表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/120

信頼と裏切りの戦場10−4

「ーーっ!」

 あまりにも一瞬の出来事で驚きに声が出なかった。魔法陣が目の前を通った一瞬だけは眩しさを感じたが、感じた違和感はそれくらいだった。探査の魔法の時のように、身体を魔力が走り抜けたような感覚もなかった。

「無事にかかったようだな」

 驚きで固まってしまっているショウを頭の先からつま先まで見つめていたリアが、目の前で満足そうな顔で頷いている。ショウには前と後で違いがわからないのだが、リアの目には違いがわかるらしい。

 どうやら、無事に守護の魔法がかけられたようなのだが、特に身体に違和感はない。両手で拳を作ったりして動かしてみたものの、本当に魔法がかけられたのかわからないくらいだ。

「この私がかけた守護魔法だから、弓や剣などは簡単に弾く。傷一つつくことはないだろうな。本当は兵士全員にかけたいのは山々だが、一つ一つの守護魔法にかかる魔力は大したことない量であっても、人数的に私の魔力が尽きてしまう可能性が高いから難しいな。一日に何度も探査の魔法を使うことを考えると、もしもの時に備えて魔力は温存しておいた方がいい。いつ、ノース=カイマートが攻めてくるかもわからないしな。私の魔力が枯渇することだけは避けなくてはならない」

 そこで、この空間に入ってずっと沈黙を守っていた副官が初めて口を開いた。

「リア様の存在に気付いたノース=カイマートが、リア様の魔力を削るために動き始めたのではないですか?」

 その言葉に、リアが少し考え込むような仕草を見せた。右手を口元に当てて、なにやら思案顔になる。

「確かに、可能性はある。敵国の魔法使いの魔力が自国の魔法使いよりも高いと判明した場合、敵国の魔法使いの魔力を削るか殺害してから戦争を仕掛けるのが一番勝率が上がる。ノース=カイマートがその作戦を選んだ可能性が高いと考えてもいいかもしれない」

 副官の一言で、この場の空気の流れが変わってきたのをショウは感じた。ただでさえ結界魔法で張り詰めていた空気だったのに、それに加えて緊張感が漂ってきた。

 将軍が副官に向けていた視線をリアへと向けた。

「だとしたら、兵士が殺されたのはこちらに間者が忍び込んでいることを教え、リア様が警戒のために魔力を使うように仕向けた可能性がありますね。だとしたら、軍内部に間者が入り込んでいる可能性は高いです。先ほどのリア様の探査の魔法になぜ引っ掛からなかったのかは気になるところですが、こちらも怪しい動きをする人物がいないか警戒します。リア様もお気をつけください」

「二人もな。この軍はお前たち二人が揃っていなければ機能しないから、お前たちも充分に気をつけろ。どちらか一人でも欠けるのは許さんぞ」

「俺がいなくなっても、リア様がいらっしゃったら軍はまとまり機能します」

「縁起の悪いことを言うな。軍のトップはお前だ。私ではない」

 そう言ったリアが、魔鉱石がついていない杖の先端で地面を軽く叩くと、微かな金属音が響いて張り詰めたような空気が一気に霧散した。途端に周辺からのざわめきが耳に入ってくる。どうやら、リアが結界魔法を解いたようだ。

「この話はこの場にいる四人だけの秘密だ。他言無用にな」

 リアの言葉に、将軍と副官、ショウがこくりと頷く。

 そのまま将軍のスペースから出たリアを追ったショウは、途端に全身にグサグサと視線が刺さったのがわかった。

 本営にいた隊長たちは、将軍のスペースに結界が張られていたことに気づいていたようだ。その結界内に、一番新米の隊長であるショウが自分たちを差し置いて入ることを許されていたのが不満であるらしい。こちらを見る目付きでわかる。こちらを見ながらヒソヒソと話し、リアが視線を向けるとびくっと肩を震わせてそっぽを向いた。

 リアはその反応になにか言いたげな雰囲気を出していたが、結局はなにも言わずに歩き続ける。リアが通り過ぎたことによって、隊長たちがほっと胸を撫で下ろしているのがわかった。

 ショウとしても自分が原因でリアがほかの隊長たちと衝突するのは避けたいので、リアがなにも言わないでくれるのは助かった。もしかしたら、ショウのそんな気持ちをリアは察したのかもしれない。

 そのまま複数の隊長たちの前を通り過ぎ、隊長以上の階級の者に与えられる個人スペースが並んでいる場所まで来た。

 その中でも要人に与えられるスペースにあるリア専用の部屋の手前で、赤い髪の少女が振り返ってきた。意志の強い赤い瞳がショウを射抜く。

「残念だが、しばらくは突撃部隊にもレンゼムのところにも行くことができなくなった。お前はしばらくは常に私と行動を共にしてもらうことになる。異論はないな?」

「ないよ」

「異論があるのであれば今のうちだぞ?」

「ないってば」

 しばらく、言葉の裏を探るような視線を向けられたが、本当に異論はないのだからそう答えるしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ