17 獣人
先にどうぞ、と言われたので遠慮なくぶちこむことにした。
「”水月”!」
水の球体がシャーマさんを襲う。
――が。
「ッ!?」
「ふむ、中々に素晴らしい威力だな。質もいい。だが私とやりあうには足らない」
水月が蒸気に変わり、散った。
「一瞬で、水月を蒸発させた…?」
「良くわかったな。私は炎神のホーリーだから炎を操ることなど朝飯前だ」
ニヤ、とシャーマさんが笑う。
本来ならば水神のホーリーである私の方が有利なはず。
だけど、余りにもシャーマさんが強いがゆえ、そんなのは不利にも有利にもならない。
剣を片手に私は飛び上がった。
そして、水を放つ。
「ふん、効かないのが分からないのか?」
その水が、水蒸気に変えられ――私はにやりと笑った。
水蒸気は視界を濁らす。
例えそれが一瞬だとしても、隙になる。
「成程!」
シャーマさんが嬉しそうに笑って、私が水蒸気に隠れて斜めに切りかかった剣を受け止める。
「…白羽どりとか初めて見たんですけど」
ちょっと呆れてしまった。万能すぎる。
シャーマさんはくつくつと笑って、「転換」とボソリと呟く。
「…!」
ピョコン、とシャーマさんの頭から耳が生え、同時にお尻から尻尾が映える。
元々つり目気味だった目がさらに上がり、金色の瞳には獣のように線が現れる。
「…獣人…」
「私は”狼族”のホーリーでな。狼族特有の瞬発力と力に加え炎を操る力をもって生まれたんだ。この私を倒せるか?」
多分、この姿で戦ってくれるってことは、私は一応認められたんだろう。ある程度は。
獣人についてはアヴェルから前聞いた。
獣の姿と半獣の姿の両方しか取れないものが多く、完全な人型になるには多大な魔力を必要とし、人型になれる獣人は必然的に強者だと。
その中でも狼族はかなりの高等な種族だ。
ゾクゾクした。
嬉しくてたまらなかった。
そう、私は戦いたかったのだ。
こういう、強い相手と。
剣道をやっていたとき、誰も私に勝つことは出来なかった。いつも私の圧勝で、全然物足りなかった。
戦いたい。
そして、勝ってやる。
「いい目だ」
シャーマさんが私を褒める。
私はもう一度飛び上がった。今度は、先ほどよりも上へと。
一気に振りかざし、白羽どりなんて出来ない威力をぶつけてやる。
――が。
「ッッッ!?」
シャーマさんが私と同じ位置まで軽くジャンプしてきた。そして、私の腹に蹴りを入れる。
「ぐ、ぁ…っ!?」
床に勢いよく叩きつけられ、意識が飛びそうになりつつも、必死に意識を保つ。
「いい根性だ」
「おい!シャーマやめろ!アクアが死ぬぞ!」
ビク、と私の肩が跳ねる。
…この戦いを、…やめる?
ギリ、と剣を持つ手が強くなる。
――冗談じゃない。
「アヴェル、いい。私戦う」
「でも、お前じゃ無理だ!」
「…でも、戦う」
戦いを辞めるのを決めるのはアヴェルじゃない、私だ。
ゆらりと立ち上がって、シャーマさんを睨みつける。
「あなたも、床に叩きつけてあげます」
「望むところだ」
私の剣とシャーマさんの手刀がぶつかった。シャーマさんになぎ払われて宙を舞ったが、くるくると回転して衝撃を抑えつつ着地する。
「水地獄」
シャーマさんの床下から水の竜巻のようなものがはい上がってくる。
それはシャーマさんを包み、ぐるぐると回転する。
しかし。
「効かないと言っている」
水地獄でさえも、一瞬にして水蒸気に変えられた。
――けど、水地獄はただのめくらまし。
「後ろ、取りました」
「な!?」
剣を思いっきり振りかぶる。
首に衝撃があたって、シャーマさんは倒れた。
「はぁ、…はぁ…っ」
…私、勝った…?
充実感が体を心地よく満たす。
ああ、勝った…この手で。こんな強い敵に。
「中々だった」
さすがシャーマさん。峰打ちだったとはいえ容赦を加えなかったのに、すぐに立ち上がった。
「認定試験は合格だ。レベルは9というところか」
「…いいのか?異例だぞ?」
「構わないさ。私にここまでの打撃を与えたものはいないしな」
どうやら私は異例でいきなり9かららしい。
後で聞いたら、普通よくて3からなのだそうで。
と、そのとき。
「ままーっ!!」
私のお腹に衝撃があたる。
その衝撃に耐え切れず後ろに転んだ。
「も、あ…、ちょ、離れて…」
「もあねもあね!れべる8だって!ほめてほめてー」
「あーうん、凄い凄い。だから離れようか」
モアを押しのけてよっと立ち上がった。
じゃあ、認定試験も終わったことだし。
「宿に帰りますか」
「だな」
アクアの戦闘狂癖が少しずつ開花(?)し始めてきてます。
っていうかほんといつ神殿に出発するんですかね…?w




