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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場11−2

 ーーやっぱり、一緒に育った双子なんだな……

 考え込む様子のローゼムを見て、ショウはそう思った。レンゼムのことをよくわかっている。ローゼムは生まれた時から一緒にいたからこそ、片割れのことをリアやショウよりもよく理解していた。

「はい。兵士の不審死に兄が関わっているのは間違いないんですよね? 私は、兄が手にかけたのではないかと思っていますが間違いないですか?」

 的を射た質問に、リアは小さく「……そうだ」と答える。

 レンゼムの遺族として、リアたちの話は認めたくない部分があるかもしれないのに、ローゼムは疑うことなく受け入れ続けている。

 ちらりとリアを見ると、その赤い瞳はローゼムを見つめ続けていた。相手がここまで自分たちの話を冷静に聞いてくれるとは思っていなかったのかもしれない。それはショウも同じ気持ちだった。

「兄は心底サウス=リアクターを嫌っていましたが、一介の兵士を手にかけるほどの恨みだったのかは疑問に思っているんです。サウス=リアクターに住む人々のすべてが、母を追い詰めたフィッツラルドの人間と同じではないとわかってはいたと思っています。それでも、兄はサウス=リアクターの兵士を手にかけなければならなかった。その理由があるはずなんです」

「……」

 ローゼムの言葉にリアは口を閉ざした。

 リアは自分が恨まれているばかりに、レンゼムは兵士を殺害したと考えていた。しかし、ローゼムはそれだけが理由じゃないと言う。もし……、もし本当にローゼムが言う通り、ほかに理由があるのだとしたらリアはその理由を知りたいと思ってしまった。

 脳裏に、レンゼムの笑顔が思い浮かんだ。しかし、その笑顔は目の前にいるそっくりなローゼムと重なって消えた。

「サウス=リアクター軍に潜入し、その国の人々と直に触れ合って、自分の憎しみを向ける相手が違うと理解したと思うんです。それでも無関係な兵士を手にかけたということは、なにかしらの理由があったのではないかと思うんですけど、あなた方はその理由を知っていますか?」

「「……」」

 リアが視線を向けてきたのがわかって、ショウは思わずそちらを見てしまった。困惑しているような赤い瞳と目が合い、ショウは少しだけ眉を寄せた。

 レンゼムが最期に告げた言葉を言っていいのか悪いのか。その疑問が一瞬で脳裏を駆け巡った。言ってしまえば、ローゼムは自分を責めたりするだろうか。

 でも、この人なら事実を受け止められるのではないかと思ってしまった。たった一人の家族である兄を手にかけたショウを責めることをしないこの人なら、レンゼムが置かれていた立場を理解できるのではないかと。

 リアはショウの雰囲気で、なにかを知っていると察したようだ。

「……ショウ、お前は知っているのか? レンゼムがサウス=リアクター軍内で強行に及んだ理由を」

 リアの問いかけに、ショウは唇を真横に引き結ぶ。だけど、長く迷っているように見えて、答えは簡単に出たかもしれない。

「レンゼムは、お前だけになにかを言ったのか?」

 彼が自分ではなくショウを選んだという事実に、リアは驚きを隠せないようだ。ショウとしては、リアはレンゼムの最期の言葉を聞いたら、なにがなんでもその願いを叶えようとしただろう。リアの立場であればそれが可能となる。

 しかし、リアがそれを行った場合、レンゼムのしたことは遺族に知られることとなっただろう。それを避けるためにレンゼムは最期の言葉をショウに託した。

 そして、その後に戦場の最前線に立ったショウは、レンゼムのことを記憶の片隅に追いやった。

 この街でローゼムに出会うまで、ショウは完全にレンゼムのことを忘れていた。ローゼムの顔を見た瞬間、レンゼムの最期の言葉を思い出したのだ。

「ショウ、答えろ。レンゼムはお前になにか言ったのか? お前は私の知らないなにかを知っているのか?」

「……」

 口を閉ざして俯いたショウに、リアはさらに言葉を重ねた。

「答えろ、ショウ。お前はなにかを知っているな?」

 次は確信を持って訊ねてきた。ショウがなにかを知っているのだと、リアは確信を持ってしまった。

 その場にいる全員の視線がショウに向けられ、意を決したショウは顔を上げてローゼムとリアの二人を交互に見た。

「……知ってる」

 ショウの答えに、リアはなにも言わずに強い眼差しで見つめ、ローゼムは小さく息を呑んだ。


「オレは、レンゼムがサウス=リアクター軍の兵士を手にかけなければならなかった理由を知ってる」


 レンゼムとしても葛藤した故の行動だったはずだと、ショウは思っている。悩みに悩んでの強行だったのだと。

「レンゼムだって悩んだと思う。でも、自分の命よりも大事なものがあったから、レンゼムは無理を承知で行動を起こした。最終的にオレに斬られることになるとわかっていたと思う」

 いや、レンゼムは斬られることを望んでいたはずだ。それですべてが終わり、すべてを守れると思っていたはずだ。自分の命を差し出すことで、結果的にレンゼムは最も大事なものを守り抜くことに成功した。

「レンゼムがサウス=リアクター軍に潜入した目的はただ一つ」

 ショウはまっすぐにローゼムを見た。


「あの戦争の勝敗を左右する存在である、リア=ヴェアールの殺害だった」

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