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そんな私の別人生。  作者: 久留間水樹
それぞれの出会い編
14/47

12 モアの力




「アヴェルーただいまー」


 私が宿の扉を開けると、二つの声が返事をした。


「遅かったな、どこ行ってたんだ?」


「ままー、もあねーおなかすいたー」


 モアとアヴェルはベットに腰掛けていたけど、モアは私の姿を見つけると、その場からジャンプした。危なっ。


 飛びついてきたモアをあやしながら、アヴェルの横に腰掛けた。よじよじとその上にモアがよじのぼる。


「イーリスって心配症で豪酒なんだねー」


「…酒場に行ってきたのか」


 アヴェルが呆れたように声を出した。


「うん、イーリスが付き合えって」


「大変だったろ、あいつの相手。一方的に喋りまくって酔い潰れるからな…」


 多分よく付き合わされているのだろう。アヴェルは遠い目をしながら言った。


「うん。イーリスが酔いつぶれちゃったから、どうしようと思っておろおろしてたら、炎神のホーリーに助けてもらったの」


 モアが私の膝の上で寝息を立て始めた。…あれ?私の体内で寝なくていいのかな。


「…炎神のホーリー?」


「フラムって言ってね。騎士の下っ端なんだって。イーリスを店までおぶってくれたんだよー。助かったー」


「…そうか」


 …?


 なんとなく、だけど。


 アヴェル、怒ってる?


「…もう遅くなってしまったからな。今日は魔法の練習は無理だろう」


 アヴェルは私に背を向けて立ち上がった。


 何か、怒らせること言っちゃったかな…?


 チクリ、と何故か胸が痛くなった。




 次の日。


「まーまー、まーまー、おーきーてー」


 ゆさゆさ。ゆさゆさ。


 ううー、モア、揺らさないで…


「…二日酔いか。お前も結構飲んだんだな」


「イーリスに無理やり口に詰め込まれたりしたー。あといっきとか…」


 ぐらんぐらんとする頭を押さえつつ、ベットでごろごろとする。うう、気持ち悪い。


「あの馬鹿…」


 アヴェルが溜息を付いた。


 そして、がさごそという音が聞こえる。


「どこか行くの?」


「何か食べられるものとネルワの皮で作った湿布を買ってくる。すぐもどるからな。安心して寝ていろ」


「ねるわ?」


「この国の西の方に生息する耳が鋭く尖ったのが特徴の小動物だ。それの皮が二日酔いによく効く」


 ふーん。


「ありがとー」


「当然のことだ」


 そうかなー?


 アヴェルは出ていった。…で、モア。君はいつまで私を揺さぶっているのかな?


「ままー、もあ、ままの気がはれることしてあげる!」


 ようやくモアは私の上から居なくなった。ありがと。でも何をする気?


 アヴェルの迷惑にならないよう宿を壊したりとかはやめてねー。


 モアは私の目の前に立ち、手を宙へ浮かせる。


”水の踊りウォーター・ダンシング”」


 瞬間、モアの周りに水の塊が浮かび、それらは何かしらの形を取ってモアの周りをくるくると踊りだすダンシング


 …おお。


 多分形作っているのはこの世界の動物たちなんだろうな。あ、ライトニング・ウルフいる。


「えへへー、どうー?どうー?」


「うん、すごい。誰に教わったの?アヴェル?」


「んー?今もあが考えた!」


 にっこり笑顔、百点満点です。


 自力で魔法を作るとは、さすがウィンディーネ。


「もあねー、なぁんにも分かんないの。まほーとか、じゅもんとか。でもねー、あーこういうまほーほしーなーって思ったら、うかぶの。なんてとなえればいいのかなーとか、どうやってまりょくをねるのかなーとか。もあは、うぃんでぃーねだから!」


 そういえば、と思い出す。


 ウィンディーネを作る前に、アヴェルが言った。


 ウィンディーネの知識には、作り手の知識が反映されると。


 だから、モアが魔法を全然知らないのは、私が全然魔法やこの世界のことを知らないからなのかも。


 …アヴェルに、いろいろ教えてもらおうっと。


 そのとき、アヴェルが帰ってきた。


「…これ、モアが?」


 踊っている水の動物たちを指さして私に尋ねる。


 私はこく、とうなづいた。


 アヴェルが驚いて、モアを見つめる。


 当のモアは気づいていないようで、ぶーんとか言いながら水の動物を消していた。


 と、額に冷たいものがあたった。


「ひゃっ…!」


「最初は冷たいだろうが我慢しろ。じきになれる」


 アヴェルがいつのまにかそばに近づいて私の額にネルワの湿布をはったらしい。


 …自分で貼れるのに。


 アヴェルはさらに固形物を取り出し、おわんに入れて、その上からお湯を注ぎ込みくるくるとかき混ぜた。なんだかお粥みたいに見える。茶色いけど。


「何、これ?」


「ジャンクの肉と野菜を細かく砕いて、混ぜて干したものだ。固形物のままでも食べられるし、お湯をかければ病人とかの食べ物にもなるスグレモノだ」


「…ジャンクって?」


「肉食の、中型の動物だ。ふさふさしていて意外と可愛いんだ」


 …ああ、やっぱり。


 沢山、知らないことがある。


 私はそれを受取りながら、アヴェルに言った。


「ねー、アヴェル」


「なんだ?」


「あとでもっと、この世界のこと教えて」


 アヴェルは分かった、と言って、モアにも買ってきた食べ物を与えた。



 






モアの力の片鱗、やっと出せました!

ウィンディーネは実はいろいろと謎の妖精だったりします。

少しずつアヴェルとアクアの距離も近づいている…かな?

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