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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場12−4

 リアは右手を口元へ持っていき、しばらく考えた後、「私としては信じ難いが、やはりその可能性が高いと考えるしかなさそうだな。敵軍の魔法使いは、魔法の特性をよく理解しているようだ。でなければ、自軍の兵士を敵軍内部へ送り込もうなどという作戦を思いつかないだろう」と結論を出した。

 将軍の考えの方に賛同したらしい。貴族出身であるほかの隊長たちよりも、柔軟に物事を考えるようだ。自分たちの考えに固執する彼らとは全く違う。やはり、そこが貴族の中でも変わり者と思われている部分でもあるのだろう。

 貴族から変わり者として扱われる分、平民たちからの支持は集めているようだ。将軍のその内の一人であるらしい。リアに対して絶対的な信頼を寄せているのがよくわかる。

「どこに間者が潜んでいるかわからない以上、これまで以上にリア様には周囲に気をつけて行動してください。食事も、信頼できる者から受け取ったとしても注意してくださいますよう、お願いいたします」

「……わかった」

 駐屯している軍内部を自由に歩き回ることが好きなリアにとって、自由に動き回れないことは窮屈に感じるようだ。それでも自分の立場をわかっている以上、わがままを通すことはダメだと幼いながらも理解しているらしい。

 将軍もリアのその心情をわかっているようだ。ちらりと将軍の視線がショウに向けられ、目が合ったショウはその眼差しが訴えている内容を悟って、こくりと頷いて返事する。リアが勝手な行動を起こさないように監視してくれ、ということだろう。

「最初は弓兵部隊。次は剣士部隊。少しずつ本営に近づいていますね。こちらになにかしらの圧力をかけようとしているのは間違いありません。やはり、敵の目的はリア様の可能性が高いです」

「私もその可能性には同意する。ノース=カイマートはこの戦争に勝つために、私を殺したくて殺したくてたまらないようだ」

 ヴェスラ草原での戦争で敗走しているノース=カイマートとしては、このフレスト近くでの戦争にはなにがなんでも勝利したいのだろう。そのため、魔法の特性もしっかりと理解した上で、リアの魔法を掻い潜る方法で兵士を潜入させたと考える方が自然だった。

 最初は自分の魔法の精度を信じて将軍の言葉に懐疑的だったリアだが、今回もリアの探査の魔法に引っかかることなく兵士を殺害されたことによって、なにかしらの方法で潜入しているという将軍の考えに賛同せざるを得ないようだ。

 ショウも話を聞いていて、将軍の考えを支持するつもりでいた。

「しかし……、軍の中に敵兵の気配は感じられないのだ。どういうことだ?」

 リアの不思議そうな呟きに、将軍は少しだけハッとした表情を見せ、今度は彼がなにかしら考え込む仕草を見せた。

 それを見たリアが「どうしたのだ?」と訊ねると、将軍はリアに視線を向け、「なんでもありません」と答えた。

 なんでもないようには見えないのだが、将軍は今の段階でこちらに自分の考えを伝えるつもりはないらしい。リアもそれがわかったようで、それ以上の追求はしなかった。

「こちらでも軍内部に間者が紛れ込んでいないか、引き続き調査を行います。リア様はなるべく結界魔法を施した自分の部屋から出ないようにお願いします」

「……仕方あるまいな」

 二人目の兵士が殺害され、間者がどこに潜んでいるかわからない以上、それがリアを守るための一番の予防策になるだろう。ショウも、今までよりも周囲を警戒しないといけない。

「ショウはずっとリア様の傍に。片時も離れぬようにな」

「わかりました」

 そこで会議室での話が終わり、リアが結界魔法を解く。会議室の外から伝わってくる騒がしさから、兵士が殺害された事実をほかの隊長たちが知ったようだ。最初は箝口令が間に合ったようだが、二回目は間に合わなかったらしい。

 会議室の天幕の向こうで、将軍に対して意見を求めて声をかけてくる隊長の問いかけが聞こえてくる。結界を張っていたことによって、その声はこちらには届かなかったようだ。

 状況の説明を問いかけてくる声を聞きながらリアが将軍に目をやると、彼は「ほかの隊長たちに説明をして参ります。自分たちの部隊の兵士に注意を促してもらうつもりです」と言ってきた。

 箝口令が間に合わなかった以上、隠し通すのは難しいだろう。状況を説明して、この場を治めなくては騒ぎが大きくなっていくだけだ。

 情報を隠しすぎて隊長たちが懐疑的になってしまえば、ノース=カイマートが攻めてきた時に統率が取れなくなる可能性がある。

 将軍の言葉に、リアは「その方がいいだろう」と答えた。

「兵士たちが疑心暗鬼になるのは避けたいところだが、致し方あるまい。これ以上、被害者を増やさないことを第一に考えなくては」

 リアは杖を手にしたまま椅子から立ち上がり、空いている方の手で空中に人差し指で小さく丸を描く。

 なにをしているのだろう、とショウが思って見ていると、その丸を描いた場所から突然一枚の紙らしきものが現れた。

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