーマさんは倒れた。


「はぁ、…はぁ…っ」


 …私、勝った…?


 充実感が体を心地よく満たす。


 ああ、勝った…この手で。こんな強い敵に。


「中々だった」


 さすがシャーマさん。峰打ちだったとはいえ容赦を加えなかったのに、すぐに立ち上がった。


「認定試験は合格だ。レベルは9というところか」


「…いいのか?異例だぞ?」


「構わないさ。私にここまでの打撃を与えたものはいないしな」


 どうやら私は異例でいきなり9かららしい。


 後で聞いたら、普通よくて3からなのだそうで。


 と、そのとき。


「ままーっ!!」


 私のお腹に衝撃があたる。


 その衝撃に耐え切れず後ろに転んだ。


「も、あ…、ちょ、離れて…」


「もあねもあね!れべる8だって!ほめてほめてー」


「あーうん、凄い凄い。だから離れようか」


 モアを押しのけてよっと立ち上がった。


 じゃあ、認定試験も終わったことだし。


「宿に帰りますか」


「だな」





 


 

アクアの戦闘狂癖が少しずつ開花(?)し始めてきてます。

っていうかほんといつ神殿に出発するんですかね…?w

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